
Case Study:シチズン時計株式会社(エシカルなものづくりの実践)
シチズン時計株式会社
環境マネジメント室 室長
塚田 京子様
2019/11/12開催セミナー
「SDGsに対応した企業のサステナビリティ対応2019」ご講演より
シチズン時計株式会社
(東京都西東京市)
持続可能な開発目標(SDGs)では、「(12)つくる責任つかう責任」として消費と生活パターンの変更をあげています。人や社会・環境に配慮した消費行動「倫理的消費(エシカル消費)」への取り組みは、この達成に向けて効果が期待されています。
セミナーでは、エシカルなものづくりの取り組みについて、ひとつの商品を例にご紹介いただきました。
本日は、どのようにエシカルをコンセプトにした腕時計が生まれたのか、どのような点が“エシカルなものづくり”と考えているのか、について、“CITIZEN L”の事例をご紹介いたします。
シチズングループのサステナブル経営
シチズングループは、2019年からの新中期経営計画においてサステナブル経営の推進を掲げています。
コミットメント:これからも社会とともに持続的に発展していくために、グループの事業を通じて国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成を含む、社会課題の解決に寄与することで、さらに事業拡大を図り、次の100年も継続できる企業を目指します。
”CITIZEN L”の紹介
”CITIZEN L”は、2016年にエシカルという考え方を取り入れて、日本のマニュファクチュールが手掛ける地球のように美しいエシカルウォッチとして開発されました。外面の美しさに加えて、5つのエシカルコミットメントを内面的な美しさと表現したことが特徴です。
【”CITIZEN L”開発ストーリー】
2016年商品化からさかのぼること2年の2014年、商品企画、環境、CSR部門が運命的な出会いをしました。
商品開発部門は”CITIZEN L”のリブランドを命じられ、中心となるコンセプトを模索していましたが、男性向け商品のような機能面の差別化で、難航していました。その時、世界中の女性が普遍的に共感できる「内面の美しさ」というコンセプトが浮かんできたものの、それを時計という商品にどのように落とし込むか、具体的なアイデアが無く悩んでいました。
同時期に環境部門では、RoHSをはじめとする環境規制への対応として製品化学物質の一元管理体制を整えていました。
一方CSR部門では、紛争鉱物をめぐるコンゴとその周辺諸国の悲惨な状況を耳にし、CSV(共通価値の創造)の考え方から事業を通じて社会課題の解決に貢献できないかと考えていました。
そこで、まずCSR部門がCSVという考え方を商品企画部門に提示。環境部門がサプライチェーンの一元管理体制を整えることにより実現をバックアップし、商品企画部門は内面も美しいブランドの魅力を発信。弊社でこれまで無かった開発体制により”CITIZEN L”が誕生しました。
(1) 製品成分表の公開
製品成分表の公開にあたり、「製品のどこに」、「どんな化学物質が」、「どのくらい入っているのか」、そして「どこから調達しているのか」を把握して適切に管理することが必要でした。
JAMPによる含有化学物質管理
シチズンでは2013年よりJAMP(Joint Article Management Promotion-consortium: アーティクルマネジメント推進協議会)の情報データツールを使用しています。
JAMPは、アーティクル(成型品)が含有する化学物質などの情報を的確に管理して、サプライチェーンのなかで円滑に開示するための具体的な仕組みづくりと普及を目的とした組織で、電気電子製品・化学メーカーを中心に約450社が加入しています。
情報伝達スキームchemSHERPAを用いてサプライチェーンでの含有化学物質の管理を行っています。
chemSHERPAでは9つの法令と規格に対応しています。どれに該当するかを一目で確認することができるため、クリーン調達にも有効だと考えています。
シチズンでは製品成分表をウェブサイトで公開することで、お客様に安心して使用していただける製品づくりを実践しています。
(2) DRCコンフリクトフリー宣言
シチズングループ紛争鉱物対応方針
シチズングループでは、2017年4月よりCSR調達の推進にコミットしております。 紛争鉱物に対しても、責任ある鉱物調達としてサプライヤと連携し、武装勢力による児童労働などの人権侵害を伴う資金調達に加担しないよう、武装勢力が採掘・仲介した紛争鉱物を使用しないとする「紛争鉱物対応方針」を掲げています。
サプライヤへの紛争鉱物調査
シチズングループではアメリカの紛争鉱物条項に基づき、組立製造業者・部品製造業者から原材料メーカーを対象に調査を行っています。部品製造業者はムーブメント・外装部材のサプライヤに分け、OECDの方針に従い年1回実施します。サプライヤから入手したchemSHERPA等情報を利用して紛争鉱物を含有する部品でないか確認を行い、含有する場合はCMRT(Conflict Minerals Reporting Template)による紛争鉱物調査を実施します。 この取り組みによりサプライチェーンでのDRCコンフリクトフリーに取り組んでいます。
ビューローベリタスによる第三者レビュー
紛争鉱物調査は正しい手順に従って実施されていることが重要です。
私たちはこのDRCコンフリクトフリー確認フローについて、ビューローベリタスジャパン㈱に第三者としてレビューを実施いただきました。
まず事前準備として、紛争鉱物の調査方針や管理体制の構築などを行いました。
1回目の審査はインタビュー審査、2回目は、インタビューにおいての指摘事項を是正した後のフォローアップ審査として実施されました。
第三者レビューの結果、「手順と運用に重大な不一致はない」「開示情報と訪問時に採取した情報の重大な矛盾がない」「サプライヤ調査およびDRCコンフリクトフリー鉱物使用に関する報告の展開において、役割と責任を明確にしている」となり、報告書が発行されました。
この報告書はDRCコンフリクトフリー宣言とともに、ウェブサイトに公開しております。
紛争鉱物・あらたなリスク
これまでは米国法の対象である金・錫・タンタル・タングステン、いわゆる3TGが紛争鉱物の対象とされていましたが、近年3TGに加えてコバルトの調査の要求をされるケースが発生しています。また、2021年からはEU規制が新しく始まります。
対象リスクがこれまでの武装勢力の資金源であることから、児童労働を含む人権侵害全般へと拡大、
対象地域についても、コンゴ民主共和国およびその周辺国から紛争地域、および高リスク地域へ拡大すると言われています。
より幅広いリスク・地域・鉱物の調査へと対象が拡大している外部状況の変化に、対応の必要があると考えています。
(3) CO2排出量の公開
シチズンはCFP(カーボンフットプリント)プログラム認定に参加しており、製品の原材料調達から生産、使用、廃棄・リサイクルにわたるライフサイクルにおけるCO2排出量を算出して公開しています。
エコリーフ環境ラベルプログラムとは
”CITIZEN L”では、エコリーフ環境ラベルプログラムのひとつであるCFPを開示し、認定を受けています。
環境ラベルは、エコリーフとCFPの2種類から事業者が選択することになっていますが、腕時計の場合は、エコリーフの対象影響領域としてあげられる「酸性化」「資源消費」の影響は非常に小さいとして、「気候変動」に特化したCFPを選択しています。
CFPプログラム((一社)サステナブル経営推進機構)とは
CFPは、原材料の調達から生産~流通~使用・維持管理~廃棄・リサイクルに至るまでの製品ライフスタイル全体における環境負荷をCO2排出量に換算して表示する仕組みです。
実際にCFPを算出する場合、製品ごとのプロダクトカテゴリールール(PCR)に従って行います。腕時計に関してもウォッチのPCRが認定されています。
認定されるとCFPプログラムのウェブサイトで公開されます。”CITIZEN L”はタイプ別に12個が認定・公開されています。
シチズンは、製品のライフスタイル全体のCO2排出量についても、お客様が製品を選択するための情報のひとつとしてウェブサイトで公開しています。また公開することで、お客様自身の地球温暖化に対する気づきを弊社と共有させていただいていると考えております。
”CITIZEN L”がエシカルな腕時計として広く認知していただけた要因
● 部門を横断したエシカルなものづくりの実践
商品企画・CSR・環境部門が連携した新しい形によって、これまでにないコンセプトの商品を生み出せた。
● エシカルな商品であることをエビデンスで開示
成分情報やCO2排出量開示、DRCコンフリクトフリー宣言と第三者レビュー等をもってイメージのみでなく、地球環境や人権に配慮した製品であると明確にアピールできた。
● エシカルなものづくりに関心を持つ人が増えた
誕生当時とは外部環境が変わり、エシカルという言葉が広く浸透している。
商品選択の指標として、DRCコンフリクトフリーをはじめとするエシカルなものづくりを重視する人が増えた。
シチズングループは、これからも世界中の人たち(市民=CITIZEN)に寄り添い、愛される企業になるためにサステナブルでエシカルなものづくりを推進していきます。
【お問い合わせ】
ビューローベリタスジャパン(株) システム認証事業本部
TEL:045-651-4784(代表) FAX:045-641-4330
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