衛生管理徹底のためにISO22000からFSSC22000へ
厳格化する茶葉の品質への要望にも応える

株式会社福寿園
(京都府木津川市)

http://www.fukujuen.com/


PDF版はこちら


FSSC22000認証取得の3つの理由
宇治茶の集散地、京都山城に本社を置く福寿園は、寛政2年(1790年)創業、225年の歴史を持つ老舗の茶商。2004年に、サントリーとコラボレーションして「伊右衛門」ブランドの商品を発表し、大ヒットさせたことでも知られる。

その福寿園が、2つの工場で、ISO22000と食品安全のための前提条件プログラムISO/TS22002-1を組み合わせたFSSC22000規格の認証を取得したのは、今年(2015年)4月のことだ。

121にわたる全サイトでISO9001認証を取得したうえに、すでにISO22000認証も取得していた同社が、なぜあえてFSSC22000認証の取得に踏み切ったのか。その大きな理由は3つある。

第1の理由は衛生管理の徹底のため。

ISO22000に比べて、FSSC22000のほうが衛生管理に関する要求事項がより明確だ。異物混入の防止をはじめとする衛生管理品質の向上のためには、より具体的で明確な基準があるほうが、従業員にとっては「するべきこと」や「努力目標」がはっきりするし、そのための体制やルールも構築しやすい。ひいては厳密な基準での品質管理に馴染んだ人材を育てることが、会社の将来を明るくすると考えた。

第2の理由は、取引先が次々とISO22000からFSSC22000へシフトをしていたことにある。取引先の認証の状況を調べてそのことに気付いた業務本部ISO管理責任者の室木広光氏は、「これは当社も早くシフトしないと、早晩、食品メーカーとしてやっていけなくなるのではないか」という危機感を抱いたという。

その反面、取引先から「FSSC22000を取得してほしい」というリクエストはなかったそうだ。「だからこそ言われていない今のうちに取得しておくことが誠実な企業姿勢だ」という判断もあったと室木氏は言う。

そして第3の理由は、茶葉に対する世間の見方が、昨今、厳しくなっていることにあった。

以前、茶葉は「農産物」にカテゴリー分けされており、その時代には茶葉の中に多少のゴミや異物が混じりこんでいてもそう問題にはならなかった。スーパーで買ったほうれん草の根に砂が入りこんでいても問題視する消費者がいないことと同じだ。

しかし近年、茶葉は「食品」とみなされるようになった。食品である限りは異物混入やちょっとした瑕疵も許されない。そこで従業員1人1人に「品質管理」の意識を高め、事故を防ぐ心掛けをしてもらう必要性が、がぜん大きくなったのである。包装ラインにパート従業員が多いことも、その必要性に拍車をかけた。

こうした3つの大きな理由に背中を押されて、同社は2013年にFSSC22000の認証取得を決断した。そして1年をかけて認証取得に至ったのである。

実はFSSC22000認証の取得を迷った時期もあったという。その理由は、FSSC22000認証を取得しようとしていた2サイトの工場について、建物や施設や設備といったハードを大きく改善しないと認証が取得できないのではないかという懸念があったからだ。しかしそれについては、現状のままで認証取得できるという判断が下された。そしてそれをはずみに同社のFSSC22000認証取得は一気に前進しはじめたのだった。

FSSC22000導入が生んだ社内外の効果
FSSC22000認証を取得後、従業員には少しずつ変化の兆しが見えている。たとえば、異物混入のモニタリングは外部委託しているが、それを社内でもチェックするようになった。そして指摘があれば2〜3日以内に改善できるようになった。また実際に異物混入のクレーム数も減少している。

トレーサビリティーも行き届くようになり、もし異物混入などの事故が起こった場合も、回収すべき出荷商品が特定できる体制が整った。

またFSSC22000認証の取得を機に、社員全員を内部監査員にすることを構想中だという。そのことで認証取得の意味や意義をきちんと理解したうえで運用に取り組む人材を質量ともに増やそうという考えだ。

一方で、外に向けて大々的にFSSC22000認証を取得したというアナウンスをしていない。これは食品企業として「認証取得は当然の責務である」という思いがあるためだ。

しかしそうした密やかな同社の認証取得にも注目する企業はしっかりあり、このたび同社はネスレ社からのオファーを受けて、コーヒーマシン「バリスタ」に続いて新たに開発・発売されたティー専用マシン「スペシャルT.」にセットする日本茶ティーカプセルの茶葉供給を担当することとなった。数多くある茶商の中から同社が選ばれた理由は明らかにはなっていないが、FSSC22000認証を取得したことでさらに信頼度が高まった可能性はある。

もう1つの品質マネジメントシステム
最後に、生産本部長の中村弘治氏による興味深い話を紹介しよう。

同氏によると3つの「大切」があるという。それは「お客さま」「品質」そして「従業員」だ。

この「従業員を大切にする」という一見情に根差したように見える方針が、実はFSSC22000と並んで同社の品質管理に貢献しているという話だ。

食品事故には大きく分けて2種類の起因がある。「内部起因」と「外部起因」だ。「外部起因の事故」とは外からの侵入や攻撃が原因となって起こる事故で、防止方法はマネジメントシステムなどを活用してフードディフェンスを強化することである。

一方の「内部起因の事故」には「過失(ミスや見逃し)によるもの」と「故意によるもの」の2種類がある。前者はISO9000、ISO22000、FSSC22000規格に準じたシステム運用などが防止策となるが、後者つまり「従業員の故意によるもの」はそれでは防げない。言い換えると、最もやっかいで怖いのは、システムでは防げない「従業員の故意によって引き起こされる事故」だと言えるだろう。

「これを防ぐ方法はただ1つ、会社が従業員を大切にし、そのことを従業員が感じられるだけのコミュニケーションが会社と従業員の間に取られていることだ」と中村氏は言う。つまり会社と従業員がしっかりと「情を交わしていること」が、会社への不満を減らし、従業員の悪質な行為を防ぎ、内部起因による食品事故をなくすというわけだ。

この「従業員を大切にする」方針の強化のために、「家を出てから帰宅するまでの従業員の安全を守る」ことを目指して、2017年を目途に労働安全衛生マネジメントシステムの導入を考えているという。

一方でFSSC22000認証の取得と運用。そしてもう一方では「従業員を大切にする」という方針の遵守と強化。2つの異種な舵を同時に操舵しながら企業品質を保ち、安全に航行させる。この経営技術こそ、江戸時代から今に続く同社の真骨頂なのかもしれない。

(2015年11月2日取材)

ビューローベリタスのサービス:食品安全システム認証(FSSC22000)

 

www.bureauveritas.jp

© Bureau Veritas Japan