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IoT時代の幕開けとサイバーセキュリティあらゆるものがインターネットに接続し、接続したもの同士がつながるIoT: Internet of things。高速・大容量かつ多接続、低遅延を実現する5Gの実用化と低消費電力で長距離通信が可能なLPWAの普及でいよいよ本格的なIoT時代に突入するといわれている現在、メーカーの多くが自社製品のIoT化にしのぎを削っています。これまで本ニュースレターで取り上げたコネクテッドカーも、その実用例であるeCallもいうなれば自動車のIoT化です。いまやインターネットに接続しているのはルーターなどのネットワーク機器やサーバー、PC、モバイル端末などのコンピュータ機器にとどまらず、デジタル家電や自動車はもちろん、センサーさえ取り付けることができればその対象は無限に広がります。このように私たちの身近で急速に進行するIoT化が利便性の向上や業務の効率化、新しいビジネスの創出といった恩恵をもたらす一方、直面する最大の課題がサイバーセキュリティです。 ■ 激化するサイバー攻撃と狙われやすいIoT
連日のように報道され日常茶飯事となりつつあるサイバー攻撃ですが、初期の自己顕示を目的とした愉快犯によるものから次第にビジネス・政治色の強い組織犯罪へと変貌するに伴い、手口も巧妙化する傾向にあります。特に2010年以降主流となったいわゆる目立たない攻撃は、それまでのすぐに攻撃に気づき対策を講じることが可能だった目立つ攻撃とは違い、攻撃発覚の遅れが被害の拡大・長期化を招き、事態をより深刻にしています。
さらに厄介なことにIoT自体がサイバー攻撃の標的になるだけでなく、その脆弱性を突いて第三者に侵入され他のデバイスやシステムへの不正アクセスや迷惑メール送信などの中継に悪用される踏み台になるケースもあります。 ■ CIAからCIA+S(安全性)への転換
従来のITシステムを対象とした情報セキュリティにはCIAと呼ばれる、OECDが定義した3つの要素があります。
しかしながら、この情報セキュリティ3要素をそのままIoTのセキュリティへのアプローチに適用できるわけではありません。攻撃されたIoT機器が誤作動・停止すれば物理的に大きな影響を与え、場合によっては人命が危険にさらされる可能性が考慮されておらず、IoTを取り巻く事情に十分に対応しているとはいい難いからです。今後IoT化の進展が見込まれる3つの分野「自動車・輸送機器」・「医療」・「産業用途(工場、インフラ、物流)」のようにとりわけ人命に直結する領域では、安全性(Safety)が何よりも優先されます。この安全性こそCIAと並んでIoTのセキュリティを支える柱であり、もっとも重要な要素といえます。そして安全かつ継続して稼働することが求められるIoTのセキュリティではCIAの中でA(Availability:可用性)の重要度が高くなる点も、資産である情報を守る特性ゆえ機密性をとくに重視する情報セキュリティと大きく異なります。 ■ IoTのサイバーセキュリティ対策
日々激化するサイバー攻撃からIoTを防御する有効な手立てにはどんなものがあるのでしょうか。効果的な取り組みとして推奨されているものにセキュリティ・バイ・デザインの導入とPSIRT(Product Security Incident Team)の設置が挙げられます。 (1) セキュリティ・バイ・デザイン
出典:情報処理推進機構「セキュリティ・バイ・デザイン入門」(ET/IoT2016 プレゼン資料) (2) PSIRT(Product Security Incident Team) ■ 規制強化と個人情報保護への取り組み
IoTを日本国外で展開する上で視野に入れなくてはならないのが各国における規制強化の動向です。IoTの隆盛に伴うサイバーリスク増大を背景に、各国はセキュリティ強化を国家戦略上の重要な課題として位置づけ規制強化と法整備に乗り出しています。氏名や生年月日、住所のほかウェアラブル端末には欠かせない位置情報や利用履歴など個人情報を収集・活用することの多いIoTには、各国での個人情報保護への取り組みも大いに関係してきます。 ■ 今後の課題
IoT製品は一般的に設計・開発から市場投入までの期間が短いため、セキュリティ対策の重要性を十分認識していても社内から理解を得られず、セキュリティを施す時間をなかなか確保できないジレンマを抱える現場も数多くあるかと思われます。セキュリティの確保なくしてIoTのビジネスを継続できないことへの理解を全社的に共有し、まずは社内全体のセキュリティへの意識向上を高めるのがサイバーセキュリティ実現への一歩になるのかもしれません。いずれにしても実効性のあるセキュリティ対策を策定し確実に実現できるよう体制やルールの整備が急がれます。 ■ ビューローベリタスの取り組み
IoT機器に対して様々なセキュリティー診断を行うONWARD SECURITY CORPORATION(本社:台湾)と、パートナーシップを結びました。
消費財検査部門 EAW事業部 小倉 富規子 【お問い合わせ】
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