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食品検査

毛を例とした異物特定検査

2020-02-10

食品への混入事例の多い異物のひとつに毛が挙げられます。特に人毛の混入は多く、さまざまなルートでの混入が想定されます。また人毛以外では、ネズミの毛の混入のように、食品製造工程の衛生管理に関わるようなケースもたびたびみられます。

異物混入対策を考えるうえで、異物が何に由来し、いつどこで混入したかなどを特定することが重要となってきます。毛を例にすれば、異物が人毛かネズミなどの獣毛であるか、また異物が食品の調理前に混入したのか、調理後に混入したのかによって行うべき対策が異なってくるからです。外観からの毛だと思っていたものが、実際に検査を行うと衣類の繊維や植物の繊維質であったということもよくあります。

ビューローベリタスエフイーエーシーでは顕微鏡観察やカタラーゼ試験を行い、混入した毛の由来や混入時期の推定を行っております。
まず、毛の由来を特定する際に注目して観察するのは、毛小皮紋理(キューティクル)と毛髄質です。毛小皮は毛の表層にあり、ヒトの毛小皮を顕微鏡で観察すると写真1のような横行波状の模様が観察されます。この毛小皮紋理の形状は動物種によって異なっており、例えば写真1および2に示したようにヒトとネズミの毛小皮紋理の形状は異なっていることがわかります。

写真1 ヒトの毛小皮紋理  写真2 ネズミの毛小皮紋理


毛の内側の層を構成している毛髄質の観察も動物種の推定を行ううえで重要になります。写真3および4はヒトおよびネズミの毛髄質を示しています。写真3および4から、ヒトの髄指数(毛の太さに対する毛髄質の太さの割合)はネズミのそれと比べて小さいことがわかります。一般的にヒトの髄指数は30以下、ネズミを始めとした獣毛の髄指数は50~90である場合が多く、毛髄質の大きさが動物種により異なっています。また、ネズミの下毛では特徴的な連銭状の毛髄が見られることがあります。このように毛小皮紋理および毛髄質の特徴的な形状をもとに動物種の推定を行っていきます。

写真3 ヒトの毛髄質(髄指数:約29)  写真4 ネズミの毛髄質(髄指数:約87)


以上に挙げた毛小皮紋理、毛髄質以外にも、毛の形状、末端の状態、長さ、太さおよびその変動の大きさ等の情報を総合して、毛がどの動物種に由来し、どの部位の毛であるかを推定します。

次にカタラーゼ試験についてですが、この方法では毛が食品の加熱工程前または後で混入したかどうかを調べることができます。カタラーゼ試験とは、対象(カタラーゼを含む生物由来のものなど)に過酸化水素水を滴下し、気泡の発生の有無を確認する試験です。カタラーゼ試験の「カタラーゼ」とは、多くの生体内に存在する酵素の一種です。この酵素は過酸化水素と反応し、酸素の気泡が発生します。また、加熱などで酵素が失活していると反応せず、気泡が発生しません。毛の場合、毛根にカタラーゼが含まれているため、この部分でカタラーゼ試験を行います。
このため、加熱工程のある食品中から毛が発見された場合、カタラーゼ試験を行い、気泡の発生が確認されれば、毛は加熱工程後に混入したことが推測でき、カタラーゼ試験が陰性の場合、加熱工程前に混入したことが推測できます。

以上の手法によって食品から発見された毛が何に由来し、いつどこで混入したかの推定を行い混入原因の解明に役立てます。

ビューローベリタスエフイーエーシーでは、毛以外にも金属片、プラスチック片、植物片などさまざまな異物の検査を受け付けており、カタラーゼ試験のみや、類似品との比較検査なども可能です。また検査結果報告は最短で受付後3営業日と迅速に対応しております。 お気軽にお問い合わせください。

ビューローベリタスエフイーエーシー株式会社 理化学検査課  江角 健太
 


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