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建築図面

「ホテル又は旅館における高齢者、障害者等の円滑な移動に配慮した建築設計標準(追補版)」の概要

2019-10-10

急速な高齢化、障害者差別解消法の施行、観光立国推進による訪日外国人旅行者の増加等を受け、ホテルまたは旅館を含む建築物の一層のバリアフリー化が求められています。
このような背景のなか、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会開催を契機に、高齢者・障害者がより円滑にホテルを利用できる環境整備を推進するため、「ホテル又は旅館における高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準(追補版)」が、2019年3月末に国土交通省より公表されました。車椅子使用者客室設置の基準を見直しの反映、客室モデルバリエーションの追加、ソフト面の工夫や共用部分の配慮事項の追加等が主な改正内容です。
また、東京都では、「建築物バリアフリー条例」を制定し、バリアフリー法で定められている対象建築物の拡大とバリアフリー化に関する整備基準の強化をしています。
このたびの条例改正により、バリアフリー法で設置が義務付けられている「車椅子使用者用客室」以外の「一般客室」について、国内で初めて整備基準が条例化されました。

1. バリアフリー法等の改正内容について

(1)車椅子使用者客室設置数の基準の見直し(2018.10.19公布、2019.09.01施行)

床面積2,000㎡以上かつ客室総数50室以上のホテルまたは旅館を建築する場合に必要な車椅子使用者用客室の設置数が、「1室以上」から「建築する客室総数の1%以上」に改正されました。

(1)車椅子使用者客室設置数の基準の見直し(2018.10.19公布、2019.09.01施行)  床面積2,000㎡以上かつ客室総数50室以上のホテルまたは旅館を建築する場合に必要な車椅子使用者用客室の設置数が、「1室以上」から「建築する客室総数の1%以上」に改正されました。

出典:国土交通省「ホテル又は旅館における高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準(追補版)概要」

(2)多様なニーズや宿泊施設の特徴に対応した客室モデルのバリエーションの追加

① 車椅子使用者用客室のバリアフリー対応水準とモデル例の見直し内容 車椅子使用者が円滑に利用できるよう、十分な有効幅員等を確保した例として、便所・浴室またはシャワー室一体の3タイプと独立2タイプのバリエーションがあり、内法寸法や必要な有効寸法を示しています。

多様なニーズや宿泊施設の特徴に対応した客室モデルのバリエーションの追加

出典:国土交通省「ホテル又は旅館における高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準(追補版)概要」

② 一般客室のバリアフリー対応水準とモデル例の見直し内容 浴室やシャワー室の出入口が75cm以上、出入口付近における通路の有効幅員100cm以上、という条件の有効寸法をどの部分で確認するかを示しています。

一般客室モデル例

出典:国土交通省「ホテル又は旅館における高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準(追補版)概要」

③ 客室内または共用廊下の段差解消による車椅子使用者用客室の改修モデルの追加 既存建物の場合は、元々浴室やシャワー室に段差があり、段差を下げることは困難なので、傾斜路の設置または全体の床を上げるといった改修例です。

車椅子使用者用客室の改修モデル例

出典:国土交通省「ホテル又は旅館における高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準(追補版)概要」

2. 【東京都】建築物バリアフリー条例の改正概要

(1)防火・準防火地域における延焼防止性能の高い建築物の技術的基準を新たに整備

これまで、ホテル又は旅館の客室については、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律施行令(以下、「令」)第15条に基づき、車椅子使用者が円滑に利用できる客室(以下、「車椅子使用者用客室」)のみが規制されていましたが、2019年3月の建築物バリアフリー条例改正により、条例第11条の2が新設され、規制のなかった車椅子使用者用客室以外の客室(以下、「一般客室」)についてバリアフリーの義務基準を設けることで、高齢者や障害者など、より多くの人が利用しやすい宿泊環境が整備されます。

① 対象

新築、増築、改築または用途変更部分の床面積の合計が1,000㎡以上の建築物(増築、改築または用途変更をする部分が1,000㎡以上で、既存部分の面積は含まない)における一般客室。

② 共用部の基準

各客室までの経路に階段または段を設けない。

③ 一般客室内の基準

  •  一般客室の出入口幅は80cm以上
  •  一般客室内の便所および浴室等の出入口幅は70cm以上
  •  一般客室内に階段または段を設けない

④ 努力義務規定

一般客室内の便所および浴室等の出入口幅は75cm以上

防火・準防火地域における延焼防止性能の高い建築物の技術的基準を新たに整備

出典:東京都都市整備局「宿泊施設のバリアフリー基準のお知らせ」

車椅子使用者用客室は、「利用居室」であり、令第18条に基づき、道等、車椅子使用者用駐車場および車椅子使用者用便房から車椅子使用者用客室までの経路を「移動等円滑化経路」にしなければなりません。

「宿泊者特定経路」は、車椅子使用者用客室だけでなく、全ての一般客室に至るまで、階段または段を設けないことが規定されました。

一般客室内の基準については、条例第11条の2第2項に規定されています。

一般客室内の基準の適用については、和室部分は除くものとされています。和室部分とは、「畳を中心とした一体の室」のことをいい、考え方は、靴を脱ぎ、框をあがった部分から先に畳がある場合で框から先を一体の室とします。ただし、和洋室で、客室入口から洋室部分へ行き来できる場合、当該洋室部分は基準適用の対象となります。なお、和室の奥にある縁側等、板張りの廊下は基準適用の対象外となります。

宿泊者特定経路に規定するのは、移動等円滑化経路の規定のうち段差の禁止のみですが、図のとおり、一般客室までの共用部分は、不特定多数の者が利用するため、令第11条から17条および条例第6条から第9条の「一般基準」に該当させなければなりません。

宿泊者特定経路に規定するのは、移動等円滑化経路の規定のうち段差の禁止のみですが、図のとおり、一般客室までの共用部分は、不特定多数の者が利用するため、令第11条から17条および条例第6条から第9条の「一般基準」に該当させなければなりません。

出典:東京都都市整備局「宿泊施設のバリアフリー基準のお知らせ」 

建築認証事業本部  本多 徹

 


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