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事例紹介

Case Study: 株式会社タカギスチール(EN9120)

2019-02-12

航空機用鋼材の取引倍増を目指して、従業員31人の小企業がEN9120*を取得

* EN9120:航空宇宙産業品質マネジメントシステム認証(卸売業者/小売業者及び倉庫業者/輸送業者に適用)

株式会社タカギスチール

 

 

2年前に変わった風向き

高木社長は母の跡を継いで4年前に社長に就任したタカギスチールは、名古屋を拠点に加工用の各種鉄鋼材料を卸販売する専門商社。従業員31名、年商約11億円のいわゆる小企業が、航空宇宙分野の商社・運輸・倉庫業に対するマネジメントシステムEN9120 を取得したのは2017年12月のことだ。

同社は、60年前に現社長の祖父に当たる創業者が、日本屈指の大手金属メーカーから独立して起業した。以来、その大手金属メーカーから商品の原材料となる鉄鋼材を仕入れていたこともあり、仕入れ先(製造元)のブランド力によって特に品質面のエビデンスを求められることもなく、安定的かつ友好的な取引関係を売り先と継続してきた。
その風向きが変わったのは2年前のことだ。客先である航空部品メーカーに、米国の規格SAEが、「今後、材料の仕入れ先はEN9120を取得している企業に限ること」という通達を出したのだ。
「今までビジネスのベースだった『信頼関係』といったものでは品質保証にはならないというわけです。継続してお客様と取引をさせていただくためにはEN9120を取得しなくてはならないという状況になりました」と髙木智英社長は言う。
同社の航空機用金属の取引高は、会社全体の売り上げの10%程度。この10%の商売をどう見るかは微妙なところだが、髙木社長は、当時すでに「今後、航空機用の高合金の売り上げを20%にまで伸ばして、ビジネスの柱の一本に育てたい」という希望を持っていたので、「何が何でもEN9120を、通達による期限の12月までに取得すると決断しました」と言う。

 

グローバル展開も視野に

物流の要となっている名古屋営業所同社がEN9120の取得を目指した大きな理由がもう一つある。それは仕入れと販売の両面で世界市場を目指そうとしているからだ。
今まではその両方の取引がほぼすべて国内で行われており、そのことが同社のビジネスを安定させる源泉となってきた。「しかしこれからはそれでは逆に不安定になるのではないかと思うのです」と髙木社長は言う。
特に、仕入れ先を国内の鉄鋼メーカーに限っていると、今後、入手困難な材料が出てくるのではないかという懸念を抱いているそうだ。

そこで、これからは海外からの輸入も視野に入れているが、その場合、今までのように相手先の品質管理力に頼ってばかりいるわけにはいかない。逆に相手に物申せるぐらいの品質管理力をこちらが持たなくては、従来のクオリティの商品を客先に届けることができなくなるかもしれないというリスクが生まれるのだ。
「ですから自社できちんとした品質管理ができること、そしてそれを証明できるエビデンスがあること、つまりEN9120認証が取得できていることが必要だと感じました」(高木社長)。
そしてグローバルな取引を視野に入れたことが、グローバルな認証機関であるビューローベリタスを選ぶことに繋がったのだという。

 

いきなりEN9120を取得

山下氏は元金融マンで入社7年目。専門的な仕様書も読みこむ熱心な営業マンだ。こうして意欲的に始まったEN9120取得だったが、取り組みを始めると同時に大きな壁に突き当たった。その理由は、同社はそれまで他のシステム認証を取得したことがなく、まさにシステム認証の右も左も分からない状態だったからだ。
認証取得をする場合は、まずISO9001など大局的で汎用性のある認証を取得し、その後、それぞれの分野のより専門的な認証を取得するという流れが一般的だ。そうすると、前回の認証取得時の経験から、より細かくなる専門的な認証の取得がスムーズになるからだ。そうでないと、システム認証の考え方やこなし方も分からないまま、専門的な分野の品質管理システムを構築しないといけないことになり、担当者だけでなく現場の戸惑いや負担が大きくなってしまう。
ところが同社においては、このいきなりEN9120取得パターンを、それもキックオフからわずか半年でやり遂げなくてはならないという状況になった。
5人で構成された取得チームのリーダーに抜擢された山下和孝氏は、「いったいどこから手を付けたらいいものやら、途方に暮れました」と当時を振り返る。
何より分からなかったのは、書いてある要求事項に対してどんな内容のルールやマニュアルを設定したらよいのかということだった。
この八方塞がりの状況に風穴を開けてくれたのはコンサルタントだった。「とても丁寧にアドバイスをしてくださる先生に巡りあえて、本当に助かりました。要求事項に対して具体的にどんな内容のルールを設定すればいいのかも分かりやすく解説していただいて、それからは事態はグンと進捗しました」(山下氏)という。
このような助け舟もあり、半年後、同社は無事にEN9120の取得を果たした。

 

EN9120が生む多彩な影響

EN9120が生む多彩な影響

取得後、同社でまず変化が起こったのは社内だった。
ルール化したダブルチェックによって間違いが減ると同時に、現場からの逆提案が増えたのだ。
「今までは感覚的に仕事をすることが多かったので、ベテランの意見や考えが前面に出ていましたが、マニュアルを基準にすることになってからは、誰でも提言や提案ができる雰囲気が生まれたのだと思われます。また、マニュアルによって自分たちがどんな重要な仕事に携わっているのかを、現場の社員全員が認識するようになったことも良かったですね」と山下氏は言う。
一方、EN9120の社外的な活用、たとえば航空機部門の売り上げを倍増させることや、航空機部門の材料問屋として同社の名前をブランド化することについては、これからが勝負だ。 「EN9120はあくまでビジネスのツールだと思っていますので、ビジネスに貢献させなくては本来の意味はない。つまり、EN9120を取得したがゆえに新たに獲得したという案件を1件でも増やすことが当面の目標です」と髙木社長は言い、山下氏をはじめとする営業マンたちは、その号令のもと、新規案件や新規客の開拓に勤しんでいる。
つまり、EN9120は、「長年の信頼関係」をビジネスの柱にしてきた同社に、今までにはないアプローチで新しい柱を建てて、企業の屋台骨を強化することの重要性を気付かせた。

 

(2018年12月26日取材)

 


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