Business Vision

植物性乳酸菌を使った治療用食品を開発するベンチャー企業
取引先監査に先手を打ち信頼を得るためにFSSC22000を取得

株式会社バイオテックジャパン
(新潟県阿賀野市)

http://www.biotechjapan.co.jp/


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米どころならではのベンチャー企業

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バイオテックジャパンは植物性乳酸菌を使った発酵技術の開発と、その技術を使った治療用食品の製造を手掛けるベンチャー企業だ。
創業者である社長が、「これからのキーワードは健康、安全、環境保全だ」と考え、米どころ新潟ならではの米から分離した植物性乳酸菌に注目し、食品開発の技術者を募り、23年前に起業した。

当時、乳酸菌といえば牛乳など動物性の原料から採取するのが一般的で、植物から乳酸菌を分離して工業レベルで発酵させたのは同社のみであった。
当初は、植物性乳酸菌で素材を発酵させる技術開発を業務としていたが、その業務のやり方に次第に問題が生じてきたという。「発酵に成功するとそのノウハウだけをコピーして使われるといったことも起こりました」と、江川穰専務は苦笑する。そこで以前より模索していた、自社で最終商品までを作り上げる形態への移行を本格的に進め、2000年、「まさに社運をかけた挑戦」(江川専務)の結果生まれたのが、低たんぱくのパックごはんという商品だった。
この「低たんぱくパックごはん」は、外見も食味も一般的なスーパーに売っているパックごはんと変わらないが、含まれるたんぱく質の量はわずか25分の1。腎臓病患者のためのパックごはんである。
腎臓病患者は腎機能低下を抑制するため、食事療法において、たんぱく質の摂取を減らす必要がある。たんぱく質の摂取を減らすと、おかずが少なくなり、今度は必要カロリー不足になってしまう。この矛盾を解消するためのごはん、それが同社の開発した「低たんぱくパックごはん」である。これはお米のたんぱく質を植物性乳酸菌が分解する特性を利用して、お米を乳酸菌の液で発酵させて作られる。
低たんぱくパックごはんの開発の成功で、大手医療メーカーや食品メーカーのODM(Original Design Manufacturing)生産を受注するようになっていった。やがて低たんぱくパンの開発にも成功し、パン工場も敷設。同社は医療用食品メーカーとして本格的に稼働し始めた。
ここで出てきた壁が、取引先の厳しい監査だった。一般的な食品でも品質管理は厳しいものだが、それが治療用食品となればなおさら。それも年々厳しくなる傾向があり、「監査に対して、どうしても後手後手に回る状態が続いており、不本意な気持ちでいっぱいでした」(江川専務)。

一気にFSSC22000取得に挑戦

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そんな経験から、認証取得の必要性を感じた江川専務は、テクニカルセンターのマネジャーである山口正樹氏と一緒にリサーチを始めた。
「すると新潟県内で最初にFSSC22000 を取得した食品会社があることが分かり、早速話を聞きに伺いました」(山口マネジャー)。
その結果、二人は「やはり認証取得が必要」という点では一致したが、別の点で食い違った。「まずISO22000を取得し、認証に慣れてからFSSC22000を取得する方法が良い」と考える江川専務に対して、山口マネジャーは「いずれFSSC22000を取得するなら最初からそれに挑戦したほうがいい」と主張したのだ。
「最初は無謀だと驚きましたが、現場をよく知るマネジャーが『できる』と言うのだから、次第にやってみようかと思うようになって、結局いきなりFSSC22000を取得することにしました」と江川専務は当時を振り返る。
ところが当の山口マネジャーは「漠然とできるような気がしただけ」だったそうで、実際、初回審査の時には「審査員の指摘の意味もほとんど分からなかった」という。
しかしコンサルタントのサポートが手厚かったことと、たびたび受けていた取引先の厳しい監査のおかげでそれまでに書類をしっかり作成していたことが味方した。「落ち着いてよく見直すと、書類が割としっかり揃っていたので、『そうか、これをFSSC22000 の要求事項に沿って整理したり、組み立て直したり、足りないものを補完したりすればいいんだ』と気づいたんです」と山口マネジャーは言う。
そこで見直してみると、今までの書類には「作業(部署)ごとの詳細文書」はあるが「全体のコンセプトを語る上位文書」がないということが分かった。そこで上位文書を作成すると同時に詳細文書を整理すると、なんと結果的に日報が半減したという。「あちこちで同じような日報を書いていたので、それを一元管理して、特に生産管理の書類をシステム化したら日報が半分になったのです」と山口マネジャーは苦笑する。

最終目標は独自のシステムの構築

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一方、FSSC22000のマネジメントシステム導入の当初、生産現場には少なからず抵抗感があった。事務局を担った山口マネジャーは、彼らを「今までと違うことをするのではない。改善活動の延長として取り組もう」と説得し、同じことを外部コンサルタントにも繰り返し言ってもらった。「正直、現場の意識を変えてもらうことに、いちばん苦労しました」と当時製造担当役員だった江川専務と山口マネジャーは声を揃える。
この状態に風穴を開けてくれたのは副工場長だった。30歳代半ばの彼は、二人の思いとFSSC22000に理解を示し、率先して協力してくれた。するとその姿に班長が追随し、次第にFSSC22000への理解と実践が進んだという。
こうして会社が変化していっている実感が出てくると、社員に次第に自信が付き始め、各自がFSSC22000について勉強するようになったり、チームごとの競争意識が出てきたりするようになった。それに伴い現場の自立が進み、自分でいろいろな判断ができるようになってきたという。さらに、FSSC22000認証を取得してから取引先や外部の監査が減り、それに伴い外部監査に係る費用や手間、時間が削減できるようになったことも大きなメリットである。
また「近い将来、低たんぱく食品に続く第2の柱を作りたいのですが、その開発やビジネス展開を品質保証という面から支えるFSSC22000だと思っています」(江川専務)という。
しかし一方で、取得3年目の今、新たな課題も出てきている。
まずは、社内にやり切った感が漂い、進歩がなくなってきていること。次に、社員間に格差が出て、理解や実践に格差が出てきていること。さらにFSSC22000初代事務局長である山口マネジャーが作ったシステムをずっとそのまま運用していて、若手の主体的、積極的な台頭が見られないこと。
「これらの課題を克服して、最終的にはFSSC22000の上を行く自分たち独自のマネジメントシステムを持つことが理想であり努力目標です。まだまだ先の話でしょうが」と江川専務と山口マネジャーは声を揃える。


(2017年3月29日取材)


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