最近相次いで報道される痛ましい交通事故。こうした交通事故を未然に防ぐ交通システムの確立は長年の課題でしたが、その取り組みとして期待されているのが、自動車のコネクテッド化の実用例のひとつであるV2Xです(本ニュースレター2018年10月号で紹介)。
V2XとはVehicle to Everythingの略で、車とさまざまなものをつなぐ(コネクテッド)通信技術です。おもに、以下のシステムが想定されています。

V2X最新動向

  • V2V(Vehicle to Vehicle:車車間)
  • V2P(Vehicle to Pedestrian:車歩行者間)
  • V2I(Vehicle to Infrastructure:路車間)
  • V2N(Vehicle to Network:車ネットワーク間)

従来のITS(高度道路交通システム)がVICS(*1)やETC(*2)など、自動車がネットワークに依存せずに利用可能なサービスが中心であるのに対し、V2Xは自動車とモノ・人が、双方向で情報を交換し蓄積されたデータをベースに新たなサービスを創出していく点が大きく異なります。想定されるユースケースとしては交通管制、隊列走行(CACC)、ダイナミックマップなどがあり、これらは自動運転に欠かせない技術です。

V2X最新動向

(*1) VICS:カーナビゲーションシステムを経由して渋滞情報・規制情報・道路案内・駐車場情報をリアルタイムに提供するサービス
(*2) ETC:車載器のETCカード(ICカード)と有料道路の料金所に設置されたETCレーンの路側アンテナとの間の無線通信により通行料金を自動で支払うサービス

DSRC VS C-V2X

現在、V2Xの標準の通信方式として期待されているのがDSRC(Dedicated Short Range Communications:狭域通信)とC-V2X(Cellular-V2x:セルラーV2X)の2つの規格です。DSRCは、車両通信に特化して設計されたWifiベースの通信方式で、アメリカ・ヨーロッパ・日本などで、通行料徴収や道路交通情報などのサービス提供に既に実績があります。一方、C-V2Xは、携帯電話の通信網を使用するもので、5G仕様の策定団体である3GPPが開発した規格です。4G LTEを利用したC-V2Xは、同団体が2017年3月に発表したRelease14の機能として標 準化が完了し、5Gによる標準化は、2019年12月に発表予定のRlease16で完了予定です。現時点では、実用化にまで至っておらず、実証実験が進められている状況です。

実用化で先行するDSRCを推進しているのはVolkswagen・トヨタ自動車・GMの自動車大手メーカー3社、対するC-V2Xは5GAAがその普及を目指し積極的に活動しています。2016年発足時にドイツの自動車メーカー3社と通信および半導体企業5社の計8社だった会員数が、その後100社超に拡大し、日本からもNTTドコモ・KDDI・ソフトバンクの3大キャリアと、自動車メーカーからは日産自動車・本田技研工業が、その他、パナソニックやデンソーなど大手サプライヤーが加盟し、その存在感を増しています。

日本・ヨーロッパ・アメリカのDSRCの規格

  日本 ヨーロッパ 米国
規格名 ARIB STD-T75 CEN EN12253等 IEEE 802.11p
周波数帯 5.8GHz 5.8GHz 5.9GHz

 V2Xの各国の動向

C-V2Xか、DSRCか―中国はC-V2Xでのインフラ整備を決定し、早々にC-V2X に5.9GHz帯を割り当て、2019年から2020年にかけC-V2Xがサービスインすると見込まれています。
DSRCに政府が多額の投資をしてきたアメリカでは、DSRCが優勢と思われていたものの、DSRC推進派だったアメリカ大手自動車メーカーが一転して2019年1月、2022年からアメリカで販売するすべての新型車にC-V2Xを採用すると発表、続いて2019年4月には、日本自動車メーカーが2021年からDSRCを米国で販売する車両に搭載する計画を中止すると発表し、こうした一連の発表がアメリカのC-V2X採用の可能性を示唆しているとする報道も一部あります。
一方欧州では、2019年4月欧州委員会と欧州議会がメインとなるV2VおよびV2I向けV2X通信にはDSRCを採用、C-V2Xは、遠方のインフラやクラウドサービスとの通信向けに、補完的に使用することを決定しました。
日本では、ETC用に使用されている5.8GHzは現状C-V2Xへの利用が認められておらず、今後各国の規制当局の動きをにらみながら、方針を決定していくと思われます。

中国 C-V2Xによるインフラ整備を決定、C-V2Xの周波数に5.9GHz帯を割り当て済み。2019年から2020年にかけC-V2Xのサービスインが見込まれる。
アメリカ DSRC推進派だったアメリカ大手自動車メーカーがC-V2Xを採用すると発表、2022年からのすべての新型車にC-V2X搭載を決定。2019年4月には、日本の自動車メーカーが2021年からDSRCを米国で販売する車両に搭載する計画を中止すると発表。
欧州 2019年4月欧州委員会と欧州議会がメインとなるV2VおよびV2I向けV2X通信にはDSRC
を採用、C-V2Xは遠方のインフラやクラウドサービスとの通信向けに補完的に使用すると決定。
日本 ETC用に使用されている5.8GHzは現状C-V2Xへの利用が認められていない。

 V2Xの認証

V2Xの認証はあらゆる地域のすべての交差点、自動車、そして多くの機器との相互運用可能なV2X技術を展開することとともに、以下を目的とし、V2X機器に対して検証を行います。

  • 技術基準の準拠
  • 技術基準解釈の統一化
  • 試験方法の統一化
  • V2V 、V2P、V2I (路車間)、V2NなどV2Xすべてを網羅する相互運用性
  • セキュリティ要件の準拠

米国運輸省(USDOT)のコネクテッドカーパイロット開発プログラム(Connected Vehicle Pilot Deployment Program)を支援するために開発されたOmni Air認証は、開発したV2X技術向け接続性と相互運用性の試験要件に無線機能を搭載した輸送機器が、IEEEとSAE通信規格に準拠しているかどうかを検証するものです。V2X認証により、機器メーカーは持続可能なセキュリティと信頼性の証明を獲得できます。

ビューローベリタスの取り組み

OmniAir認定試験機関

ビューローベリタスアメリカは、輸送技術の相互運用性と認証を推進するOmniAir Consortium™に認定を受けた最初のOmniAir認定試験機関(OmniAir Authorized Test Laboratory:OATL)としてDSRC-V2Xの認証、RFID道路通行料徴収システムの認証、試験機関の認定、試験ツールの認定といった製品向けの各種認証プログラムを提供しています。2018年5月、Commsignia社製のスマートシティオンボードユニット(車載機)に対しOmniAirのコネクテッドカー認証プログラムのもと世界初のV2X試験機器の試験を実施、同年11月にはシーメンスモビリティ社製のSitrafic ESCoS RSUに対しRSU(路側機)で最初のOmniAir V2X認証試験を実施しました。 また2019年2月には、ビューローベリタス韓国がアジア初のOmniAir認定試験機関として認定されています。ビューローベリタス韓国は、韓国政府出資のITS韓国から委託を受けたC-ITSサービス認証を展開中で、昨年OmniAir Consortium™とITS韓国が、V2Xの試験と認証のプログラムの共同開発に合意したことを受け、同サービスのさらなる拡大を見込んでいます。

消費財検査部門 EAW事業部 小倉 富規子

 


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