ビタミンB群(B6、B12、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、葉酸)の機能と測定方法
ビタミン(Vitamin)とは、生物がその生命を維持するために必須な栄養素のなかで、炭水化物、タンパク質、脂質、ミネラルではない有機化合物のうち、その生物体内で必要量を産生できないもののことを指し、五大栄養素の一つに数えられます。体内でビタミンを合成できない、あるいは必要量を合成できないため、食品から摂取しなければいけません。
本記事では、ビタミンの種類と機能、測定方法について解説します。
ビタミンとは
ビタミンとなる物質は各生物で異なります。ヒトにおいては現在までに13種類が発見されていて、それぞれその性質から脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンに大別されます。今回ご紹介するビタミンB群とは、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン(B3)、パントテン酸(B5)、ビタミンB6、ビオチン(B7)、葉酸(B9)、ビタミンB12の8種類のことを指し、ビタミンCとともに水溶性ビタミンに分類されます。このうちビタミンB1とB2は以前のコラム「水溶性ビタミン(B1,B2,C)の機能と測定方法」で紹介していますので、今回はそれ以外について記します。
●ビタミンB6
ビタミンB6はピリドキシン、ピリドキサミン、ピリドキサールがその活性を有しており、これらのリン酸化物にも同等の活性があるとされています。免疫機能の維持に重要であり、欠乏すると皮膚炎、舌炎のほか脳波異常、痙攣発作などが起きます。また、銀杏による中毒は銀杏に含まれるビタミンB6類縁体によるB6の吸収阻害によるものと考えられています。
過剰摂取には明確な健康異常が確認されており、感覚性ニューロパシーを発症しますが、通常の食生活で過剰摂取となることはないとされています。
●ビタミンB12
ビタミンB12はコバルトを含有する化合物であり、アデノシルコバラミン、メチルコバラミン、スルフィトコバラミン、ヒドロキソコバラミン、シアノコバラミンがあります。生理作用としてアミノ酸や核酸の代謝、神経機能の正常化、ヘモグロビン合成等に関与するので、欠乏すると血液障害や神経障害が生じます。
●ナイアシン(B3)
ナイアシンはニコチン酸とニコチン酸アミドを指し、また生体内にてトリプトファンから60:1の割合で生合成されます。このことからトリプトファンを含む「ナイアシン当量」として示されることもあります。ナイアシンは生体内エネルギーであるATPや、脂肪酸、ステロイドホルモンの産生に関与しており、DNAの修復や合成、細胞分化にも重要なものです。欠乏するとナイアシン欠乏症(ペラグラ)を発症し、皮膚炎や下痢、精神神経症状を引き起こします。
●パントテン酸(B5)
パントテン酸はギリシャ語で「どこにでもある酸」という意味で、あらゆる食品に含まれているため欠乏症はあまり起きないとされています。細胞中では補酵素A(コエンザイムA、CoA)などの形で存在しており、細胞内でのCoA濃度が低下すると成長停止や副腎障害、頭痛、疲労、不眠などが起こります。
●ビオチン(B7)
ビオチンは抗炎症性物質の生成に関与することでアレルギー症状を緩和する作用があります。欠乏すると脱毛や皮膚障害、結膜炎、食欲不振の他、リウマチ、クローン病等の免疫不全症や糖尿病にも繋がります。また生卵白に含まれるたんぱく質のアビジンはビオチンと強固に結合することから、結果としてビオチンの吸収が妨げられるため、生卵白の多量摂取によりビオチン欠乏症となることがあります。
●葉酸(B9)
葉酸はほうれん草から発見されたため、このような命名をされました。プテロイルモノグルタミン酸を基本骨格とした化合物の葉酸は、特に胎児にとって重要なビタミンとして有名であり、母体で葉酸欠乏症があると胎児の神経管閉鎖障害や無脳症の原因となります。過剰摂取による障害は見られませんが、葉酸の活性がビタミンB12に類似していることから、葉酸の過剰摂取によりビタミンB12欠乏症が顕在化せず、発見が遅れることがあります。
測定方法
今回ご紹介したビタミンB群の測定方法はいくつかありますが、B1とB2以外のビタミンB群に関しては消費者庁や文部科学省から公布されている通知法において、主に微生物学的定量法が採用されています。この測定方法は、検査対象となる物質を必要栄養素とする細菌等の微生物を利用することにより、対象物質の量を測定する方法です。今回ご紹介したビタミン類の測定に使用されるのは、ヨーグルトに含まれている乳酸菌の類縁菌や、パンの発酵に使用される酵母の類縁菌などです。
各ビタミンによって食品からの抽出方法に違いはありますが、抽出後の操作はほとんど同じです。検査対象のビタミンのみが不足している培地に検査対象の食品からの抽出物を加え、そのなかでの菌の増殖具合によって食品に含まれているビタミンの量を推定します。
微生物学的定量法のワークフロー
- 検体からの対象ビタミンの抽出
- 測定用培地へ抽出物を添加
- オートクレーブ処理
- 菌添加
- 至適温度で培養
- 分光光度計にて吸光度を測定して濁度を確認
- 濁度からビタミンの含有量を算出
測定に使用している分光光度計
ビューローベリタスエフイーエーシーでは今回ご紹介したビタミンB群についての検査を承っております。お気軽にご相談ください。
参考:
厚生労働省「日本人の食品摂取基準(2020年版)水溶性ビタミン」
文部科学省「食品成分データベース ビタミン」
宮崎 大ら著「健常成人に発症した銀杏中毒の1例」
ビューローベリタスエフイーエーシー株式会社 井戸 悠太
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