Business Vision
 

電子部品化が進む自動車業界からの要請で
ISO/TS16949認証を取得

新規取引や取引拡大の切り口としての効果も期待


新光電気工業株式会社
アセンブリ事業部

  (新潟県妙高市)

http://www.shinko.co.jp/



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メリットの大きい車載用製品に挑戦

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今回の主役「新光電気工業株式会社(以下、新光電気)」は、半導体パッケージの総合メーカーとして、気密封止、精密加工、薄膜形成、微細接合など多彩なインターコネクト技術を駆使して、半導体用精密部品から組み立てまでの製造を行っている。
今回、自動車業界で世界的に認められている品質マネジメントシステム規格であるISO/TS16949(以下、TS)認証取得を牽引したアセンブリ事業部は、半導体のいわゆる後工程を手がけており、昨今、国内半導体事業の統廃合が進む中、ユニークな存在である。1979年の事業開始以来、半導体パッケージの変遷に合わせて必要な要素技術を開発してきた。
工業製品の多くが電子化される昨今にあって同社技術・製品へのニーズは安定的に高まっているが、一方で短期間でのモデルチェンジや納入価格への高い対応力が求められるなど、厳しい局面も多い。
そんな中で、同社が今後積極的に手掛けたいと考えているものの1つが、車載用の半導体パッケージだ。手掛けたい理由は、自動車はモデルチェンジのスパンがスマートフォン、携帯電話やデジタルカメラなどに比べて長いため、開発した製品を長期間にわたって納品できること。いったん納品を開始すると、その後安定的に長く取引を続けられる傾向があり、経営的なメリットが大きいのだ。
ただし、車載用製品をしかるべき自動車(部品)メーカーに納品するためには、多くの場合、TS認証を取得することが求められる。そこでアセンブリ事業部では取得を決断、2012年11月にキックオフ、2015年1月に本審査を受け、同年7月に取得に至った。
キックオフから取得まで3年弱の歳月を要したことでも分かるように、この認証取得はなかなかの難産だった。だが、難産だったゆえに同事業部の品質マネジメントシステムの地盤がより強固なものとなり、またこれからTS認証を取得しようとする企業にとっては参考になる事柄も多い。では、取得決定から取得後の現在に至るまでの流れを見ていこう。


顧客からの熱心な取得要請

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新光電気アセンブリ事業部が最初にTS認証の取得を意識したのは2012年10月のことだ。長年取引をしてきた有力な顧客(以下、仮にA社)が新たに車載品の半導体製造を開始するにあたり、「この半導体のパッケージングを、それまでの取引を通して信頼を置いている新光電気にぜひ担って欲しい、ひいてはTS認証を取得して欲しい」と、リクエストしてきたのだ。
1カ月間にわたる検討の結果、同事業部はA社の申し出を受けることを決めた。車載品製造の請負にはハイレベルな技術力と品質保証力が必要だが、ゆえに受託がもたらすビジネスメリットは大きい。その高いハードルへのチャレンジは、是が非でもTS認証を取得するという決断にも直結していた。
そこからプロジェクトチームが結成され、アセンブリ事業部を中心とする全社各部門、そしてA社が一体となった取り組みが始まった。
前述の通り、かねてから新光電気の技術力と誠実な姿勢を評価していたA社は、新たな車載品の製造をぜひ新光電気に発注したいと考えていたが、品質に対する要求には妥協が無かった。自動車を専門とする監査員を自費で同事業部の工場に派遣し、幾度となく厳格な監査が実施された。
「最初の来工監査は予想外の惨敗でした。あらゆるところにNGを出されて、 多少なりともあった自信や自負は跡形もなく消え去りました」と崇原 泉 アセンブリ事業部品質保証部長(管理責任者)は苦笑する。
しかしA社監査員の指摘や指導は、すべて理にかなったものばかりだった。そのハードルの高さと道のりの遠さに暗澹とはしたものの、車載品を納入することの厳しさと、TSの要求レベルの高さを改めて体感したスタッフたちは、挑戦心を燃やした。「A社監査員の要求レベルに達する日を必ず現実のものにする!」という強い思いを共有して、急ピッチで改善に取り組み始めた。


TSルールのハードルを乗り越えて

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しかしここでTSルールに絡むハードルが待っていた。TS認証を取得するためには12カ月間の納入実績が必要なのだが、取引を急ぐA社より、早期に認証を取得して欲しいという要請を受けたのだ。そこでビューローベリタス・アメリカのスタッフが米国のA社に出向き、直接、納入実績期間ルールの説明を行った。
最終的には、12カ月間の納入実績を待たずしてTSへの適合性を証明できる「LOC(適合書簡)審査」を受審し合格、自動車免許でいう「仮免許」の発行によりA社への車載品納入の許可を得、A社の要請に応えることができた。2013年7月のことである。
しかしながらLOCの予備審査を受けた後には、ルール改訂によるPOS (Portion of Site)問題が浮上したのである。
POSとは、認定監督機関(IAOB)への事前申請が必要ではあるが、「自動車向け製品の製造ラインが、非自動車向け製品製造ラインと隔離されていることによって、審査対象人員を限定できる」というルール。ルール改訂によって審査対象になる人員規定が変更される可能性が出てきたものの、その適用基準と対象サイト管理の整合性がなかなか明確にならないため、受審準備を進められないという問題だった。POS申請書類の準備には、仔細な情報を含んだ製造サイトの写真、敷地レイアウト、フロアレイアウト、工程などを事細かに明記した文書をわかりやすくまとめる必要があり、準備に時間がかかる。承認基準も一段と厳格になったため、事前資料の準備やその後のやり取りに予想以上の時間を要することとなった。
幸い審査前に申請が承認され、審査工数を抑え、かつ当初のスケジュール通りに無事に受審できたのだが、「ルール改訂が絡むので自分たちの努力だけで対処できる問題ではなく、本当に困りました」と小澤 隆史 アセンブリ事業部長は当時を振り返る。
一方、こうしたアクシデントの最中にもA社の来工監査は続いていた。そしてそれが4回目を数えたあたりから、A社の監査員が少しずつ笑顔を見せるようになった。それはアセンブリ事業部の品質マネジメントシステムが、ようやくTS認証レベルに達し始めたことを示す笑顔だった。
そしてキックオフから2年が経とうとする2014年7月、ついにA社の納品先となるエンドユーザー企業の来工監査を受けるに至り、何の問題もなく一度でクリアすることができた。
「この時にはA社の監査員は立ち会いませんでした。そのことに『自分が育てた人材と品質マネジメントシステムを、 どうぞ好きに見てくれ』という彼のプライドと我々に対するお墨付きを感じました」と事務局をつとめた城戸 実 アセンブリ事業部品質保証部担当部長は言う。
この嬉しい結果の背後には、先に他の事業部でTS認証取得を経験した、山本 学 共通技術統括部担当部長の現実的で的確なアドバイスや、2交代制で働く従業員のシフトと業務状況に配慮しながら、約2年にわたる教育計画を立てた大塚智子さんの尽力など、多くの人たちのサポートがあったことも見逃せない。


TSマネジメントシステムを他分野にも流用

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ところでTS認証の取得後、アセンブリ事業部にはどんな変化が起こったのだろう。
「新規のお客様から引き合いが来るようになりました。それはTS認証取得を決めた時の目標の1つであったのでとても嬉しいことです」と羽鳥 行範 アセンブリ事業部設計部担当部長(副監理責任者)は言う。
また既存顧客からも「車載品を対象にTS認証を取得したのですね?!」と再評価を受けるようになったと同時に、TSに基づく共通言語ができたことで商談がスムーズになるというメリットが生まれている。
一方、TS認証取得は社内の活性化にもつながっている。マネジメントシステム全体のさらなる改善を意図していた同事業部にとって、TSの細かく厳しい要求事項は、格好の目覚ましになった。さらにTS内部監査員を各部門から選んで養成したことにより、TS認証レベルを理解する人材の裾野が広がったことや、他分野のマネジメントにもTSの仕組みが流用されるようになったことも大きな効用だった。
特にTSの特徴である「タートル図」は他の業務マネジメントにもよく流用されている。タートル図を使うとあらゆる業務について現状と課題が浮き彫りになり、そこから明快な回答を見出せることが多いからだという。
今後の重要課題はTS認証のスコープ拡大と全社を対象とする認証の統一。ちなみに前者は、取得後に認証対象以外の製品に関する引き合いも増えているという嬉しい現状から生まれたニーズだ。
高いハードルを乗り越えたからこそ組織に根を張ったマネジメントシステムが基盤となって、今後のさらなる挑戦や発展をしっかりと支えていくことが期待される。


- ビューローベリタスのサービス:自動車産業品質マネジメントシステム認証(ISO/TS16949)

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