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「実戦」EN10204 Type 3.2 Certificateの注意点

EN10204 Type 3.2証明書は、海外で使用される圧力機器や圧力管、鋼構造物、発電設備等の金属材料に要求されることがここ十数年の間にすっかり一般的となってきましたが、お客様からの問い合わせのなかには「これは危ない」と思われるケースが見受けられます。今回はそういった例の中から「実戦」EN10204 Type 3.2 Certificateの注意点としていくつかご紹介します。

1. 「市中品」は使えません

圧力機器メーカーが材料調達・発注をかける際、製品の大きさや数量の関係で鋼材商社等より市中品(=「在庫品」:既に完成して倉庫に保管されている状態の材料)を調達することを前提に機器類の設計・生産を計画されているケースがよくありますが、これは「NG」です。

EN10204 Type 3.2は、材料メーカーの製造部門から独立した品質保証部門と第三者検査機関(ビューローベリタス)が、その製造過程のトレーサビリティーを両者で確認することに最大の価値と意義があります。したがって、一度製造されてメーカーの門を通り出荷されてしまった製品についてはEN10204 Type 3.2を取得することは不可能となります。

ただし、一度メーカーが出荷した材料でも、その金属性能に影響を与える熱処理を行う中間メーカー等が介在する場合は、その中間メーカーの独立した品質保証部門と第三者検査機関が熱処理や対象金属材料の機械試験等に立会検査を実施することで、EN10204 Type 3.2の発行が可能となります。

2. ロット・数量の問題

上記1.とは逆の視点ですが、商社等を通じてEN10204 Type 3.2付き材料をメーカーに発注しようとしてもロット・数量があまりに少ないと発注を受け付けてもらえない場合があるようです。(メーカー側の計画した生産性・生産量に齟齬が生じるため。)
交渉により受け付けられるケースもあるようですが、受け付けられない場合は、少し高価になるかもしれませんが、欧州材(EU圏内ヨーロッパ各国で生産された材料)を使用するという方法があります。これは欧州メーカーの方が少量品の受注に柔軟に対応できるケースが多いこと、Type 3.2を取得していなかったとしても欧州材ミルシートは少なくともType 3.1(メーカーの製造部門から独立した品質部門が単独で発行する証明書)の要件を満たしているケースが多いことによります。メーカーによっては、はじめからType 3.2を用意するケースもあるようです。従って1.とは逆に市中品でもEN10204 Type 3.2対応品として使用できる可能性が残されます。

3. 第三者検査の成果物としてEN10204 Type 3.2を要求されるケース

これは反応炉(リアクター)材料や発電設備(ローター・ノズル等)といった工程の長い鍛造品等で時々見受けられるケースです。対象製品が大型でしかも欠陥が発生しやすいため、発注者である海外のオペレーター(電力会社、石油・ガス会社)があらかじめメーカー側と協議・合意したITP(Inspection & Test Plan)に基づき、非常に厳格な第三者検査を行い、その一連の検査の成果物=検査証明書としてEN10204 Type 3.2が要求されるケースがあります。この場合、厳格な検査(=検査工数が多い)により、通常想定しているよりもはるかに高額な検査費用となることがあります。このようなケースでは、とにかくお早めに第三者検査機関(ビューローベリタス)にご相談されることをお勧めします。

4. 「発注してしまった!」

これも稀に見受けられるケースですが、慣れておられない日本の機器メーカーがEN10204 Type 3.2の要求が入っていることに気付かずに材料製作を発注してしまった、海外材料メーカーに発注した際のコミュニケーションミス、特殊な事情により現地でEN10204 Type 3.2が取得できなかった、等の理由により「どうしよう」とのご相談を受けるケースがままあります。

このような場合、私共も「諦めてください。」と申し上げるしかありません。しかし例えばヨーロッパのPED(圧力機器指令・2014/68/EU)等でMandatory(強制適用)として定められているようなケースはどうにもなりませんが、単なる真贋区別の観点からType 3.2を要求されている状況では救済できたケースもあります。
すなわち、当該の材料を製作した時に適用した規格(ASME、ASTM、EN、JIS)で実施が要求されている試験項目を再度ロット毎に私共第三者検査機関(ビューローベリタス)立会いのもと、しかるべき試験場(ラボ)で当該材料に実施し、その性能が規格を満たすことを条件に客先と交渉し了解を取り付けるというものです。ただし客先の了解を取り付けること、この方法を採用するかどうかの判断はお客様の責任範疇となりますので、十分ご注意ください。

産業事業本部 小野 隆照

 


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