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5Gイメージ

5Gの最新動向

2019年2月、スペイン・バルセロナで開催された世界最大の携帯見本市MWCは、クアルコムが開発した5G対応チップSnapdragon855のほか、主要メーカーの5G端末や5G通信機器が続々と披露され、世界的に5Gの商用サービスが本格化する5G元年の2019年を象徴するイベントだったようです。
IoTや自動運転に欠かせない通信技術として、また高齢化や人手不足など日本社会が直面する課題解決の切り札として、通信業界にとどまらず業種を超えた注目と期待を一身に集める5G。今号では、これまでのビジネスモデルを塗り替えるともいわれる5Gの最新動向についてお話ししたいと思います。

移動通信システムの進化と5Gの特徴

5GのGはGeneration(世代)の略で、80年代の第一世代(1G)のアナログ携帯電話誕生で始まった移動通信システムの第5世代にあたるのが、第5世代移動通信システム5Gです。移動通信システムは10年ごとに進化し、最大通信速度は30年間で約10万倍と急激な高速化を遂げています。最初に開発されたアナログ携帯電話では通話のみだったのが、90年代にデジタル無線による携帯電話システム(2G)が誕生するとパケット通信に対応、第3世代(3G)ではホームページの閲覧が可能と、高速化に伴い用途も拡大してきました。

図1

移動通信システムの進化(第1世代~第5世代)

出典: 平成30年10月3日総務省 第5世代移動通信システムについて

5Gがここまで注目されているのはなぜなのでしょうか。5Gには以下3つの特徴があります。
1) LTEでは5分かかる2時間の映画のダウンロードもたったの3秒でできる最高伝送速度10Gbpsの超高速・大容量
2) 利用者がタイムラグを意識することなく遠隔地のロボットなどの精緻な操作・制御を可能にする低遅延。
3) 自宅屋内の約100個の端末をネットに接続可能な多数同時接続。

超高速・大容量に加え、5Gで初めて備わる低遅延・多接続の特徴は、自動運転や遠隔医療など4Gまでの通信ではなし得なかった社会インフラの領域への展開を可能にします。 さまざまな要求条件に対応する5Gを、総務省は4Gの単なる後継ではなく「4Gまでが基本的に人と人とのコミュニケーションを行うためのツールとして発展してきたのに対し、5Gはあらゆるモノ・人などが繋がるIoT時代の新たなコミュニケーションツール」と位置づけ、その社会的インパクトは大きいと見込んでいます。

図2

5Gの主な要求条件

出典: 日経コミュニケーションズ2015年4月号

 

5Gの国際標準化動向

5Gの標準化に携わっているのが日本のTTC、ARIB、アメリカのATIS、中国のCCSA、ヨーロッパのETSI、韓国のTTA、インドのTSDSIなど7つの業界団体が参加する3GPP(3rd Generation Partnership Project)と国連が運営するITU(International Telecommunication Union)です。
ITUがIMTビジョン勧告で示した5Gの要求条件をもとに3GPPは5Gの標準仕様を策定、技術提案書をITUに提出し、ITUでそれを確認後5Gシステムの勧告を策定するプロセスで標準化が進められます。
3GPPはリリース15(フェーズ1)で5Gの新しい無線方式5G NR(New Radio)のふたつの運用形態、5G NR とLTE/LTE Advancedのネットワークを組み合わせて運用するノンスタンドアローン(NA)と5GNR専用ネットワークを構築するスタンドアローン(SA)の標準仕様を策定し、超高速を対象とした5Gの基本仕様策定を完了。現在は2019年12月に向け低遅延と多接続を含む5Gのすべての技術性能要件に対応したリリース16(フェーズ2)を策定中です。

5Gの周波数とその割り当て

総務省はNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクそして新規参入する楽天の5G事業者4社に対し、2019年度末までに5Gの周波数の割り当てを実施する予定です。
LTEやLTE/Advanced、Wifiなど従来の移動体通信に使用されている3.7/4.5GHz帯のサブ6GHz帯は、逼迫が懸念されるため、これまであまり利用されていなかった28GHz帯のミリ波帯が新しい周波数として5Gに導入されることになりました。
総務省が今回用意している5Gの周波数の割当枠は以下の10枠です。

図3

5Gの周波数とその割り当て

出典: businessnetwork.jp [特集]ネットワーク未来予測2019 5Gは日本で始まる?-夏からプレサービス、当初は3.2Gbps

また総務省は、4Gが人口カバー率で優先的に整備した結果都市部中心に整備されたことを踏まえ、5Gでは地方を含む幅広い地域で早期にサービスの展開を目指し、下記3つの割当指標を新たに設けるとしています。

① 全国への展開可能性の確保
② 地方での早期サービス開始
③ サービスの多様性の確保

各国の5Gへの取り組み

5Gの実現を目前に控えた今、日本ではNTTドコモ・KDDI・ソフトバンクが今年秋のラグビーワールドカップ開催に合わせてプレサービスを実施、2020年夏の東京オリンピックから本格的な商用サービス導入を計画中です。そして昨年10月大手通信社2社が商用サービスをスタートし5Gへの一番乗りを果たしたアメリカをはじめ、5Gの関連特許と標準規格の数で他国をリードする中国、産学官連携による5G推進機関5G PPP(Public Private Partnership)を中心に自動車、工場・製造、エネルギー、医療・健康、メディアの分野で実証試験等の連携強化を図るヨーロッパ、2018年2月の平昌オリンピックで「世界初の5Gオリンピック」と称し高精細映像配信の実証実験を行った韓国など各国での取り組みも本格化しています。

各国の5Gへの取り組み

 

5G普及の鍵は用途の開拓

現在、通信キャリア各社が注力しているのが、5G技術の用途の開拓です。
個人ユーザが現行の4G(LTE)に満足している傾向にあり、5Gへの需要喚起が難しいとされる一方、5Gを自社のビジネス拡大につなげようと、多業種の企業が積極的に通信キャリアとさまざまな分野での5Gの実証実験に参画しています。
2019年2月には、KDDIが企業や大学と連携し、愛知県一宮市の一般公道で5Gを活用した自動運転の実証実験を実施、5Gでの複数車両を遠隔監視・制御を行いました。
また2019年3月に入り、NTTドコモが和歌山県立医大と40キロ離れた診療所を5Gでつないで実施した遠隔診療の実証実験では、診療所からリアルタイムで送信されてきた高精細なエコー動画を見ながら医大の専門医が指導、遠隔医療への5G活用は世界的にも珍しいと注目されています。

図4

平成30年度 5G総合実証試験の実施概要

出典: 総務省 2020年の5G実現に向けた取組 2018年12月18日

今後の課題

商用展開前から通信キャリアと多業種の企業が共同で利用シーンを想定し、ビジネスモデルを模索する5Gは、これまでにないアプローチでビジネスを発展できる技術として無限の可能性を秘めているように見えますが、5Gの適用分野が一気に広がると、その分セキュリティリスクも増大します。現行の100倍の数の機器をネットに接続できる多接続を特徴とする5Gが社会インフラで活用されるとなれば、サイバー攻撃を受けた場合、その被害は計り知れません。早くも2019年2月、スマートフォンが携帯ネットワークと安全に通信する仕組みであるAKA(Authentication and Key Agreement:認証と鍵合意)に脆弱性が発見され、5Gへの影響が指摘されています。 もうひとつの懸案事項はコストです。一般消費財向けの携帯電話事業は、すでに頭打ちで成長が見込めないなか、政府が携帯料金の値下げを言及、かつ総務省主導で導入が予定されている完全分離プランで端末購入時の割引がなくなるため、5G対応スマホの販売に影響する可能性があります。NR対応基地局整備など5Gへの投資はどこで回収するのか、通信キャリアにとっては楽観視できない状況が続くと思われます。

ビューローベリタスジャパンの取り組み

ビューローベリタスジャパンEAW事業部では、長年にわたって蓄積した電波測定のノウハウを活かし、登録点検や基準認証取得に向けた5G対応システム/デバイスのOTA(Over The Air)測定を実施しています。
またGCF/PTCRBの試験で多数の実績があるビューローベリタスは、計測器メーカーアンリツと提携し、同社の5GNR向けプロトコル試験プラットフォーム、ME7834NR 5G NRを採用しています。

消費財検査部門 EAW事業部  小倉 富規子

 


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