Business Vision
 

ヤマハ発動機グループの環境グローバル統合

ヤマハ発動機株式会社
人事総務本部 リスク管理部 IMS推進グループ
主査 野上英治様


ヤマハ発動機株式会社

  (静岡県磐田市)


http://global.yamaha-motor.com/jp/



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ビューローベリタス主催
「統一認証セミナー:組織のガバナンス強化に向けて〜コーポレートリスクの視点から見たマネジメント〜」
(2016年3月11日/大阪会場)でのご講演より *写真は2月17日東京会場で撮影


環境グローバル統合の経緯

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ヤマハ発動機グループでは、小型エンジン技術、FRP技術、制御技術を活かし、二輪を中心とするモーターサイクル事業、マリン事業をはじめ16事業を展開しています。
製品が使われるところに製造と販売の拠点を置くことを基本方針としており、よって海外のグループ会社における販売が全社の約90%にのぼり、中でもアセアン、中国、インドなどのアジア地域が43%を占めています。
現在約30カ国に130余りのグループ会社があり、200を超える国と地域に販売網を広げ、従業員は5万3千人(いずれも連結ベース)です。この中で主要な製造拠点である38社を対象としてISO14001認証のグローバル統合を目指しており、現在は33社の統合が完了している状態です。

ISO14001認証への取り組みは、1996年にISO14001が発行された頃に始まります。本社では2000年までに本社(国内)の9事業所を対象に認証登録を目指して、個別に取り組みました。また国内外のグループ会社も同様に個別に認証登録に取り組みました。そして2004年に、本社9事業所で個別に認証登録していたISO14001を一本化して統合認証に切り替えました。
また比較的環境負荷が小さいグループ会社については、2007年にグループの環境マネジメント認定制度を設けて、独自のルールを定め運用を開始しました。
その後、国内外のグループ会社が個別に認証登録していたISO14001認証の統合を図ったのは2012年1月のことです。
その背景には2008年のリーマンショックがありました。この影響で2009年に営業赤字に転落したことを受けて、経営陣より「ビジネスの実効性を高め、業務の効率化を図れ」という全社的な指令が出た結果、各種認証についてもまた、効率化が求められたのです。
そこで2011年に、本社のみで環境と労働安全衛生の統合マネジメントシステムを立ち上げ、翌2012年に国内外のグループ会社の認証をグローバルに統合する活動をスタートしました。こうした統合の取り組みは、現在に至るまで継続しています。




環境グローバル統合の目的

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ISO14001認証のグローバル統合に取り組んだ理由は大きく2つあります。「環境ガバナンスの強化」と「審査コストの低減」です。
「環境ガバナンスの強化」の具体的な目標は、グループの環境マネジメントシステム活動レベルを底上げし、グループが抱えるリスクをきちんと把握し対応することです。これはグローバル企業の責務とはいえ、我々本社事務局の負荷は大きく増えます。これについては後ほど改めてお話しします。
「審査コストの低減」については、ISO14001認証グローバル統合の効果としては、大よそ3割減といったところでしょうか。しかしこれは認証の種類や会社によって異なりますので参考程度に留め置いて下さい。

グローバル統合の手順やポイント

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2012年にISO14001認証のグローバル統合の取り組みを開始し、現在5年目になりますが、準備期間も含めるとすでに約6年が経過しました。この間、次のような取り組みを重ねてきました。


(1) 認証機関の統一(選択)

厳密には認証機関を統一しなくても可能ですが、統一したほうが進めやすくなります。私どもの場合は、世界に広がるグループ会社を一元管理することがミッションでしたので、パートナーとなる認証機関の選択は非常に重要な課題でした。そこで熟慮した末に、世界にブランチをもつグローバルな認証機関であり、準備段階から親身なアテンドをしてくれたビューローベリタスを選択したのです。

世界各国のグループ会社が認証機関統一をすんなり了承してくれたわけではありませんでした。統合にあたってグループ会社にアンケートを取ったところ、認証機関統一について、二つ返事で了承した会社はありませんでした。最も多かった意見は「認証機関を変えることにより、再びシステムを一から構築しなければならない。それは多大な労力を要し、デメリットも多い」というものでした。グループ会社それぞれに懇意な認証機関があり、その審査方針・スタイルにも馴染んでいる。それらを失うと業務にも悪影響が出るという主張でした。現行の認証機関とは長年の付き合いがあり、審査費用が優遇されているという具体的で説得力のある意見もありました。こうした消極派を説得して、統合に前向きに取り組んでもらうようにすることも、本社事務局の大事な役割です。


(2) グループ共通のガイドラインとマニュアルづくり

ただ形のみを一本化しても効果は得られないため、ある程度のルールをつくる必要がありました。そこでグループ毎の手順の最大公約数的な領域、つまりリスク評価、法順守、内部監査、是正処置などについては共通ルールとし、それ以外の領域は各グループ会社の独自ルールに分類しようと考えました。しかし、グローバル統合の拡張と同時に標準化を進める中で、国や会社によって手順や意識に違いがあり、標準化は非常に多くの手間がかかることが徐々に判明しました。現在は、是正処置のグループ水平展開を優先的に取り組んでいますが、他のテーマも早期に進めることが課題となっています。
「共通のガイドラインづくり」は、取り組みの初期ではなく、拡張が落ち着き全体的な状況を見渡せる余裕が出てくる時期から始めても遅くはありません。継続的にシステムを改善することが重要です。


(3) インターフェイスの構築

グローバル統合によって、世界各国のグループ会社に情報やオーダーを発信し、彼らから報告や回答を受信する必要が出てきますので、そのためのインターフェイス(情報システム)の構築が必要でした。そこで弊社では、「G-YECOS(グローバル・ヤマハ・エコロジー・システム)」という情報システムを開発し、各サイトとのコミュニケーションに活用しています。
「G-YECOS」をインターネットまたはイントラネットで呼び出して、活動実績、環境データ、ボランティア活動、不適合の是正などをフォーマットに基づき入力する仕組みです。それらのデータは会社別にファイリングされており、本社だけでなくグループ会社同士でも閲覧できるようになっています。本社ではこうしてグループ各社から「G-YECOS」に上がってきた数字を年次でまとめ、環境委員会に報告します。
本社から発信したいことも「G-YECOS」を通してグループ会社に届けます。
一定規模の企業がグローバル統合をする場合には「G-YECOS」のようなインターフェイスと報告文書のフォーマット化が必要となります。


(4) 統合参加への粘り強い交渉

お国柄やローカル人材の考え方や嗜好、また認証機関変更への不安感などから、統合参加を躊躇するグループ会社も少なからずありました。そのようなグループ会社には統合の目的と効果を繰り返し説明し、お互い納得いくまで交渉します。これも本社事務局の大事な役割です。
現時点で4年かけて33社を統合し、残りは5社になりました。当初は3年程度で統合を完了させる計画でしたが、各社で経営状況や認証のサイクルが異なり、希望通りには進みませんでした。例えばベトナムについては、2016年1月に現地を訪問し、グローバル統合について膝を突き合わせてコミュニケーションした結果、ようやく参加の意を表してくれて8月までに統合する予定となり、統合完了の目途が見えてきました。


グローバル統合のメリット

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統合による最大のメリットは、環境マネジメントシステムにおけるガバナンスの強化を実現できる点です。統合前は、グループ会社の環境データなどは最低限把握していたものの、法をきちんと順守しているのか、内部監査で指摘された不適合の是正やフィードバックが適切になされているのか、といった点は正確な把握が難しく、本社では懸念事項でした。
グローバル統合を通じてグループ会社と様々な情報のやり取りを重ねる内に、それら細部の可視化が進んできました。中には可視化で余計に不安や心配事が増えるようなこともありましたが、やはり各社の様子がきちんと把握できるようになったことは一番のメリットです。
もう1つ重要だと感じたメリットは、ローカルスタッフとの間にイベントの報告や指示などコミュニケーションの機会が増え、彼らの様子や個性が見えてきて、良質な関係が築かれ、一体感が醸成されてきたことです。グループ各社の事務局の大半はローカルスタッフですので、グローバル統合がもたらしたコミュニケーションの向上は、大きなメリットでした。


グローバル統合における課題

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最後に、グローバル統合にまつわる課題や苦労した点を、アドバイスも含めてお話します。

(1) グループ統括機能の維持管理

グローバル統合により確実に「ガバナンスの強化」が図られてきています。しかし、拡張が進み参加社数が増えるにつれて、本社事務局の業務量が飛躍的に増えました。グローバル統合に参加するグループ会社は、2012年統合初期には5社でしたが、2015年末時点では33社に増えました。
つまり33社分のマネジメントレビューの報告を取りまとめてグローバルマネジメントレビューの報告資料を作成し、それを「G-YECOS」にアップロードし発信するという作業を、現状のマンパワーで対応しなければならなくなりました。33社からの報告は同時期に届きますので、それらへの対応は非常に大変です。
また、グループで共通のフォーマットを使っているにも拘らず、届いた報告書やサマリーの英語や内容のレベルについても、国やスタッフによってバラつきがあり、それらをまとめるのも一苦労です。
こうした経験を通じたアドバイスは2つございます。まず、事前に人事部と連携してマンパワーの確保をしておくこと。そして、報告書のフォーマットと報告時に使用する言葉(用語)を統一し、グループ各社にコンセンサスを取っておくことです。


(2) 言語(英語)対応

海外のグループ会社とのやり取りには英語を使いますが、英語のレベルが国やスタッフによってまちまちです。英語教育が行き届いていない国からの報告書(特に是正報告書)は、読解できないことも多いです。この問題を解決する一助として、最低限の文書ルールは必ず作成しておくことをお勧めします。


(3) ローカルスタッフとの関係づくり

ローカルスタッフに対しては、信頼関係の構築と、急な退職に対する注意が必要です。
グローバル統合の各種イベントを実施するには、案内・進捗・報告・フィードバックなどの作業が必要です。その都度ローカルスタッフとやり取りし、否が応でもコミニュケーションする機会が発生します。お互いに慣れない英語でやり取りをしていて齟齬が起こりやすい状況下にいるわけですから、ローカルスタッフとの信頼関係を意識的に築くことは非常に重要です。相互に行き来し、顔を合わせて話をする機会をなるべく設け、相手を知る必要があります。そうすると次第に相手の個性や特徴、置かれた状況が分かってきて、会話も通じるようになり、スムースに事が運ぶようになります。
また中国やアセアン諸国で時々起こることですが、ローカル人材が引き抜きなどによって急に退職してしまうことがあります。以前、ある国で、ISO14001の責任者、事務局長、担当者が一度に退職してしまったことがあり、引き継ぎもままならず非常に困ったことがありました。こうした事態も、信頼関係がしっかりできていれば、回避できる可能性が高まるかもしれません。


(4) 国や地域の特徴を理解する

国によって法令や習慣、環境に対する意識が全く違うことがあります。例えば法令が朝令暮改で変わったり、廃棄物を分別するという習慣が全くなかったり、日本の感覚からかけ離れたような現実が実際にあるのです。これらの違いは統一認証の運営に少なからず影響を与えているように思えます。まずは各国の文化や思考への理解を深めることが大事です。
国や地域によるカレンダーの違いも要注意です。例えばインドやアセアン諸国などは週休2日ではなく日曜日しか休みません。また、長期休暇も考慮しなければなりません。中華圏やアセアンでは2月の旧正月やテト、欧米では長い夏休みやクリスマス休暇があり、報告書の締め切り設定などに影響を及ぼします。全ての国に対応することは難しいため、常に「早目の発信と余裕を持った回収」を心掛けるようにしています。


(5) 法規制などへの適合

グループ会社がそれぞれの国の該当する法令を特定し、遵守評価した結果の報告を受けていますが、その詳細な内容やレベルまでは十分に把握できていません。それを実現するためのシステムづくりが重要な課題の1つと認識しています。


(6) 規格改訂への対応

2015年9月15日の規格改訂を受けて、遅くとも2018年までに対応する必要がありますが、2017年に移行審査の受審を予定しています。規格が改訂されたといっても、当社では経営全体や事業活動の中で既に実行されていることばかりですので、リスクと機会等、一部組織縦割りで実行していた既存の活動を環境グローバル統合にリンク付けするだけで対応できます。
ただし、グローバル統合(統一認証)であるため、グループ全体で一斉に移行する必要があり、そこに少し手間がかかることを予想しています。現在、グループ各社と足並みを揃えるために移行準備を進めています。

以上でヤマハ発動機グループの環境グローバル統合についての発表を終了致します。ご清聴、ありがとうございました。


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