
建築物省エネ法の手続きについて
2017年4月に建築物省エネ法に基づく省エネ適合性判定が始まりました。実務にあたり、「計画中の物件は適合義務の対象になるのかどうか」や「必要な図書はどのようなものか」、「どの程度期間がかかるのか」などのお問い合わせを多く頂いていることから、今回は適合義務の対象と適合性判定の手続きについて具体的に説明します。
1.法の適用について
建築物省エネ法では、特定建築行為に該当した場合、適合性判定義務の対象になります。
表1 建築物省エネ法の審査対象など
根拠条文等 |
対象用途 |
対象建築行為等 |
適用基準 |
【規制措置】 適合性判定 |
非住宅のみ | 特定建築行為(H29/4の既存建築物の特定増改築を除く) | 建築物エネルギー消費性能基準 一次エネルギー消費量基準 |
表1に記載されている「特定建築行為」とは、建築物の床面積の合計が、新築にあっては非住宅部分の面積2,000㎡以上(*)、増改築にあっては非住宅部分の面積300㎡以上で、増改築後の非住宅部分2,000㎡以上(*)(ただし特定増改築を除く)となる建築物の非住宅部分です。
(*) 外気に対して高い開放性を有する部分(以下「開放部分」)を除く→「2.規模の算定方法」を参照
2.規模の算定方法
適合義務の要否判断の床面積は、開放部分を除いた床面積です。開放部分とは、①内部に間仕切壁等を有しない階又はその一部、②常時開放部の面積の合計の割合が1/20以上の部分、③常時開放部には当該開口部を閉鎖する建具がないことです。
ただし、開放部分を除いた非住宅床面積が2,000㎡以上(増改築にあっては300㎡以上)となった場合は、開放部分を含む建築物全体が規制措置の対象となります。すなわち、開放部分は適合義務等の面積判断にのみ考慮されるものであるので開放部分の一次エネルギー消費量計算を行わなくてよい、というわけではないため注意が必要です。
図1 開放部分が階全体となる建築物の例
3.住宅部分と非住宅部分を有する複合建築物の取扱い(新築)
住宅部分と非住宅部分を有する複合建築物で、非住宅部分の床面積(開放部分を除いた床面積を除く)が2,000㎡以上である場合、
- 省エネ適合性判定の対象となり、省エネ計画の提出が必要となります。
- 非住宅部分を除いた住宅部分の床面積が300㎡以上の場合、ビューローベリタスから当該省エネ計画の写し等を所管行政庁に送付します。
なお、非住宅部分の床面積(開放部分を除いた床面積)が2,000㎡未満の場合、省エネ適合性判定の対象とはなりません。
4.申請に必要な図書
ビューローベリタスへ計画書を提出される場合、審査受付票、委任状及び表2に示す書類・図書等が必要となります。また図面には設計者の記名押印が必要です。
300㎡以上の住宅を含む場合は、住宅部分に関する図書も提出が必要となり、ビューローベリタスから所管行政庁に送付されるため、【非住宅部分に関する図書】と【住宅部分に関する図書】とは分けて提出することになります。
表2 申請に必要な図書等の概要
通常のケース(正・副・控) | 300㎡以上の住宅用途を含むケース(正・副・正の写し・控) |
---|---|
● 計画書 ● 設計内容説明書 ● 計算書 ● 各種図面 ● 入力シート ● 出力シート |
● 計画書 □ 非住宅 ● 設計内容説明書 ・計算書 ● 各種図面(各階平面図等の非住宅・住宅部分に共通するもの。 機器等の非住宅部分のみに関係するもの) ● 入力シート ・出力シート □ 住宅(所管行政庁に送付) ● 設計内容説明書 ・計算書 ● 各種図面(各階平面図等の非住宅・住宅部分に共通するもの。 機器等の住宅部分のみに関係するもの) |
その他所管行政庁が必要と認める図書 | その他所管行政庁が必要と認める図書 |
<留意事項>
- 一敷地内で新たに別棟として建築する場合は、新築として扱います(確認申請書第四面【3.工事種別】の判断と同じ)
- ひとつの確認申請において、複数棟適合義務対象建築物がある場合、適合義務対象建築物ごとに省エネ適合性判定が必要となります
5.審査期間
省エネ計画提出後、提出を行った日から14日以内に、ビューローベリタスより省エネ適合性判定の結果を記載した通知書の交付をすることになります。ただし、その内容等に疑義がある場合は28日の範囲内において結果通知を延長することが可能です。その場合、ビューローベリタスより「延長する旨とその理由を記載した通知書」の交付が行われ、建築主は疑義に対する訂正あるいは追加資料等を提出し、適否の判断を受けることとなります。
図2に省エネ適合性判定の結果を記載した通知書の取得までの基本的な流れを示します。
図2 省エネ適合性判定の通知書の取得までの基本的な流れ
<留意事項>
- 14日以内に質疑書「延長する旨とその理由を記載した通知書」を送付した場合、その回答に要する日数は、延長期間の日数に含まれます。
- 通知の期限までに訂正等が完了しない場合は、「適合するかどうか決定できない旨通知」を交付します。
6.提出先の確認
提出される省エネ計画に係る建築物がビューローベリタスの業務区域や業務範囲に該当することをご確認ください。所管行政庁の委任意向について、「一般社団法人 住宅性能評価・表示協会」の省エネ適合性判定に関するホームページで公開されていますので、申請をされる際に、改めてご確認ください。
「一般社団法人 住宅性能評価・表示協会」の省エネ適合性判定に関するウェブサイト
https://www.hyoukakyoukai.or.jp/shouene_tekihan/index.html
建築認証事業本部 豊﨑 実