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CBAMへの対応をしていますか?

2024-05-14

欧州連合(EU:European Union)の炭素国境調整措置 (CBAM:Carbon Border Adjustment Mechanism) は、気候変動へ対応するため、ネットゼロ目標を達成するうえで極めて重要な手段です。CBAMでは、欧州連合(EU:European Union)への輸入品に炭素関税を課すことにより、上市される製品がEU内で生産された製品と同等の厳しい環境基準に準拠していることが保証されていることを求めており、そうでない場合には、輸入業者がその差を担保しなければならないとしています。

欧州委員会によって運用されるCBAMは、気候目標達成への国際協力を醸成し、環境に配慮した世界経済の推進を目指して設計されています。経済的措置として、CBAMは炭素集約的な輸入に罰則を科し、再生可能イニシアチブに振り向けられる資金を生み出し、気候変動緩和におけるEUの役割を強化するとしています。

この取り組みは環境面以外により広い側面を持っています。「世界的に貿易摩擦が高まるなか、CBAMは潜在的な貿易障壁に対する欧州の戦略的対応として出現しました。輸入品の価格設定に炭素排出コストを含めることにより、同じ材料のEUとEU外の生産者に平等な競争の場が生まれます。これは、世界的な貿易力学の転換期において、外交的かつ進歩的なアプローチとして機能します。」(ビューローベリタスグループの炭素専門家Camila Torres)

大いなる目標と展開

CBAM規則は、2021年7月に欧州委員会によって規則2023/956として採択されたのち[1]、2023年5月に発効、2023年8月には、移行期間中の報告義務に関する実施規則」2023/1773 が採択されました。全規制は2026年1月1日に発効します。2024年1月の時点で、CBAMは、炭素集約的製造によりカーボンリーケージ(排出規制の厳しい国の企業が、規制の緩やかな地域へ生産拠点や投資先を移転し、結果的に世界全体の排出量が増加する事態)リスクが最も高い特定の製品(セメント、鉄、鉄鋼、アルミニウム、肥料、電気、水素)の輸入に対して施行されています。炭素強度(Carbon intensity:炭素原単位・炭素集約度)が国によって大きく異なることを考慮すると、不可欠な選択です。
たとえば、中国の鉄鋼生産には鉄鋼1トンあたり2トンのCO2コストがかかりますが、EUでは1.3トンです[2]。同様に、インドではアルミニウム1トンあたりの生産にはほぼ17トンのCO2コストがかかり、ヨーロッパのほぼ3倍炭素集約的です[3]。 CBAMは、排出量取引システム(ETS)の対象となる部門の温室効果ガス排出量の50%以上を網羅すると予測されています[4]
大いなる目標と展開
CBAMの目標は2つあります。第一に、欧州のグローバルパートナーに対し、より環境に配慮した慣行の採用を奨励することです。第二に、第三国(非EUおよび非欧州自由貿易連合(EFTA))の特定の製品カテゴリに対して、EU排出量取引システム(EU ETS)で適用されるEU内製造同等製品炭素価格換算賦課金を課すことにより、カーボンリーケージを抑止することです。カーボンリーケージは、炭素集約型産業が環境規制の緩い地域へ移転することで、これは気候政策の有効性にとって重大な脅威となります[5] 。EUは、輸入品にその炭素含有量について責任を負わせることで、持続可能な活動に取り組むEU企業にとってより公平な条件を導入したいと考えています。

恒久的な制度が導入されれば、輸入業者は、前年度のEU輸入製品量と、その中に含まれる温室効果ガス(GHG)排出量を年に一度報告する義務が課せられ、その後、輸入者はCBAM証書を引き渡さなければなりません。これらの証書の価格は、EU ETS許容排出量(枠)の週間平均オークション価格(CO2排出量1トン当たりユーロ)に基づいて決定されます。

EU ETSに基づく無償割り当てからCBAMの統合への移行は、2026年から2034年の期間に行われます。既存の配分規制の枠組みを変更する場合は、慎重に導入する必要があります。実際、CBAMの影響を受ける分野は自動車、エレクトロニクス、建設製品、農産物など非常に多岐にわたり、2030年までに石油製品、産業ガス、合成ゴム製品などが追加される可能性があります。これらにはさまざまな生産方法、排出量、および貿易関係があるため、CBAMの展開は非常に複雑で、回避、資源操作、および税の吸収のリスクが伴います。

スコープ、要件、罰則

「CBAMを施行する主な責任は輸入業者にあります」とサステナビリティ事業開発マネージャーMark Fraserは説明します。「レポートからデータ収集、検証、コンプライアンスに至るまで、輸入業者は CBAM において極めて重要な役割を果たします。」輸入者は、申告者の身元・住所・役割に加え、詳細な輸入者と代表者の身元に至るまで提出を義務付けられています。
スコープ、要件、罰則
CBAM はまた、商品コード・原産国・説明など、各輸入品目の包括的な文書化を義務付けています。この報告書には、輸入プロセスを含むさまざまな税関手続きにかかわる商品の数量データ、特に、製品にかかる総排出量(直接・間接)までが要求されます。

加えて、この報告書では、環境インパクトの透明性を確保するために、製造方法と排出パラメータの詳細が要求されます。詳細な排出シーケンスデータ、設置状況詳細、炭素価格の計算値裏付け文書は不可欠です。この報告書により、輸入された製品とその二酸化炭素排出量を結び付け、環境に対する責任範囲が明確になります。

この仕組みには、確実な適用のために、罰則が設けられています。移行期間中の罰則は、未報告事項、輸入品の数量、関連する排出量に応じて課されます。評価の際には、申告者の過去の行動だけでなく、状況の是正意欲も考慮されます。移行期間が終了すると、CBAM証明書の不償却、超過排出、CBAM回避行為などの問題に対して、さらなる罰則が導入されることになります[6]

CBAM導入に向けた企業の準備

移行期間は2025年12月31日までで、これが今後を左右するといえます。パイロット段階として機能するように設計されており、すべての関係者 (輸入者、生産者、当局) の学習を促進し、規制が発効した後に方法論を強化するために情報を収集します。欧州委員会は、輸入業者がこれらの計算と文書化を支援する専用のITツールを作成しました。移行期間中、企業を支援するための包括的なガイダンス、トレーニングコンテンツ、チュートリアルも開発されています。
CBAM導入に向けた企業の準備
企業は、積極的に取り組み、欧州委員会の要件を予測するのが賢明でしょう。ビューローベリタス ポーランドのビジネスユニット サステナビリティマネージャー、Paweł Klawiter-Piwowarskiは、「EUは CBAMを穏やかに開始しますが、徐々に要件を強化する予定です」と警告します。「企業にとっては、規制が完全に施行されたときに備えて、いわば“練習”を開始することが最適と考えられます。申告プロセスを評価し、検証メカニズムをチェックするために、簡単に言うと、CBAMがすでに導入されているかのように行動することです。」

影響を受ける商品の特定、組み込まれた排出量の計算、二酸化炭素排出量削減への取り組みなど、企業が差し迫った規制と積極的に対処するための多くの手段はすでに利用可能になっています。CBAM はネットゼロ目標を推進するための新しい可能性ですから、組織はこれを速やかに捉えるべきでしょう。

ビューローベリタス:CBAM導入に向けて企業を支援

ビューローベリタスは、企業の持続可能性への取り組みをサポートするという使命をもっています。この目的を達成するために、ビューローベリタスの炭素専門家は、企業のCBAM導入準備を支援することに専念しています。二酸化炭素排出量と排出量の測定から、報告のための認証と検証の提供に至る、包括的サービスと専門知識により、組織がこの新しい規制に対処し、2026年のCBAM完全施行までに確実にコンプライアンスを確保できるように対応します。

REFERENCE

[1] https://eur-lex.europa.eu/resource.html?uri=cellar:a95a4441-e558-11eb-a1a5-01aa75ed71a1.0001.02/DOC_1&format=PDF
[2] https://static1.squarespace.com/static/5877e86f9de4bb8bce72105c/t/624ebc5e1f5e2f3078c53a07/1649327229553/Steel+climate+impact-benchmarking+report+7April2022.pdf
[3] https://static1.squarespace.com/static/5877e86f9de4bb8bce72105c/t/624d11ab5a37a4341fd85a6e/1649217981897/Aluminum+benchmarking+report-+Feb2022+rev2.pdf
[4] https://taxation-customs.ec.europa.eu/carbon-border-adjustment-mechanism_en
[5] https://climate.ec.europa.eu/eu-action/eu-emissions-trading-system-eu-ets/free-allocation/carbon-leakage_en
[6] https://www.gleisslutz.com/en/news-events/know-how/cbam-new-obligations-and-penalties-under-eus-carbon-border-adjustment-mechanism-take-effect-1-october-2023

Sources: 

• https://taxation-customs.ec.europa.eu/carbon-border-adjustment-mechanism_en
• https://eaccny.com/news/member-news/osrich-understanding-cbam-duties-implications-for-eu-importers/
• https://www.gleisslutz.com/en/news-events/know-how/cbam-new-obligations-and-penalties-under-eus-carbon-border-adjustment-mechanism-take-effect-1-october-2023
• https://taxation-customs.ec.europa.eu/system/
files/2023-12/Guidance%20document%20on%20CBAM%20implementation%20for%20importers%20of%20goods%20into%20the%20EU.pdf
• https://www.eurofer.eu/assets/Uploads/20210927-EUROFER-comments-CBAM.pdf
• https://www.acea.auto/news/more-than-just-acronyms-cbam-and-ets-what-do-they-mean-for-decarbonising-the-transport-sector/

原文記事:
IS YOUR BUSINESS CBAM-READY?(英語)

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