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船級

船舶の次世代燃料LNG

1828年にアントワープで発足して以来190年にわたり、Bureau Veritas:ビューローベリタス (以下BV)は海事・海運産業において安全と海洋環境の保全という目標に貢献するべく活動を続けています。 現在では船舶・海洋分野のみにとどまらず陸上分野においても、世界最大級の第三者試験・検査・認証 (Testing, Inspection & Certification)機関としてQHSE & Social Responsibility(品質、健康・安全、環境及び社会的責任)について幅広く展開しています。今日まで船舶・海洋構造物建造や運航管理に対する要求は進化してきており、BVは豊富な専門知識を駆使してそれらの状況とお客様からの要望に対応し、さらにそこで培った経験を加え、事業を拡大してまいりました。

海上輸送LNGサプライチェーンにおける活動

LNG輸送に携わるLNG運搬船だけでなく、LNG事業においては生産から供給まで、いわばLNGサプライチェーンの各ステージでBVは検査業務を提供してきました。 LNG運搬船では積荷のLNGが気化した天然ガスを燃料として利用することが主流になっていますが、これに加え2020年からのSOx排出量規制の影響を受け、LNG運搬船でなくてもLNGとの二元燃料エンジンを搭載する船舶の需要が高まり、その建造技術や国際ルールに注目が集まっています。同時にその運航を支えるLNG供給体制の整備も世界各地で進んでおり、新たなLNGサプライチェーンが形成されようとしています。
この新しい流れのなかで、BVはパリの本社の研究開発部門のみならず全世界のネットワークを活用して産業界に貢献しております。この活動をご紹介します。

1. LNG運搬船

2016年から、ロシア・ヤマル半島のLNGプラントよりLNGを運び出す世界初の砕氷LNG輸送船団がBV船級のもとで建造し運航されています。北極海という厳しい条件下での航海に耐え得るLNGを運搬する船舶は今までになかったため、本プロジェクトの成功により、長らく有効活用できない状態にあった北極圏のLNG輸送が技術的に可能となりました。この革新的なプロジェクトに対し、BVは建造開始前よりロシア政府・ロシア船級・関係港湾当局をはじめ建造造船所との協議を続け、極海を航海する際のリスクを分析し、その結果を図面承認や建造検査へとつなげていきました。今後はさらに運航中の検査で得られた知見をフィードバックすることにより、次の技術革新へも対応できるよう努めています。また早くから、大型LNG運搬船だけでなく積載量4万トン未満の小型LNG運搬船の図面承認・建造検査にも積極的に携わってきました。小型LNG運搬船は新たなLNGサプライチェーンを形成する新しい船型として現在注目を集めています。

VLADIMIR RUSANOV

ロシア・ヤマル基地よりLNGを輸送する、アイスクラスARC7仕様の砕氷LNG輸送船 “VLADIMIR
RUSANOV” (写真:株式会社商船三井殿提供)

2. LNG燃料船

上述の通り2020年からのSOx排出量規制の影響もあり、2017年にIGF Codeが発効された頃から急速にLNG燃料船へ注目が集まるようになりました。古くからLNG運搬船では貨物であるLNGの気化ガスを有効に活用するため、LNGが重油と並んで燃料として使われてきた経緯があり、船の燃料として使用することは確立済みの技術であることに加え、ヨーロッパにおけるLNG価格の安さなどもLNG燃料船の実現に拍車をかけたと考えられます。こうした動向は造船業界にとって技術的な挑戦でもありますが、BVはLNG燃料船のルール解釈の具体的な説明やLNGバンカリングについての知見をリスクアセスメントや技術支援サービスに生かすことで、造船業界のみならず海運業界や舶用機器メーカーの発展に寄与しています。LNG燃料船も当初は港湾内を航行するタグボートや作業船、欧州域内の近距離フェリー、ヨーロッパ国際河川を航行する船舶などでLNG燃料化が進んでいましたが、最近は大型船のLNG燃料化が進んでいます。その一例としてLNG燃料の22,000TEU積みの世界最大級のコンテナ船団、また20万トン級大型客船の建造などが既にBV船級のもと始まっています。

3. LNG燃料供給船(LNGバンカリング船)

2017年に世界初となるLNGバンカリング船がBV船級のもとで竣工しました。海上でLNG燃料船へShip-to-Ship方式のLNGバンカリングを行うことにより、港湾LNG基地に立ち寄る必要も港湾での荷役作業を中断する必要もなくなりました。これも従来の問題を技術的に打破した革新的な事例といえます。LNGバンカリング作業には国際的に統一された規則は未だ存在しませんが、BVはLNGバンカリングのガイドライン(NI 618)を策定しています。ヨーロッパの船舶用ガス燃料の業界団体であるSGMFでも、BVはその主要メンバーとしてより詳細なバンカリングガイドライン作成を牽引する役割を果たし、欧州の各港湾当局のLNGバンカリング規則制定にも影響を与えています。なお、現在運航中または建造中のLNGバンカリング船の約75%はBV船級です。

4. FSU(浮体式LNG貯蔵設備)とFSRU(浮体式LNG貯蔵・再ガス化設備)

安定したLNG供給のためにはLNGを貯蔵する基地が必要です。陸上基地と比べ利便性が高いことや船齢の高いLNG運搬船の再利用が可能なことから、海上のLNG基地としてのFSUやFSRUにも注目が集まっています。BVでは他船級に先駆けてFSUとFSRUに特化した船級規則(NR 645)を策定しました。国際ルールの要求事項に加え、両設備の建造と運用に関し、BVとしての見解を盛り込んだ内容となっています。また2018年7月にはLNG運搬船からの改造について船舶の推進機能や貯蔵方式ごと異なる様々なケースに対応するガイドライン(NI 655)を策定しました。さらに技術支援サービスの一つとして、プロジェクトのリスクアセスメントへも関与しています。プロジェクト関係者で構成されるリスクアセスメント会議を議長としてリードし、一般的なリスクのみならず各プロジェクト特有の問題点を明らかにすることでプロジェクトの安全性を高めることに貢献しています。

MOL FSRU CHALLENGER

263,000m3 のLNG貯蔵容量を備える世界最大のFSRU “MOL FSRU CHALLENGER”
(写真:株式会社商船三井殿提供)

5. LNG発電船

近年、LNGによる発電プラントを搭載した発電船に注目が集まっています。 陸上の発電プラントに比べ経済的な負担や建設期間が短いことから発展途上国のみならず先進国においても多くのプロジェクトが進められています。BVはLNG船に関する知見のみならず海洋浮体構造物における知見も提供することにより、多くのプロジェクトの実現に貢献しています。 船体部分は前述のFSUあるいはFSRU規則により承認・検査を行い、Top Side部分は他船級に先駆けて制定した「POWERGEN (NG) 」または「POWERGEN (Duel fuel) 」規則により承認・検査を可能としています。

FSRWPR

AiP(設計基本承認)を発行した三井海洋開発株式会社殿のFSRWP®
FSRWPR (Floating Storage, Regasification, Water-Desalination & Power-Generation:浮体式LNG貯蔵再ガス化発電淡水化設備)
(イラスト:三井海洋開発株式会社殿提供)
※「FSRWP」 は三井海洋開発株式会社(MODEC, Inc.)の登録商標です

6. 洋上LNG生産貯蔵積出設備(FLNG)

LNGの需要拡大に対応して天然ガスの生産も陸上から洋上、洋上もより沖合いで実施される例が増えてきました。BVはFLNGによる生産コンセプトの開発段階からOffshoreエネルギー開発における知見を関係者に提供し、より安全で効率的なFLNGの開発に尽力してきました。 以来、BVは各種大型プロジェクトのプロジェクトオーナーや建造造船所のみならずTopside Moduleメーカーに対する技術支援や船級としての認証サービスを行っています。

船級部門 山下 和夫

 


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