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日欧EPAの発効と食品の安全・安心について

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1. 日欧EPAの発効-

2019年2月1日、日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA、以下「日欧EPA」)が発効され、アメリカ合衆国を除く11カ国の環太平洋経済連携協定(TPP11)に続き、日本が参加する巨大な自由貿易圏がもうひとつ生まれました。日本とEUの国内総生産(GDP)は世界の約3割、貿易額は約4割を占め、これはTPP11のそれぞれ13%、15%を上回る規模です。品目数で見ると、日本が約94%、EUが約99%の品目で関税を撤廃しました。
電子商取引などの経済ルールも、下記のとおり整えられ、これにより、日欧の企業は両地域でビジネスがしやすくなります。
日本は今後人口減少により、内需の市場規模は縮小することが見込まれますが、そのような中でEUの5億人市場に参入することで、国産品の輸出拡大およびEUの市場拡大が期待されています。
産地と結びついたブランド食品や種類も相互に保護されます。例えば、日本では、「神戸ビーフ」、「三輪素麺」、「西尾の抹茶」、「八丁味噌」、「すんき」(*1)など、日欧EPAの発効により、生産者は模倣品による権利侵害を防ぐことができます。

電子商取引や知的財産などのルール整備
・ソースコードの開示要求を禁止
・データ送信への関税賦課の禁止
・「シャンパン」「神戸ビーフ」などの名称を保護
・著作権の保護期間を著作者の死後70年などに延長
・政府調達の対象を相互に拡大
EUの関税=日本の輸出 日本の関税=日本の輸入
品目 発効前の関税 発効後 品目 発効前の関税 発効後
しょうゆしょうゆ 7.7% 即時ゼロ ワイン 15%または1g当たり125円 即時ゼロ
緑茶緑茶 無税〜3.2% ナチュラルチーズ 29.8% 輸入枠内で16年目にゼロ
牛肉牛肉 12.8%+
100kg当たり141.4〜304.1ユーロ
アイスクリーム 21〜29.8% 6年目までに63〜67%削減
水産物水産物 無税〜26% チョコレート菓子 10% 11年目にゼロ
アルコール飲料アルコール飲料 無税〜100L当たり32ユーロ 衣類 4.4〜13.4% 即時ゼロ
乗用車 10% 8年目にゼロ かばん、ハンドバッグ等 2.7%〜18% 11年目にゼロ

(出典:外務省ウェブページ

日本の関税(日本の輸入)で即時ゼロはワイン、衣類で、ナチュラルチーズは輸入枠内で16年目にゼロになります。一方、EUの関税(日本の輸出)で即時ゼロは牛肉、茶、水産物などの輸出重点品目を含め、ほぼ全ての品目で関税撤廃となりました。

2. 日欧EPA発効の影響-

農林水産省は、農産物(小麦、大麦、砂糖、でん粉など13品目)、畜産物(牛肉、豚肉、鶏肉など5品目)、水産物(あじ、さば、まいわしなど9品目)の品目ごとの影響を試算(平成29年11月)しています。これによると、EUからの輸入実績がない小豆、いんげん、落花生、生果、こんにゃくいもなどを除くと、関税が即時ゼロの食品はワインだけということもあり、国内食品・飲料生産者・メーカーにとって発効直後の影響は低いと試算しています。
ただし、EUの農業従事者や食品製造者にとって、日本は非常に価値の高い輸出市場です。年間輸出額は57億ユーロを超え、EUにとって日本は4番目に大きな農産物輸出市場です。EUの農業食品(関税分類品目の)の約85%が段階的に関税ゼロで日本に輸出可能となることから、国内の事業者にとっては脅威です。
一方、食品のEUへの輸出については、豚肉、鶏肉は日本国内で豚コレラや鳥インフルエンザの問題があることから輸出の解禁は見送られたものの、関税は即時ゼロになりました。また、しょうゆ、牛肉、鶏卵、ほたて貝、ぶり、青果物、乳製品、日本酒、ワイン、塩などで今後輸出の機会が拡大します。ここで注意しなければならないのは、食品の安全・安心に関してEUは、HACCP認証、GSSI(※2)、GFSI(※3)、ISO22000などの食品安全マネジメントシステム、持続可能な漁法認定制度を日本の農業・漁業従事者、食品製造者に要求していることです。

3. 日欧EPA発効による国内食品加工会社への要求-

EUでは、牛肉及び水産物をはじめ、いくつかの食品に対して食品の安全性に関する要求があります。
これは、食品の製造・流通がグローバル化している現在、食品の安全性を向上させていくことが、世界各国・地域における共通課題となっているためです。世界の食品安全対策は、@フードチェーン全体での食品の安全管理 A科学的根拠に基づく判断・対応 B工程管理を重視し、食品事故を未然に防止すること、に重点が置かれるようになり、各国・それぞれの地域でこの考え方に基づく取組みが進んでいます。
EUに輸出する場合、一次生産を除く全ての食品の生産、加工、流通事業者にHACCPの概念を取り入れた衛生管理を義務付け(2006年完全適用)ており、例えば牛肉、水産食品は次のとおりの要求があります。

品目 主な輸出要件 施設認定者等 施設認定等の要件
牛肉 施設認定
衛生証明書の添付
厚生労働省
都道府県等及び動物検疫所
HACCP
水産食品 施設認定
衛生証明書の添付
都道府県(衛生部局)
水産庁
EU-HACCP

(出典:厚生労働省ウェブページ

4. 食品加工会社の今後の展望-

2019年3月11日で東日本大震災から8年が経過しましたが、被災地において未だ厳しい経営を続ける中小企業は少なくありません。
売上不振の要因は「既存顧客の喪失」が36.9%と最も多く、特に地場産業として重要な水産加工業は顧客が戻らず苦しんでいます。これに対し、行政も新市場開拓への支援を強めており、石巻市沿岸の再建された工場では、海外進出が必要と判断し、海外バイヤーとのやりとりのためにHACCP認証及び食品安全マネジメントシステム認証を取得し、その後徐々に売上を回復しています。
さらに、この日欧EPAをはじめ、既に2018年12月30日発効のTPP11(日本を含む11カ国の環太平洋経済連携協定)でも日本から輸出する製品の関税撤廃品目があり、今後内需の市場規模の縮小、中国向けの食品輸出には制約が継続し壁もある中で、EU向けの輸出は、日本の農業・漁業従事者、食品製造企業にとって、品質・技術を磨いてきた強みを発揮できる分野です。
日欧EPAの発効は、中小の食品生産者、製造者にとってEUへの輸出機会が増えることにつながり、食品の安全性を担保する上でHACCP認証、食品安全マネジメントシステム認証を取得することで、積極的なEUへの輸出を展開できる可能性が高くなります。

5. HACCP、食品安全マネジメントシステム認証について-

日本国内でも一部の大手流通会社からの取引条件のひとつになっているのが、HACCP認証、食品安全マネジメントシステム認証です。このコラムをお読みの皆さんは、既に食品安全マネジメントシステムを認証済み、もしくは取得を検討中だと考えられますので、ここからは規格の直近の動向をお知らせします。

まず、ISO22000は2018版が2018年6月19日発行されました。これにより、2005版からの移行を2021年6月29日まで完了を済ませることが必須です。新版への移行を済ませるには、移行審査をその数ヶ月前に受審することが必要となります。主な改訂は、ISO9001、ISO14001が2015年に採用したHigh Level Structure(HLS)の導入で、これによりISO22000も他のマネジメントシステム規格の章立てと同一になりました。この他に、組織の計画及び管理面のPDCA、運用計画及び管理の2つのPDCAサイクル、プロセスアプローチにより組織の食品安 全方針や戦略的方向性に従って意図した成果を得ることなど、多くの項目が改訂されました。

次にFSSC22000は、Ver.5が2019年5月に発行される予定です。この新版への移行は短期間しかなく、2020年12月末までに済ませることが必要と発表されています。
食品及び経営の品質をはじめ、食品安全のマネジメントシステムは、HACCPが2020年にかけて段階的に義務化される中で経営の軸となり、持続可能な組織の目標を達成するものとなっていくでしょう。

  • ※1 地理的表示法に基づく登録産品。
  • ※2 GSSI:Global Sustainable Seafood Initiative 国際連合食糧農業機関(FAO)のガイドラインを満たし、持続可能な水産物普及のための国際パートナーシップ。
  • ※3 GFSI:Global Food Safety Initiative 食料供給網の安全性を確保するために必要な制御を、食品安全マネジ メントシステムに関するリーダーシップと助言を通して提供する業界主導の活動。

システム認証事業本部 小田徹

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