Business Vision

タマチ工業株式会社
タマチ工業株式会社
(東京都品川区)

精巧で特殊な部品を小ロット生産
製品と効率の両方をISO9001でマネジメント

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■ 非常事態宣言発令-

生産拠点を静岡県富士宮市に置くタマチ工業(本社品川)は、とても特殊な精密部品メーカーだ。 製造しているものは主に、耐久レースをはじめとするモータースポーツ用のパワーユニット部品。各カテゴリーを合わせると1シーズンで100基を超えるエンジン等のパーツ群を供給している。 こうした特殊な部品を製造しているため、品質管理も複雑でデリケートだ。工場では5人の生産支援および管理監督者が自他部門を巡回し、チェックや指導、若手育成に当たっている。


米内淨社長

そんな製造現場に非常事態宣言が出されたことがあった。厳しいはずの検品の目をくぐり抜けて、いくつかの不適合品が顧客に納品されてしまうという事態が起きたからだ。
「8年以上も前からISO9001を使って品質マネジメントに心を砕いてきたのにこんな事態を引き起こしてしまい、非常に危機感を覚えました」と米内淨社長は言う。
米内社長はすぐに東京本社から富士宮工場への日参を開始し、現場で気付いたことを細かくノートに書いて持ち帰り、それを自らパソコンで整理して原因究明にあたった。
その結果、分かったのは、品質確認の仕組みと作業が平準化されていないということだった。「各々の品質確認のやり方」を尊重するあまり、その違いをあえて正したり統一したりしていなかったことが改善できておらず、チェック漏れにつながっていたのだ。
そこで米内社長はただちに工場にいる5人の管理者に目的を再認識させ、課題に取り組んでもらうことにした。管理者の品質確認の目的喪失、追跡不足、巡回の凝固化を指摘し、不適合が見逃されてしまうケースを抽出することで具体的指導を行なった。
問題箇所のチェック内容とチェック方法、そしてチェックの優先順位を詳細に示した指示書にまとめ、その改善達成度を〇△×で示すチェックシートを作成して、週に一度、危機感を喚起するメッセージとともに、工場に配信したのだ。

優先順位のフロー

それから約2ヶ月が経過し、改善要求の達成度欄は次第に〇が目立つようになった。また、社長が信頼を取り戻すために顧客に提出し続けていた「(改善)活動記録」は、顧客からの返信を管理者が直接目を通せるようなツールにして向上心に結び付けた。 「ピンチは、わが社にいろいろなことを教えてくれます。このようなことは二度とあってはいけないことではありますが、この活動を行えたことは大切な資産になると感じました」と米内社長は言う。

■ 従業員と生産効率も品質管理する-

米内社長が、事故とその処理のプロセスでいちばん感じたことは、社員クオリティの重要性だった。
紐解くと、事件が起こる前期から当期に、優秀な中堅社員数人が大企業に転職。タマチ工業で磨き上げてきた技能が大企業のライン工では台無しになることを説いたが最後は本人と家族の意思を尊重しての離脱。
若手にとってはチャンス到来であるが、経験の浅い社員は成長も著しく早いが企業側のリスクも高い。発展途上である人材をその業務に充てるということは、社員クオリティの担保が必要になる。「事故をさかのぼって考えると、このような人材マネジメントの不備が底流にあることが分かってきました。もちろんそうした不備は、待遇改善や仕事に対する誇りや興味の喚起といったことでも解消していかなくてはいけないのですが、それに加えて人材を会社の重要な品質の一つと認識して、ISO9001の考え方も参考にしながら、正しく丁寧にマネジメントしていく必要があると感じました。特に教える側である係長と課長クラスと、まだまだ覚えてもらわなければならない側、両サイドへのマネジメントが重要だと感じています」と米内社長は言う。


設備と人の仕事の入り具合を折れ線グラフで可視化して、生産効率を上げる工夫をしている。

さらにもう一つ、米内社長がISO9001のコンセプトを応用して、より繊細に管理しようとしているのは生産効率だ。同社は作っている製品が特殊かつ多品種小ロットなので、作業と作業の継ぎ目をスムーズにすることが大量生産とは異なる。たとえば、ある作業ラインが満杯なのに、その前後の作業ラインは空いてしまっているといった状況が起こりやすいのだ。これを放っておくと時間外勤務手当が予想外に増えたり、就業時間中持て余している社員にも賃金を払うという状況が起こってしまう。 そこで米内社長は、いつどこでどういう発注(仕事)が起こり、それがどのようにフローしていくかを、設備とヒト(労務)の両面から折れ線グラフに可視化することで、その折れ線になるべく大きな凸凹をつくらないように生産管理の精度を上げている。

■ 未来車のためにISO14001も取得-

介護福祉向けに開発した歩行補助椅子。近々大学病院でのモニター活用が開始される予定

近年はモータースポーツ以外にも次世代自動車開発、異業種の開発関連業務にフィールドを拡大し、試作にこだわることなく安定した品質を要求される中量産にも挑戦しだした。
クライアントをはじめとする利害関係者と業務を進行させていくと課題が見えてくる。環境に及ぼす影響をできるだけ抑えることは欠かすことができないという考えに至り、ISO14001の取得にも取り組みはじめた。
今後は、2019年9月に第一次審査、11月までには本審査、そして年内の認証取得を目指しているという。
「デリケートな部品が多く、大変なことも多いですが、夢のあるものづくりに関わることができているという自負があり、楽しくやりがいのある仕事だと思います。今後は仕事そのものとものづくりをする企業としてのプライドとモラルの両方について人材教育を強化して、さらに顧客からの評価を高め、頼りにされる企業にしたい」と米内社長は言う。
そのためにはPDCAサイクルをもっと回すこと、そして社員にもっと勉強してもらうことが必要だと感じており、企業の存在意義としている「未来歴史づくり」の道標として、今後はISO9001を活用してそれを促進したいという考えだ。
自動車産業の最先端に携わる企業としてのやりがいや難しさを、ISO9001が陰ひなたに支えているようだ。

(2019年4月19日取材)

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