Business Vision

世界有数の工業用ベルトメーカーが、
これからも世界で闘い続けるための布石IATF16949

三ツ星ベルト株式会社
三ツ星ベルト株式会社 (兵庫県神戸市)
https://www.mitsuboshi.co.jp/


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■ IATF16949の取得は取引条件-

三ツ星ベルトは1919年神戸に創業した工業用ベルトを主力とするメーカーだ。2019年に100周年を迎えるが、この間たゆまず工業用ベルトの開発と製造に勤しんできた。
工業用ベルトの需要は、産業界の様相の変化に連動して変化する。かつて花形だったのは農業機械や工場内のコンベアを動かすためのベルトだが、近年ではプリンターの駆動部分の小さく精巧なベルトや、用途に応じて適切な素材を用いたベルトなどにスポットが当たっている。
そんな中で、変わらず大きなマーケットを維持しつづけているのが自動車用のベルトだ。
エンジンを回して走る自動車にとってベルトは欠かせない部品であり、日本の自動車産業の発展とともに三ツ星ベルトもそのビジネスを伸ばしてきた。

品質保証本部長 後藤和生氏

品質保証本部長
後藤和生氏

今、自動車業界の最先端を行っているのは電気で走るEV車と自動運転車だ。EV車に移行すると従来のベルトの需要は減少し、そうなると先行きの不安もあるのではないかと思うが、「ハイブリッド車もまだ走っていない国がたくさんあるのですから、EV車が世界を席巻するのはまだまだ先の話です。また、パワステや電動スライドドアなど新たな需要も生まれており、自動車用ベルトの需要はそんなに簡単には減りません。」と後藤和生品質保証本部長は言う。
となれば、同社にとって自動車業界は、当分の間、絶対的なクライアントであり続けるだろう。実は、それが同社が2004年にいちはやくIATF16949認証(当時はTS16949)を取得した最大の理由である。

大手企業と呼べる工業用ベルトメーカーは、実は世界中にそう多くない。誰もが名前を知っている企業を数えると、欧州に3社、米国に2社、そして国内に同社を含めて2社程度で、世界的な自動車メーカーは、たいていこの数社の中からベルトの発注先を決めている。
それはありがたいことなのだが、反面、その品質への厳しい要求に応えることは容易ではない。
その「厳しい要求」の一つが、IATF16949認証の取得である。

品質保証部専任課長 田中克弥氏

品質保証部専任課長
田中克弥氏

「主要な自動車メーカーと取引しようと思うなら、IATF16949認証の取得はもう当たり前のことで、取得していなければ話にならない、いわば取引のためのパスポートといった感じです」と田中克弥品質保証部専任課長(以後、専任課長)は言う。
とりわけIATF(国際自動車産業特別委員会)のメンバーである欧米の自動車メーカー9社は、IATF16949認証の取得を取引条件の一つに位置付けており、取得していなければそもそも取引の土俵にも乗れないのが現実だ。

そこで同社では2004年の国内3工場での取得を皮切りに、海外工場でも取得を重ねて、現在は国内外の主要な事業所や工場をIATF16949マネジメントシステムで運営している。
「それでも、クライアントからはこれでOKですとは言ってもらっていません」と石田智和専任課長は言う。「IATF16949認証の取得と運営は共通の要求事項を満たすために当たり前。そこから貴社がそのオリジナリティと誠意で当社の固有の要求事項に応えてくれるかを見せてくれ、そこが大事だと言われるんです」。自動車業界の品質へのこだわりと厳しい姿勢が垣間見えるエピソードだ。


■ 事業所の「うちが正しい!」をなくす-

品質保証部専任課長 石田智和氏

品質保証部専任課長
石田智和氏

ところで、IATF16949マネジメントシステムを導入して社内はどう変化したのだろうか?
「いちばん大きな変化は、事業所ごとのルールがなくなり、『うちのやり方のほうが正しいんだ!』という論争がなくなったことでしょうか」と言うのは林田正明専任課長だ。
それまでは現場スタッフのやり方と独自の技術に頼っていた部分があり、ベテランかつ技術の確かな人ほど、自分のやり方を譲らないという現象があった。
しかしIATF16949マネジメントシステムを導入してからは、そうしたことが次第になくなり、事業所でのやり方が正しく平準化されるようになったという。

もちろんそこには、現場の理解を得ることをいちばんに考えた会社側の取り組みがあったことは言うまでもない。中でもいちばん効果的だったのは、「現場の意見や言い分を否定しないようにしたことだった」と田中克弥専任課長はいう。

品質保証部専任課長 林田正明氏

品質保証部専任課長
林田正明氏

従来の自分のやり方や主張を曲げない人に対して、いったんは本人のやり方でやってみてもらい、審査の時に審査員から指摘してもらう方法を、時にはあえて取ったという。
「私たちが言っても聞いてくれないけれど、審査員の先生から言われるとしぶしぶでも修正や対応をしてくれる。これも審査のうまい活用方法だと割り切りました」と吉村正之専任課長は苦笑いする。
ところがこの方法は思わぬ効果も生んだ。最初は不満気だった現場スタッフが、次第に新しいアイデアや提案をしてくれるようになってきたのだ。ベテランで腕に覚えがあるだけに、言われたことの上を行くやり方をしたい。しかし今までと違って一人で勝手にするのではなく、ちゃんと提案してマネジメントシステムに組み込んでオーソライズしてもらう必要がある――IATF16949認証の取得は、こんな心理作用を現場にもたらしたのである。


■ サプライヤーの取得が高めるモチベーション-

品質保証部専任課長 吉村正之氏

品質保証部専任課長
吉村正之氏

同社では9の海外拠点でもIATF16949認証の取得をしており、今後はサプライヤーにもIATF16949要求事項を順次取り組んでもらう方針だ。
「上から下まで一貫してぶれずにマネジメントされている状態が望ましいからだ」と後藤和生品質本部長は言う。
それが実現すれば、IATFのメンバー企業の監査にもより堂々と対応できるような気がすると苦笑いする。
実は、海外拠点や(海外のサプライヤーに)IATF16949認証を取得してもらう方針は、現場スタッフのモチベーションも高めている。「海外の取引先企業が認証を取得して業務改革をしようとしているのに、自分たちがちゃんと理解して実行していなければ申し訳ない」という意識が高まっている気配があるそうだ。
まさに後藤本部長の目論見通り、IATF16949認証の元で上から下までが一つになって、クライアントの厳しい要求に応えようとしている様子が伺える。
同社では近年、長年培った工業用ベルトのための技術と素材を活用して、新しい分野の商品やサービスの提供に着手しはじめている。そうした分野においても、認証の取得と活用から得た知識やノウハウはきっと役立つことだろう。
「今までもこれからも、三ツ星ベルトがよりどころとするのは品質。今後、第三国の追い上げも厳しくなると思うが、価格や過剰なサービスで戦うのではなく、あくまで開発力を含む品質で勝負していきたい」と後藤本部長は力強く宣言した。

(2018年7月9日取材)


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