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荏原製作所におけるISO14001認証統一の概要

株式会社荏原製作所
内部統制・リスク管理統括部 環境推進課
金子 一彦 様
「統一認証セミナー」(2018年2月27日/東京)でのご講演より

株式会社荏原製作所
株式会社荏原製作所 (東京都大田区)
https://www.ebara.co.jp/


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皆様こんにちは、荏原製作所の金子でございます。 「荏原製作所におけるISO14001統一認証の概要」についてご紹介させていただきます。

■ 認証統一のきっかけ -

株式会社荏原製作所 内部統制・リスク管理統括部 環境推進課 金子様

当社は羽田本社のほか、神奈川県の藤沢、千葉県の富津及び袖ケ浦、栃木県の藤岡、三重県の鈴鹿、そして熊本に事業所があります。従来、事業所ごとに異なる環境管理ルールを定めていました。
近年、定年退職に伴い各事業所の環境管理部門員が減少し、EMSの継続的改善に要するマンパワー上の制約が強まってきました。そこで、環境監査や廃棄物管理を中心に、荏原製作所として共通のルールを設け、各事業所のEMS共通化の垣根を少しずつ低減させていきました。
また、ISO14001の認証維持コストについても削減できるに越したことはありません。

図1:認証統一のきっかけ

認証統一のきっかけ

こうした背景のなかで、ISO14001の規格が2015年版に改定されるということで、特にサプライチェーン、製品環境対策を中心に、環境管理を強化しなくてはならなくなりました。
従来のように、事業所ごとに環境マニュアルを変え2015年版に備えるのはマンパワーが不足しがちな上、会社全体で俯瞰すると、無駄作業も発生します。そこで、各事業所の環境管理ルールを一元化していこうと、認証統一への機運が一気に加速しました。


■ 認証統一前の状況 -

図2:荏原製作所 環境管理体制(認証統一前)

荏原製作所 環境管理体制(認証統一前)

図2が認証統一前の荏原製作所の環境管理体制図です。
環境に関する最高意思決定機関として環境統括委員会が設置され、環境担当役員が委員長を務めていました。各事業所から予算の裏づけを持てる役職者を環境責任者に、また環境管理責任者として環境管理部門長に相当する者を選任していました。風水力機械カンパニー、環境事業カンパニー、精密・電子事業カンパニーからも環境責任者と環境管理責任者を選任してもらっています。環境責任者、環境管理責任者で環境統括委員会を組織しています。その下の環境管理責任者会議は、環境管理部門長レベルの環境管理責任者が集まって環境管理上の課題を議論し、必要に応じて環境統括委員会に上申するという形で活動しています。
各カンパニーは各事業所で事業活動を行うわけですから、環境に配慮した製品を作るとともに各事業所の環境に関するルールも守ってもらっています。
なお、各営業拠点はコーポレート管下で環境管理が行われています。
海外も含めて関係会社は各カンパニーの環境管理の管下に入ります。
ただし、海外関係会社の環境管理状况を把握するのは簡単ではありません。中国に所在する風水力機械カンパニーについては、ビューローベリタスにご協力頂いて、私自ら現地でリスクベース環境監査を行った経験があります。


■ 3重の監査審査-

当社の環境マネジメントの特徴として、3重の監査審査を行っていることが挙げられます。まず第一者監査として内部環境監査があり、これはISO14001認証を取っておりますので当然実施します。また第三者機関による第三者監査、これもISO14001認証を維持する上で必要です。これらの監査に加え、コーポレート環境監査と呼ぶ第二者監査を行っています。
コーポレート環境監査は環境推進課が主催して企画するもので、各事業所の環境管理部門から監査チームを作ります。ある事業所が別の事業所を監査する、あるいはある事業所が国内の関係会社を監査するといった二者監査を行います。

図3:荏原製作所の環境監査

荏原製作所の環境監査

これが3重の監査の仕組みです。環境推進課が監査プログラムを作り、荏原製作所として各事業所を横断する監査ルールを設けます。監査報告書などもフォーマットを統一し、監査ではこういったところを見てくださいということを教育して、全社として共通のルールで監査を行います。

コーポレート環境監査は、事業所によらず、荏原製作所として統一された仕組みで実施します。監査員に対する教育は環境推進課が実施します。
コーポレート環境監査員に対する教育の事例を紹介します。教育資料として、確認のポイントというものを盛り込んだ紙面を数多く作成し、終日の監査員教育を実施します。ある年は危険物管理を中心に、別の年は汚染リスクチェックを中心にという具合に、環境推進課が毎年テーマを選定し、内容を更新して作成します。廃棄物リスクを重点的にチェックしたいと考えた年には、廃棄物系の確認のポイントというものを手厚く作って共有し、監査に送り出します。図4は、フロン排出抑制法に関する確認のポイントを例に示したものです。
監査員がポイントに基づいて監査すると、指摘事項が実際によく見つかります。
このコーポレート環境監査を共通化された仕組みの基盤の一つとしました。

図4:教育資料の例

教育資料の例

■ 業務ルールの共通化 -

その他のルール共通化の例を説明します。
例えば、PRTR届出やSDS発行、事業所内の化学物質管理の仕組みとしてM-Quickシステム(アントレンド社)を当社では導入しています。これが開発された当時、当社は事業所ごとに化学物質の管理の仕組みがばらばらだったので、このシステムを導入し、ルール共通化の一つとしました。
製品含有化学物質については、事業所やカンパニーによらずProChemist(NEC)システムを活用して製品含有化学物質の管理を推進しています。
廃棄物管理には「e-廃棄物管理」(アミタ社)という支援サービスを導入し、マニフェストや契約書のチェックをすることとしました。ここでも他社の仕組みが入らないように進めていきました。
さらに現場のごみ出し、処理会社の紹介、契約書作成、急なごみ処理の発注などに対して、「廃棄物ベストウェイ」という事業所の廃棄物管理の総合的な支援サービスも導入しました。各事業所の協力のもと、環境推進課が音頭を取って特定のツールを導入していくことで、ルール統一の機運を高めていきました。
廃棄物の処理委託契約書も、環境推進課にて全事業所統一の契約書雛形を用意し、全契約書を環境推進課、法務部、経理部で審査することで法的に不備のある契約書が外で運用されないように厳重に管理しています。
当社雛形は全国産業廃棄物連合会の契約書の雛形を使っていますが、広く一般的に使われている文章型のものでなく、ごみを「誰が」「どこへ」「何トン」運んで「どう処理して」「最後にどうなったか」「気をつけること」などがコンパクトに書ける表縦書きのものを選択し、運用しています。

■ 認証統一の工程 -

図5:認証統一の工程

認証統一の工程

ISO14001認証を2015年版へ移行させる際、各事業所が独立独歩で諸事対応するのでは、同一作業の重複といった無駄が生じることが、認証統一の動機の一つでした。
2014年6月、当社の環境統括委員会で認証統一を決議し、作業をスタートさせました。2014年12月の終わりに各事業所から再編されたメンバーでワーキンググループを組織して、認証統一のキックオフを行いました。
ワーキングループ活動では、全社のルールを抜本的に見直し、全ての環境管理規程をゼロベースから書き直し、環境マニュアルに紐付いた環境管理ルールを取りまとめていきました。
2015年から2016年にかけてまとめ作業を行ってきて、いよいよ会社の経営層を巻き込む際には、ビューローベリタスにお越しいただいて、環境管理で今どういうことをやろうとしているのかという経営層への説明会を開きました。どんなことを実施するのか、その結果環境リスク管理が強化されるとか、コストが下がるとか、効率的な環境管理システムになるなど、いろいろお話しいただきました。
2016年10月にいよいよ全ての従業員に認証統一の説明をするということになりました。当社は毎年、協力会社を含め、荏原製作所の全従業員が受けなくてはいけない一般環境教育というものを行っています。この環境教育は毎年新規の内容に差替えて行っておりますが、2016年は図6のような内容を入れ、羽田、藤沢、富津、袖ヶ浦、熊本、栃木、6つの事業所が環境認証を一本化する、2017年4月から本格運用する、一部の部門には先行して新しい環境管理ルールを適用する、という趣旨の説明をしました。

図6:2016年の環境教育で従業員に説明

2016年の環境教育で従業員に説明

全従業員への認証統一の説明と前後して、2015年版対応の内部監査員の教育を開始しました。ビューローベリタスより全社を一気に変える必要はなく、一部の組織を先行してよいという助言がございましたので、各事業所の一部の部門に先行ブロックとして2015年版システムを運用してもらい、内部監査を行いました。
2017年4月1日から全ての部門を対象に、新しい環境マネジメントシステムに乗り換えることになりました。2017年の6月初頭に環境マネジメントレビューである環境統括委員会を開き、その結果を踏まえてビューローベリタスの審査が行われました。
移行審査のクロージングは2017年9月21日、実際に統一認証及び移行認証が終わったのが同年10月11日でした。
実は富津事業所のマネジメントシステムの有効期限が10月17日で、あと1週間遅れていたら一時的に認証のない事業所ができてしまうというギリギリのタイミングでなんとか認証統一と2015年版の移行を完了させることができました。

■ 認証統一後の体制 -

認証統一後は、図7のような環境マネジメント体制となりました。
トップマネジメントは集団指導体制でもよいということなので、経営会議をトップマネジメントとしています。環境統括委員会の下に環境管理責任者会議が位置付けられているのは従来どおり、環境推進課はその事務局という位置づけになりました。
各事業所は本社コーポレート部門に所属します。コーポレート環境推進課が各事業所を代表してISO14001認証の事務局を担当します。
鈴鹿事業所は実態がほとんど関係会社ですので、荏原製作所の認証からは外れ、関係会社として独自に認証を持つということになりました。
各カンパニーは各事業所で事業活動を行うので、環境マネジメント活動にあたり、事業所のルールを守ってもらうことになります。支社、支店はコーポレートの傘下で、関係会社は各カンパニーの管理のもとで環境活動を行うという点は従来どおりです。

図7:荏原製作所 環境管理体制(認証統一後)

荏原製作所 環境管理体制(認証統一後)

■ 認証統一による変更点 -

認証単位は統一前がサイト単位、統一後は荏原製作所一本です。統一前のトップマネジメントは各サイトの事務所長、あるいは事業所長であったところ、統一後は経営会議がトップマネジメントということになります。ISO事務局は各サイトの環境管理部門から環境推進課になりました。
認証統一前、関係会社は所在する荏原製作所各事業所の認証範囲に含まれていましたが、認証統一後は、荏原製作所の認証範囲から外れました。認証統一、認証移行によりEMSの質も変わり、経営戦略的な取り組みを進めるための環境管理ということで組織の課題、利害関係者のニーズを踏まえたEMSを推進しています。
認証統一後は、トップマネジメントである経営会議の指示のもと、環境マネジメントプログラムに該当するアクションプログラムを絶対に目標達成するものとして活動しています。
また、製品のライフサイクル管理という観点で、調達先に対する調査が制度化されています。各事業所ではなく、基本的に各事業体、カンパニーがこういったサプライチェーン管理を行うように新たなEMSは見直されています。
また、ESG経営を踏まえて各カンパニーにKPIが設定されており、進捗を管理して情報開示することになっています。

図8:荏原製作所 EMS認証統一による変更点

荏原製作所 EMS認証統一による変更点

■ 「全社一般環境教育STEP」と「環境審査」の開始 -

図9:環境審査フローを見直しガバナンス強化

環境審査フローを見直しガバナンス強化

当社は2000年に大きな環境汚染事故を起こした経緯があります。こういう事故を二度と起こさないための施策の一つとして「全社一般環境教育」と「環境審査」が導入されました。
環境審査とは会社の設備を新設、改造、撤去などする場合に、汚染に繋がるものはないかを審査するものです。事業体の審査と事業所の審査、環境推進課の審査と3段階の審査を行い、パスすれば着工が許可されます。
これまでのルール統一化の中で、環境審査に関する業務フローも全事業所で統一しており、2018年よりオンライン運用を開始します。環境審査のオンライン運用化により審査の迅速化と環境汚染防止の一層の徹底が今後ますます強化されます。

■ 認証統一のメリット・デメリット -

今回の認証統一は、環境配慮を本格的に本業に組み込ませるいい契機となったと考えています。従来、事業所の環境管理部門は汚染流出の防止を主眼に据えてきました。事業所の環境管理部門は各事業体の詳細については指導できませんので、認証統一は事業体における環境管理を独り立ちさせるいい契機にもなりました。
従来の荏原製作所における環境施策は事業所環境管理部門の合議制で行われていましたが、認証統一により、トップマネジメントは各事業所の事業所長ではなく経営会議になりました。トップダウンが強化され、環境パフォーマンスの大幅改善と目標達成のスピード感も重視されるようになりました。
事業所間、事業体間の温度差を埋め、スピード感あるマネジメントを推進するのは、やはりトップダウンなのかなと感じています。
一方で、各事業所は認証機関からの直接の圧力がかからなくなってしまったので、環境推進課に任せておけばよいという「待ち」の姿勢が出てきてしまった印象を持っています。

■ まとめ〜認証統一のポイント〜 -

各事業所のステークホルダーはその事業所に所在する従業員であり、地元行政であり、地元住民であるため、いわゆる会社全体視点が弱い傾向が垣間見られます。認証統一においては、あらゆるステークホルダーを念頭に全体コンセプト、つまり「べき論」を固めてトップダウンでマネジメントシステムを構築していくことが大切だと思います。
認証統一後の環境マネジメントの推進や見直しにおいては、各事業所やカンパニーと適度に役割を分担しつつ、緊密に情報を共有することが必要です。例えば環境審査の運用のオンライン化については、音頭をとっているのは藤沢事業所です。廃棄物ベストウェイについては富津事業所を中心に運用を広げてきました。このように役割分担を明確にし、相互の協力関係をますます深めていくことが重要だと考えています。

以上が当社の認証統一の内容となります。ご清聴ありがとうございました。

※各図は講演資料より抜粋



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