「集中と選択」に成功した大手酵素メーカーが、
特化分野でのさらなる成長を目指して
FSSC22000認証を取得

天野エンザイム株式会社
(愛知県名古屋市)

http://www.amano-enzyme.co.jp


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かつては、医療用、一般用医薬品メーカーだった天野エンザイム株式会社(以下、天野エンザイム)。2000年に酵素の製造に特化することを決定し、社名を天野製薬から天野エンザイムに変更した。
その結果、現在、酵素事業分野では世界で上位を占め、日本では、国内販売されている胃腸薬の9割以上のシェアを誇る同社は、「集中と選択」を成功させた理想的なケースといえるだろう。
そんな同社が、国際食品安全イニシアチブ(GFSI : Global Food Safety Initiative)が承認する食品安全システム規格FSSC22000の認証を取得したのは、2014年12月のことだ。キックオフからわずか半年での認証取得、しかも滋賀事業所、養老事業所、名古屋事業所の3事業所(いずれも工場)で同時取得という、注目される認証取得だった。

海外取引の拡大と、取引先による監査の軽減を目指す
まず同社がFSSC22000認証の取得に取り組んだ経緯から紹介しよう。
同社で製造する酵素の種類は、医薬品用途と食品用途の2つに大別される。
このうち医薬品用酵素製造のシステムについては、ISO9001をベースに医薬品GMPにて運用している。
一方、従来、ISO9001、食添GMP、HACCP(自己認証)の3本柱の認証を取得していた食品用酵素製造のシステムについては、今回FSSC22000認証を取得したことで、ISO9001とHACCPをFSSC22000に組み入れて運用することとし、食添GMPとの2規格で認証を取得する形となった。
FSSC22000認証を取得することになった直接的な原因は、有力な取引先(顧客)数社からのFSSC22000認証に関するリクエストであった。リクエストしてきた顧客は全て海外企業で、いずれも既に同認証を取得していた。
現在同社では、輸出割合が年々増えてきており、今後も海外取引を拡大する意向をもっている。そうした状況の中、有力な海外顧客から相次いで同様のリクエストを受けたことは、今後FSSC2200認証取得が海外取引の拡大のための重要なファクターになることをうかがわせた。
さらにもうひとつ、別の動機もあった。FSSC22000認証を取得することで、取引先による監査が減ることが推測されたからだ。近年、取引先による監査が急増していた。この増加は、食の安全に対する信頼が揺らぐ大きな事件が立て続けに起こっていることに起因していると思われるが、それらに対応するには大きなエネルギーと時間がかかり、負担が増していた。
そこで経営トップと品質保証部は、「年末までに取得してほしい」というとある顧客からのリクエストもあり、わずか半年での取得を決断した。その背景には、より厳しい医薬品GMP認証を取得しているという自負や、ISO9001認証も取得していたという自信もあった。

取得済みの顧客に教えを乞う
ところが、実際にFSSC22000認証の取得に取り組んでみると、多岐にわたり細かい要求事項があるなど予想外にハードルが高く、「最初は、規格の要求事項が何を求めているのか理解することが難しく、混乱状態になりました」と芝川宏品質保証部長は苦笑する。
この混乱を解決するために品質保証部が選んだのが、「顧客企業の監査員に教えてもらう」という方法だった。すでにFSSC22000認証を取得している顧客企業から監査員が監査に訪れたときに、分からないことについて教えを乞うという方法だ。顧客を活用するなど一見大胆と思われる方法だが、実はこれが最もスピーディーに、実践的かつ的確な答えを得られる方法だと品質保証部は考えたのだ。その予想は的中し、顧客企業の監査員たちは、同社が投げかける様々な質問に、快く的確なアドバイスを提供してくれた。そしてそれが取得への大きな駆動力となった。
また、医薬品用酵素を製造している名古屋工場と養老工場においては、医薬品GMPとFSSC22000の要求事項の間で起きる綱引き状態という新たな課題が発生した。
その課題とは、「FSSC22000の視点に立つとこれで充分だが、医薬品GMPの観点では不充分、もしくはその逆」という要求事項があった場合、コストを抑えながら、最善の落としどころをいかに見い出すか、ということである。
これについては、品質保証部がリーダーシップを発揮して、「どの程度まで取り組むか」という目安を設定することで決着させることにした。
こうした課題をひとつひとつ解決しながら、取得への取り組みは確実に前進していったが、その前進には、3事業所それぞれに置かれた食品安全チームのメンバーが取得に前向きで協力的だったことが大きく貢献している。
3工場の食品安全チームメンバーと品質保証部は、月に一度名古屋事業所で開かれる生産報告会を利用して、品質保証に関する意見を交換したり、取得に向けた会議を開いたりして、モチベーションと知識を高め合うようにした。さらに、「他の工場には負けられない」という工場間の意識も作用して、「わずか数カ月の間に、現場のレベルが予想を超えてどんどん上がっていきました。最終的にはそれが半年間という短い期間での取得を達成した最大の要因だと思います」と小川知成理事/品質保証本部長は言う。

国際基準を再認識
ところでFSSC22000認証の取得を通して、同社が再認識したことがあるという。それは「フードディフェンス」に対する認識の甘さだった。
「日本の企業にありがちだと思いますが、これまでは性善説に基づいたフードディフェンス対策しか取ってきませんでしたので、FSSC22000の要求事項を通して自分達の取り組みがいかにレベルの低いものだったかを痛感し、改めて国際基準に関する認識を深めました。それと同時に、何社もの顧客企業が我々にFSSC22000認証の取得をリクエストした理由が理解できました」と小川本部長は言う。
ちなみにフードディフェンスのギャップ分析の結果、同社では次のような改善を行った。
@外部タンク、貯水槽への施錠
A洗剤、薬剤などのリスト化と管理
Bプラスチック、ガラス製物品の管理
C裏口への施錠と使用の禁止

内部監査員のレベルアップに注力
FSSC22000認証取得後、同社が最も強化しようとしているのは、内部監査員の充実とレベルアップだ。
従来、品質保証部が内部監査を実施していたが、今後は、3工場に合計16名の内部監査員を配置し、自らが所属する工場以外の工場の監査を相互に実施するシステムを目指している。
こうすることで「現場が現場を監査する」という体制が実現し、監査員のレベルが上がることも期待される。
「FSSC22000は厳しい規格なので、このような手法を通じて緊張感を高く保たないと維持が難しいと思います」と、芝川部長はこの監査システムを採用した理由を語る。
加えて、内部監査員を指名制や役職制ではなく立候補制に切り替え、品質保証や国際規格について勉強したいという向学心と熱意のある若い従業員を監査員に任命して教育を施すという方法を取り、内部監査の品質を向上させようとしている。
さらに次の段階としては、中国工場の認証をISO22000からFSSC22000に切り替えること、3工場のシステムのスリム化(FSSC22000関連文書の統合)、フードディフェンスへのさらなる高次化などを目標に掲げている。

最後に、FSSC22000認証取得に対するアドバイスを聞いてみた。
@なるべく短期間、できれば1年以内に取得するほうが、現場のモチベーションがあがり達成感もある。
Aコンサルタントなどに頼り過ぎず、自分達たちで考えるようにする。そのほうが取得後の運用がしやすい。また自ら構築したシステムは改善もしやすいというメリットもある。
B工場や設備が古いメーカーはいきなりFSSC22000認証の取得を目指すと、要求事項を満たすためのハードの修理や改善のためのコストが大きくなるので、まずISO22000を取得してから段階的にFSSC22000認証の取得を目指す方が、結果的に近道になると思われる。

かつては「先輩」企業に教えを乞うて取得を達成した同社だが、今では、ビューローベリタスの主催セミナーなどでの講演を快く引き受け、今後FSSC22000認証の取得を目指すいわば「後輩」の企業に、実践的で分かりやすい説明やアドバイスを提供する頼もしい存在へと進化を遂げている。

(2015年6月19日取材)

天野エンザイム株式会社:品質保証体制

ビューローベリタスのサービス:食品安全システム認証(FSSC22000)


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