平成27年6月施行 改正建築基準法
既存不適格建築物への遡及範囲(構造)は変わったのか?


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1.平成17年に緩和規定スタート

既存不適格建築物への遡及緩和については、平成17年6月1日の改正により法第86条の7に法第20条が追加されたことで始まりました。それ以前は、既存建築物に増築を行う場合は面積やエキスパンションジョイントの有無に関わらず、建築物全体に構造耐力規定を遡及適用していましたが、一定規模以下の増築等を行う場合は構造耐力規定の遡及適用をしないことに変わりました。この「一定規模以下」が、既存部分の延べ面積の1/2以下及び1/20以下かつ50u以下の規模制限の始まりです。ただし、これ以前でもエキスパンションジョイントにより構造上分離して増築する場合は、遡及適用されていない実態もあったため、必ずしも規制の緩和となっていませんでした。また、1/2以下の増築の場合は「耐震促進法」に適合した建築物であることが条件であったため、エキスパンションジョイントにより構造上分離して増築を行う場合に既存部の耐震診断が必要でした。

2.平成21年に新耐震基準導入

平成21年9月1日の国住指第2072号「建築物の耐震診断及び耐震改修の実施について技術上の指針となるべき事項に係る認定について(技術的助言)」により、耐震診断の方法に「既存部分が昭和56年6月1日における建築基準法に適合しているもの」が追加されました。これは、平成24年9月27日に「昭和56年6月1日以降における」と見直され、新耐震基準や限界耐力計算等の昭和56年以降に導入された耐震関係規定に適合していれば、既存部の耐震診断を改めて行う必要がないという規定に変わりました。


3.平成24年に緩和の規模制限廃止

そして、平成24年9月20日の法改正により既存部分の延べ面積の1/2を超える増築にも緩和規定が設けられました。このときの1/2超と1/2以下の違いは、1/2超には令第82条の4(屋根ふき材等の構造計算)及び令第82条第四号(使用上の支障が起こらないことの確認)の適用があることと、1/2以下には法第20条第1項第四号の木造建築物の緩和(令第42条、第43条、第46条のみ適合を確認)があることでした。


4.平成27年改正による規模による緩和の違い

それでは、今年の法改正でどのように変わったのか見てみましょう。法第86条の7及び令第137条の2に実質的な変更はなく、増改築部分の面積による取り扱いも変わっていません。ここで、令第137条の2各号を簡単に説明すると、令第137条の2第三号(基準時の面積の1/20以下かつ50u以下)では、増改築部分が小規模なため、既存部分の構造耐力上の危険性が増大しないことを確認すれば、構造耐力関係での既存部分への遡及はありません。令第137条の2第一号(面積制限なし)と第二号(基準時の面積の1/2以下)では、平成17年国交省告示第566号が改正されたことにより、結局、
令第137条の2第二号に法第20条第1項第四号の木造建築物の緩和規定がある以外の違いはなくなりました。

5.平成27年改正で構造判定導入

今回の法改正での増改築に関する変更点の特徴としては、構造計算適合性判定の対象の見直しと申請図書及び書類の合理化になります。構造計算適合性判定に係る手続きの見直しがなされ、特定増改築構造計算基準によって増改築部分の安全性を確かめる場合には、構造計算適合性判定を行うことが義務付けられました(法第6条の3第1項)。特定増改築構造計算基準とは、新築時の特定構造計算基準に相当する基準とされ、いわゆるルート3、ルート2及び大臣認定プログラムによる構造計算のことです。ただし、ルート2で構造計算を行った場合で、ルート2審査を行っている建築主事等が審査する場合は構造計算適合性判定が不要となります。


6.既存適格の場合は計算書省略

改築を行う建築物に係る申請図書及び書類の合理化としては、増改部分と既存部分とがエキスパンションジョイント等により構造上分離されており、かつ既存部分の計画が、現行の構造計算基準に適合することが明らかな場合は、構造計算基準に適合する部分の計画に係る構造計算書等の提出が不要となったことが挙げられます(規則第1条の3第10項)。

以上より、エキスパンションジョイントによる増築の例を規模によって簡単にまとめると、下表のようになり法20条1項四号建築物を除いて違いはないことがわかります。

◆1/2を超えるエキスパンションジョイント増築 1/2以下のエキスパンションジョイント増築
 

緩和は既存部分に対する一部の仕様規定と、耐震性の確認方法。
ただし、
増築部分が四号なら計算不要。

 

緩和は既存部分に対する一部の仕様規定と、耐震性の確認方法で1/2超のケースと同じ。ただし、増築部分は四号でも計算必要だが、木造であれば緩和あり。

緩和規定詳細

一体増改築の場合の構造計算内容

面積制限なし

増改築部  既存部

建築物全体が令第3章第8節に適合すること。

法第20条第一項第四号の木造建築物についての緩和なし。

延べ面積の二分の一以下

増改築部  既存部

 

 

 

 

 

 

建築物全体が法第20条第一項第二号イ後段又は第三号イ後段に規定する構造計算すること。

法第20条第一項第四号の木造建築物については地震に対して建築物全体が令第42条、令第43条並びに令第46条第一項から第三項まで及び第四項(表三に係る部分を除く)の規定に適合。地震時を除き令第46条第四項(表二に係る部分を除く)に適合。

法第20条第一項第四号に掲げる建築物に限り令第3章第1節から第7節の2まで(令第36条及び第38条第2項から第4項までを除く)の規定に適合し、かつ、その基礎の補強について国土交通大臣が定める基準に適合。

 
エキスパンションジョイント(EXP.J)による分離増改築の場合の構造計算内容

面積制限なし

増改築部  既存部

 

 

増改築部分が令第3章に適合。
既存部分は法第20条第一項第二号イ後段に規定する構造計算、第三号イ後段に規定する構造計算又は耐震診断基準に適合。
法第20条第一項第四号の木造建築物についての緩和なし。

延べ面積の二分の一以下

増改築部  既存部

 

 

 

 

 

 

増改築部分が令第3章(第8節を除く)に適合し、地震に対して法第20条第一項第二号イ後段又は第三号イ後段に規定する構造計算。地震時を除き令第82条第一号から第三号まで(地震時に係る部分を除く)に定める構造計算。
既存部分は地震に対して法第20条第一項第二号イ後段に規定する構造計算、第三号イ後段に規定する構造計算又は耐震診断基準に適合。地震時を除き令第82条第一号から第三号まで(地震時に係る部分を除く)に定める構造計算。
法第20条第一項第四号の木造建築物については地震に対して建築物全体が令第42条、令第43条並びに令第46条第一項から第三項まで及び第四項(表三に係る部分を除く)の規定に適合。地震時を除き令第46条第四項(表二に係る部分を除く)に適合。


建築認証事業本部 森口英樹

 

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