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COP21パリ協定〜2020年以降の気候変動対応に大きな前進


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2012年よりビューローベリタスとパートナーシップを結ぶEnhesa (エンヘサ) 社が執筆する、「海外における法規制」に関する記事を連載しています。
Enhesaは、ベルギーのブリュッセル及びアメリカのワシントンDCに本社を置くグローバルコンサルティング会社であり、企業のEHS (環境、労働安全衛生) 及び製品の遵法を支援しています。
2015年10月には日本法人として日本エンヘサ株式会社を設立、日系企業のお客様に対して、よりきめ細かな支援をお届けする体制を整えました。

フランス・パリで2015年11月30日から12月11日まで開かれた国連気候変動枠組条約第21回締約国会合(COP21)は、現地時間12月12日、京都議定書に代わる国際的な枠組みとして「パリ協定(Paris Agreement)」を採択しました。パリ協定では、地球の気温上昇を、産業革命前と比較し平均2度未満に抑えることを目標としています。さらに、努力目標として、気温上昇を同1.5度未満に抑えることが示されました。目標達成のために、温室効果ガス排出量を可能な限り早期に減少させ、今世紀後半には、森林等による吸収分と相殺して、排出量を実質ゼロにすることも盛り込まれました。

先進国のみが削減義務を負った京都議定書に対し、パリ協定は、歴史的に初めて全ての条約締約国(196カ国)が参加する合意であり、京都議定書が失効する2020年以降の気候変動に対応する国際的な法的枠組みです。2020年までに、途上国からの排出量が地球全体の排出量の3分の2を超えることが予想されるなか、これまでの交渉についてまわった先進国と途上国の対立をひとまず乗り越え、参加国全ての貢献を要求したことは、大きな成果とされています。

今般の合意に向けては2011年から交渉が始まり、2014年にワルシャワで開催されたCOP20において、全ての国が、COP21までに十分先立ち、自らの約束草案(Intended Nationally Determined Contribution: INDC、削減目標案のこと)を提出することが合意されました。INDCには、2020年以降の温室効果ガス排出量削減目標と、目標を達成するための施策などが含まれます。ただし、削減目標はその下限が定められているわけではなく、各国が自ら設定します。COP21の閉幕までに、最大の排出国である中国と米国を含む188カ国・地域がINDCを提出し、世界のエネルギー起源CO2排出量の95.6%がカバーされました。

参加国は、パリ協定の締結までに、INDCを提出しなければなりません。既にINDCを提出した国については、この要求を満たしたものとみなされます。さらに、締約国は5年ごとに進捗を評価し、実行を強化するための新たなINDCを提出しなければなりません。

また、世界全体の実施状況を把握するための新たな仕組み「グローバル・ストックテイク(Global Stocktake)」が導入されます。初回のレビューは2023年、以降は5年ごとにレビューが行われ、その結果は、締約国の行動・支援の更新や強化の際の情報として活用されます。

パリ協定のその他の主要点は次のとおりです:

適応:持続可能な発展の理念を踏まえ、適応能力を拡充し、強靭性を強化し、脆弱性を低減させる世界全体の目標を設定する。この目標の下、各国は、脆弱国への配慮の重要性を認識し、適応計画を立案・実行し、報告書を提出する。
ロス&ダメージ:国土の消失や暮しの崩壊、人命の損失などの気候変動による深刻な悪影響を低減、最小化、対応することの重要性を認識し、ワルシャワ国際メカニズムを通じた取組みが行われる。ただし、責任と保障はパリ協定の枠組みから除外される。

先進国による資金支援:先進国は、既存の義務の継続として、途上国における緩和(削減)と適応を支援するための資金を供出する。COP21では、2020年までに、先進国による資金提供が官民合わせて年間1000億ドルを超えることを目標に設定(ただし、拘束力はない)。加えて、先進国は2年に1回、途上国に提供される公的資金の予想水準を含めた定量的・定性的情報を提出する。途上国の自主的な資金供出も推奨される。

協定には、その他、市場メカニズムの活用や、森林等の吸収源の保全・強化の重要性、イノベーションの重要性なども盛り込まれました。

パリ協定は、ニューヨークの国連本部において、2016年4月22日から2017年4月21日まで、署名のために開放されます。最低でも55カ国が署名し、さらに署名国における推定排出量が地球全体の排出量の55%以上をカバーしてから、30日後に発効します。3月22日には、条約事務局が、協定が発効するまでのプロセスを説明した文書「パリ協定:次のステップ」を公表しました。協定発効までの期間、締約国は、協定の各規定を自主的に適用することが認められています。

パリ協定では、削減目標を各国自ら定めること、違反に対するペナルティがないことなどで、その内容に失望した多くの専門家やNPOがいることも事実です。しかし、そもそも、全ての国の参加を確保するためには、各国が自ら目標を定め、自ずと差異化を実現することが有効であるという考えによって、COP21に向けた交渉が進められてきました。結果、世界的な合意をみたことは、今後の気候変動に対応するための大きな前進と言えるでしょう。さらに、実効性を担保するための目標・実行の定期的な見直しの義務付けや、グローバル・ストックテイクといった、新たな仕組みを導入したことも成果であったと考えます。一方で、これまでにINDCを提出している国の排出削減量を合計しても、2025年・2030年の排出量は、気温上昇2度未満の目標を達成しないと推計されています。2030年以降の一層の削減努力により、2度未満の目標を達成する可能性は残っていますが、その場合、必要な施策をとるために相当多額のコストがかかることが推定されています。今後のCOPの中で、いかに締約国に目標を達成させ、コスト効率の高い仕組みを官民ともに見出していくか、また現実問題として、いかに気候変動に適応していくかが、課題となりそうです。

企業にとっては、自らが操業するほぼ全ての国において、温室効果ガスを削減するための具体的な政策や法令が今後採択されることが予想され、グローバルレベルでの取り組みが必須となるでしょう。同時に、おそらく今後も進む気候変動に対応し、適応していくことも必要になります。企業の包括的なリスク管理のひとつとして、洪水、高潮、台風などの自然災害、渇水、エネルギー不足、コモディティのコスト上昇など、サプライチェーン全体における気候変動リスクを事業計画の中で考慮し、予防的に対応することの重要さが増すでしょう。同時に、新しいテクノロジーのビジネスチャンスを自らのものにするための長期的・戦略的な視点が求められます。各国のINDCは、それぞれの直面する気候変動リスク、各国政府が掲げる排出量削減目標と意図する施策について、多くの示唆を提供しています。
提出された各国のINDCは、国連気候変動枠組条約のウェブサイトから参照できます:
http://www4.unfccc.int/submissions/INDC/Submission%20Pages/Submissions.aspx

Enhesaでは、月次法改正動向モニタリングレポートの中で、INDCを含む各国の気候変動政策を読み解き、ビジネスインパクトを含めた報告書にまとめ、会員企業に配布しています。ご関心がある方は、下記連絡先までご連絡下さい。


著者:宮田祐子(Enhesa シニアプロジェクトマネジャー兼シニアコンサルタント)
※本稿の著作権は著者個人に帰属します


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Enhesaは、ベルギーのブリュッセル及びアメリカのワシントンDCに本社を置くグローバルコンサルティング会社であり、企業のEHS (環境・労働安全衛生)法令遵守を支援しています。2015年10月には東京八重洲に日本法人を開設し、日系企業のお客様に応対しております。ビューローベリタスジャパン株式会社との緊密な連携により、EHS法規制動向のモニタリング、遵法監査ツールの提供、遵法監査代行、製品規制調査等、日本企業の国内及びグローバル市場における事業展開・事業運営、輸出に関する法令遵守を支援しています。


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