ISO9001規格改訂〜DIS9001「リーダーシップ」
(日本適合性認定協会(JAB)主催「第3回 JAB マネジメントシステム シンポジウム」より)


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2015年3月19日に公益財団法人日本適合性認定協会(JAB)が主催する「第3回 JAB マネジメントシステム シンポジウム」が開催されました。本稿ではシンポジウムで触れられた今年の秋に発行予定のISO9001:2015に関して、国際規格原案であるDIS9001:2014をベースに詳しくお伝えします。
お断り:記事執筆時点(2015年5月)での情報に基づく記事であり、今後の規格改訂の内容によっては解釈等変更される可能性があります。

前回の記事では、今年秋に発行が見込まれる予定のISO9001:2015に関して、国際規格原案であるDIS9001:2014の中でも附属書SL特有の要求事項である「課題(箇条4.1)と要求事項(箇条4.2)〜リスク及び機会(箇条6.1)」を取り上げました。

今回は、DIS9001の箇条5「リーダーシップ」に関して解説します。DIS9001の箇条5は、5.1「リーダーシップ及びコミットメント」、5.2「品質方針」、5.3「組織の役割、責任及び権限」の3つの細分箇条から構成されています。

箇条5における要求事項の主語は、全て「トップマネジメント」です。トップマネジメントとは、日本語でいうと「経営層」に当たります。用語の定義では「最高位で組織を指揮し、管理する個人又は人々の集まり」と定められています。ここでの「組織」は、マネジメントシステムの適用範囲の活動を運営する「組織」です。したがって、会社組織の場合、必ずしも「社長」を指す訳ではなく、また、1人に限定される訳でもありません。「工場長」、「取締役会」、「執行役員会」などがトップマネジメントになっても構いません。

DIS9001:2014の箇条5.1

 

5.1 リーダーシップ及びコミットメント

トップマネジメントは、以下に示す事項によって、品質マネジメントシステムに関するリーダーシップ及びコミットメントを実証しなければならない。

a)

品質マネジメントシステムの有効性(effectiveness)に説明責任(taking accountability)を負う

b)

 

品質マネジメントシステムに関する品質方針及び品質目標を確立し、それらが組織の戦略的な方向性及び組織の状況と両立することを確実(ensure)にする

c)

品質方針が組織内に伝達され、理解され、適用されていることを確実(ensure)にする

d)

組織の事業プロセスへの品質マネジメントシステム要求事項の統合を確実(ensure)にする

e)

プロセスアプローチに対する認識を高める

f)

品質マネジメントシステムに必要な資源が利用可能であることを確実(ensure)にする

g)

有効な品質マネジメント及び品質マネジメントシステム要求事項への適合の重要性を伝達する

h)

品質マネジメントシステムがその意図した成果を達成することを確実(ensure)にする

i)

品質マネジメントシステムの有効性に寄与するよう人々を積極的に参加させ、指揮し、支援する

j)

改善を促進する

k)

 

その他の関連する管理層がその責任の領域においてリーダーシップを実証(demonstrate)するよう、管理層の役割を支援する


箇条5.1の「リーダーシップ及びコミットメント」では、トップマネジメントが、品質マネジメントシステムの構築、実施、有効性の継続的改善に対する果たすべき責務を規定しています。そして、製品・サービスの要求事項を満足するための、品質マネジメントシステムの構築、実施及び有効性の継続的改善に対する経営層のコミットメントを実証(demonstrate)するための手段が要求事項として列挙されています。
DIS9001の箇条5.1では、a)からk)までの11の要求事項あります。附属書SLの箇条5.1の要求事項は8項目なので、a)、c)、e)の3項目は、DIS9001で追加されたものです。11項目の中で、動詞が確実にする(ensure)の項目は、責任を移譲することができます。但し、実施されたことを確かにすることの説明責任はトップマネジメントにあります。

a) 品質マネジメントシステムの有効性(effectiveness)に説明責任(taking accountability)を負う
「有効性(effectiveness)」の定義は、「計画した活動を実行し、計画した結果を達成した程度(附属書SL 共通定義3.06)」となっています。ここでの「計画」は、箇条6「計画」で策定した計画を指し、その計画に沿った活動の結果、関連する部門と階層の目的がどの程度達成されたか、その成果の目的に対する程度が「有効性」となります。品質マネジメントシステムの有効性に関する最終責任はトップマネジメントにあり、説明責任はトップマネジメントから移譲できません。

b) 品質マネジメントシステムに関する品質方針及び品質目標を確立し、それらが組織の戦略的な方向性及び組織の状況と両立することを確実(ensure)にする
組織の戦略的な方向性と矛盾しない品質方針及び品質目標が確立されていることを確実(ensure)にすることを求めています。品質方針、品質目標が設定される仕組みの確立がポイントになります。動詞が確実にする(ensure)なので、責任をトップマネジメントから移譲することができます。

c) 品質方針が組織内に伝達され、理解され、適用されていることを確実(ensure)にする
法令、規制要求事項や顧客要求事項を満たすことの重要性が周知されていることがポイントになります。動詞が確実にする(ensure)なので、業務の完了はトップマネジメント以外に託すことができます。

d) 組織の事業プロセスへの品質マネジメントシステム要求事項の統合を確実(ensure)にする
DIS9001のベースとなる附属書SLのコンセプトである「マネジメントシステムと事業プロセスの一体化」を具体的な要求事項として求めています。事業プロセスの中で、品質マネジメントシステムを矛盾なく運用できるようにすることがポイントになります。動詞が確実にする(ensure)なので、業務の遂行をトップマネジメント以外に託すことができます。

e) プロセスアプローチに対する認識を高める
DIS9001特有の要求事項で、附属書SLやDIS14001の箇条5.1にはありません。「プロセス」の定義は、「インプットをアウトプットに変換する、相互に関連する又は相互に作用する一連の活動」と附属書SLの共通定義(3.12)に定められています。また、「プロセスアプローチ」に関しては、DIS9001の附属書Bの品質マネジメントシステムの7原則の一つとして、「活動が、首尾一貫したシステムとして機能する相互に関連するプロセスとして理解され、管理されたときに、一貫性があり予測可能な結果が、より効果的で効率的に達成される」とあり、取組む理由としては「品質マネジメントシステムは、相互に関連するプロセスによって構成されている。全てのプロセス、資源、管理及び相互作用を含め、このシステムによってどのように結果が生み出されるかを理解することによって、組織はそのパフォーマンスを最適化することができる」と説明しています。この要求事項は、トップマネジメント自身が実施する必要があります。

f) 品質マネジメントシステムに必要な資源が利用可能であることを確実(ensure)にする
品質マネジメントシステムで必要な資源を関連各部門で活用することができるようにすることが求められています。ここでいう「資源」は組織の事業によって異なりますが、要員、インフラ、材料、エネルギー、知識、財務などが考えられます。多くの場合、資源の必要性は、トップマネジメントでなく、それぞれの実施部門で決定されます。この要求事項は、動詞が確実にする(ensure)なので、権限移譲する管理者を選んで権限移譲することができます。

g) 有効な品質マネジメント及び品質マネジメントシステム要求事項への適合の重要性を伝達する
トップマネジメントが先頭に立って、有効な品質マネジメント及び品質マネジメントシステム要求事項への適合が重要であることを組織内に伝達することを求めています。

h) 品質マネジメントシステムがその意図した成果を達成することを確実(ensure)にする
「意図した成果」については、前回でも触れましたが、マネジメントシステムの目的のことです。品質マネジメントシステムの場合は、箇条1「適用範囲」に定められた「顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項を満たした製品又はサービスを一貫して提供する能力をもつことを実証する、及び、品質マネジメントシステムの継続的改善のプロセスを含むシステムの効果的な適用、並びに顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項への適合の保証を通して、顧客満足の向上を目指す」が意図した成果です。動詞が確実にする(ensure)なので、業務の遂行をトップマネジメント以外に託すことができます。

i) 品質マネジメントシステムの有効性に寄与するよう人々を積極的に参加させ、指揮し、支援する
具体的には、品質方針などで、直接、間接的に指示を与え、マネジメントレビューなどを通して、組織の活動を支援し、監督を行うことなどが考えられます。この要求事項は、トップマネジメント自身が実施する必要があります。

j) 改善を促進する
トップマネジメントが、組織が継続的改善に積極的に取組むように、品質方針などで継続的改善の基本的仕組を支持し、システムの改善につながるように行動することなどが求められています。

k) その他の関連する管理層がその責任の領域においてリーダーシップを実証(demonstrate)するよう、管理層の役割を支援する
関連する各マネージャーが、リーダーシップを実証するための支援をすることを求めています。この要求事項は、トップマネジメント自身が実施する必要があります。

DIS9001:2014の箇条5.2

 

5.2 品質方針

トップマネジメントは、次の事項を満たす品質方針を確立し、レビューし、維持しなければならない

a)

組織の目的及び状況に対して適切である

b)

品質目標の設定及びレビューのための枠組みを示す

c)

適用される要求事項を満たすことへのコミットメントを含む

d)

QMSの継続的改善へのコミットメントを含む

品質方針は、次に示す事項を満たさなければならない

a)

文書化した情報として利用可能である

b)

組織内に伝達し、理解され、適用される

c)

必要に応じて、関連する利害関係者が入手可能である

 

箇条5.2の「品質方針」は、附属書SLのテキストをベースにしていますが、基本的にISO9001:2008の箇条5.3「品質方針」と同じ内容です。品質方針のレビュー及び維持は、トップマネジメントの責任となります。品質方針は、「文書化した情報」にする必要があり、必要に応じて、関連する利害関係者が入手可能であることが求められています。ホームページなどに掲載されている場合は、「入手可能」であるといえます。

DIS9001:2014の箇条5.3

 

5.3 組織の役割、責任及び権限

トップマネジメントは、関連する役割に対して、責任及び権限を割り当て、組織内に伝達し、それが理解されることを確実にする

a)

品質マネジメントシステムが、この規格の要求事項に適合することを確実にする

b)

プロセスが、意図したアウトプットをもたらすことを確実にする

c)

 

品質マネジメントシステムのパフォーマンス、改善の機会、及び変更又は革新の必要性を報告する。特にトップマネジメントに報告する

d)

組織全体にわたって、顧客重視を促進することを確実にする

e)

 

品質マネジメントシステムの変更を計画し、実施する場合には,品質マネジメントシステムを“完全に整っている状態(integrity)”に維持することを確実にする

 

箇条5.3の「組織の役割、責任及び権限」は、ISO9001:2008の箇条5.5「責任、権限及びコミュニケーション」に相当します。ISO9001:2008では、組織の管理層の中から管理責任者を任命することが要求されていましたが、DIS9001では「管理責任者の任命」の要求はありません。附属書SLに「管理責任者」という用語がないので、DIS9001やDIS14001では「管理責任者」が消えました。但し、c)の「品質マネジメントシステムのパフォーマンス、改善の機会、及び変更又は革新の必要性を報告する。特にトップマネジメントに報告する」はISO9001:2008の管理責任者の役割に相当します。もちろん、「管理責任者」という名称を組織が使用することを禁じる意図はないので、従来通り「管理責任者」という役割を定めても問題ありません。

基本的には、DIS9001の箇条5「リーダーシップ」は、ISO9001:2008の箇条5「経営者の責任」に相当しますが、事業プロセスと品質マネジメントシステムの一体化を強調しています。ISO9001:2008の複数のトップマネジメントに関する要求事項を、箇条5.1の「リーダーシップ及びコミットメント」にリーダーシップに付随する活動として再配置しているのが特徴です。

 

システム認証事業本部 小西直人


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