ISO9001 全社統一認証推進
セイコーインスツル株式会社
技術管理センター 品質保証部
石田 隆康 様


セイコーインスツル株式会社(千葉県千葉市)
http://www.sii.co.jp/jp/

ビューローベリタス主催セミナー
「統一認証のあり方とポイント〜ガバナンスの強化とコスト最適化の両立〜」
(2015年2月3日/東京・千代田区)でのご講演より


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■ 認証統一化の狙い


セイコーインスツル株式会社は、セイコーホールディングス株式会社を中心にしたグループ会社10社の中の1社で、時計のムーブメント、精密部品や工作機械、計測・分析機器、プリンターの製造販売等を中心に6分野でビジネスを展開しています。
2011年12月よりISO9001認証の統一をスタートさせ、2012年8月までに合計19部門のISO9001認証統一を終了させました。その後、3部門が遅れて参加し、2013年には22部門の認証が統一されました。
認証統一推進の理由は大きく4つあります。
@品質活動の標準化、レベルの統一化
A相互内部監査等による活性化、内部監査員の全社レベルアップ
B審査工数の削減による内外審査対応コストの削減
C審査のための準備等の業務軽減
の4つです。これらの課題の解決を目指して、認証統一化(以下、統一化)に取り組みました。


■ 統一化の経緯〜ダイジェスト


まず2011年12月に、本社部門(品質保証部門、購買部門)の認証を取得して統一を推進していこうと決めました。その時に、認証取得歴15年の実績を持つA事業部の特別移行審査という形でこの本社部門の審査を受けて1つのまとまりをつくりました。つまり、本社と各事業部門を繋げる核をつくったのです。
 

 

 

そして、その核に、事業部門を3グループに分けて、第1グループから順番に拡張審査を通じて組み入れていくという形を採用しました。
この方式によって3グループ全て(本社2部門と17事業部門)の第1段階の認証統一を終了したのが2012年8月でした。つまり、弊社の統一化のポイントは、A事業部を主体として、それに本社と3グループを統合する形を取ったことにあります。
認証統一後は、4か月後の2012年12月に第1回の維持審査を受け、その翌年2013年12月には、統一した認証によって再認証審査を受けるという形を採用しました。
ちなみに、この2012年12月に受けた認証統一後第1回目の審査は「維持審査」という位置付けになっているのですが、そうなった理由は、15年前に認証を取得していたA事業部のマネジメントサイクルでは、2012年12月が維持審査の時期にあたっていたからです。そして、翌2013年はA事業部の再認証時期にあたっていたので、統一した認証で受審しました。従って2013年12月は再認証審査という位置付けになっています。


■ 統一化までの4つのステップ


統一化を実現するまでには大きく4つのステップを踏みました。それらを順番にご紹介していきましょう。

(1) STEP1 事業部門へのアンケート
まず事業部門にアンケートを実施し、認証統一にどの程度賛同を得られるかを調査しました。18部門から回答が寄せられ、その結果は次の通りでした。
Q1 認証機関へのこだわりは

こだわりはない・・・15部門

現在の認証機関を望む・・・0部門

その他・・・3部門(改善に役立つ認証機関を望む)

それまで認証機関が部門により異なっていたため、認証機関統一を慎重にとらえていましたが、アンケートでは「今のままが良い」という回答はゼロでした。
Q2 統一認証について

メリットがあるなら賛成・・・10部門

反対・・・0部門

その他・・・8部門

その他という回答の内容は、「第三者による点検や改善はとても有効なので、その機会がなくなるのは困る。統一化によりサンプリング審査になって毎年審査が受けられなくなり、良い刺激がなくなるのは困る」、そして「統一化によって自部門の品質マネジメントシステムを見直す必要が出てくるなら、多大な労力が要るので勘弁して欲しい」という2つに分かれました。この意見に対する私たちの説明及び回答は後ほど述べることにします。

(2) STEP2 QMS認証状況調査(STEP1の事業部門へのアンケートと同時に実施)
どの事業部門がどの認証機関でQMS認証を取得しているかについて調査をしたところ、5つの認証機関を利用していることが分かりました。そのうちビューローベリタスは9部門の審査を担当しており、最大のウェイトを占めていました。認証を未取得だった複数の事業部門より「統一認証になるなら取得したい」という回答が寄せられたため、「新規拡張」という形で参加させることにして、第1段階では19部門が統一化に参加しました。また2012年の第1段階時には諸事情により参加しなかった3部門が2013年の第2段階では参加し、現在は合計22部門が統一化に参加しています。

(3) STEP3 準備開始
2011年3月、STEP2の認証状況の調査で、最も多くの部門審査を担当していたビューローベリタスに相談し、統合化スケジュールが決まりました。
ちなみに、3.の「全体QA委員会」とは品質保証責任者を一同に集めた会議のことで、2011年4月にその席上で統一化を宣言したということです。そして同月、経営戦略会議に上程し、承認を受けた後に、ビューローベリタスと契約を交わしました。また8.の「本社部門」とは品質保証部門と購買部門の2部門を意味します。
2011年11月の全社マネジメントレビュー実施を経て、準備が完了しました。

(4) STEP4 審査開始
2011年12月にいよいよ審査が始まったわけですが、この審査は、先ほど述べましたように、認証取得歴15年のA事業部というモデル事業部の拡張審査として、本社部門の審査を実施するという形で行われました。
まず本社部門が認証取得して、これに他の事業部門を寄せるということではなく、本社部門とA事業部を紐付けし、さらに事業部門を3グループに分けた上で統一化を段階的に進めていきました。
各事業部門は、それまで異なる認証機関で審査を受けていたため審査時期がバラバラでしたが、その中でも比較的審査時期が近いものを集めて3つのグループにまとめました。
 

■ 事業部門と全社マネジメントの連携方法


統一化にあたり、各事業部門のそれまでの取り組み(それぞれの品質マニュアル、品質システム、内部品質監査、マネジメントレビュー)には殆ど変更しませんでした。
一方、新しく認証取得した本社2部門に対しては、新たに全社品質システムの構築と全社統一品質マニュアルを作成し、それまで行っていなかった本社部門の内部監査を実施しました。
では、このようにマネジメントシステムを別々に運用している各事業部門と本社部門の活動をどのように連携させたのでしょうか。このハードルは、既に取り組んでいた全社業務プロセス点検(各事業部門に赴き、品質保証体制や仕組み、活動の状況をチェック)を、全社内部品質監査に置き換えることにより、クリアしました。つまり、各事業部門も本社部門もそれぞれ内部監査を実施する。その上で全社内部品質監査を実施し、全社のマネジメントサイクルが良好に機能しているかを確認する、という手法を取りました。
例えば、QA委員会、全社業務プロセス点検(全社内部品質監査)、サプライヤー認定、内部監査員教育等を、全社の仕組みとして活用することによって全体のマネジメントシステムを運用するようにしたのです。

 

■ 統一化の4つのポイント

統一化を進めるにあたって、大きく4点について工夫しました。その4つの工夫をご紹介しましょう。

(1) POINT1 品質マニュアル
前述の通り、統一化にあたり、各事業部門の品質マニュアルは殆ど変更しないことにしました。
一方、全社品質マニュアルについては、全社的方針と各事業部門方針の2段構えにして、本社部門の役割と事業部門の役割が別々であることを明記しました。これにより、各事業部門の裁量権を守ったのです。
ではどのように全社と事業部門のマニュアルを関連づけたかと言いますと、事業部門品質マニュアルの「品質マネジメントシステムの適用範囲」の最後に、「なお、セイコーインスツルグループ全社の品質マネジメントシステムは、全社品質マニュアルによるものとし、本マニュアルは、その下位規定である」という文章を追記してもらうことにしました。
この追記により、全社品質マニュアルと各事業部門マニュアルの関係を明確にすることで良し、とした訳です。これは「ゆるやかで負荷の少ない統一化を図る」という方針に基づいたものでした。

(2) POINT2 全社内部品質監査(元全社業務プロセス点検)
全社内部品質監査については、前述の通り、以前より取り組んでいた「全社業務プロセス点検」を活用して実施しました。
「全社業務プロセス点検」は業務プロセスに着目し、業務の仕組みややり方を点検する制度で、本社が各事業部門の弱点を把握してレベルアップ支援を行うため、また優秀な点を他事業部門に水平展開させるために行っていました。「いいとこ取りをして、社内に拡散させる」ことが目的の点検であり、監査ではありません。この全社業務プロセス点検を、統一化にあたり新たに実施が求められた全社内部品質監査に置き換えました。
具体的には、20項目ある点検項目(各項目10点満点で採点)の一部に次の2項目を入れ込み、点検を行います。
@内部品質監査が計画通り実施されているか、是正措置が適切にとられているか
Aマネジメントレビューが実施されているか

(3) POINT3 相互監査
ある事業部門の内部品質監査に、本社や他事業部門が参加、または、本社の内部監査に事業部門が参加するという相互監査を実施しています。相互監査を通じて、内部監査の全社的レベルアップ、部門間や、各部門と本社の内部監査員の交流を目指しており、これまでのところ、好ましい効果を得られていると感じています。



(4)POINT4 内部監査員教育
弊社の内部品質監査員の資格要件は3つあります。
@外部機関の教育を受けていること
A社内教育の受講者
B部門内教育の受講者
今後はBをなくして、@とAに集約したいと考えています。
社内教育の例をあげますと、
@内部品質監査員養成講座(年4〜5回開催)
A情報セキュリティ監査員講座(年1〜2回開催)
B内部品質監査員リフレッシュ講座(過去の受講者を対象に、改改訂内容等に関する講義。年1〜2回開催)
等があります。講座終了後にテストを実施、合格者は修了者として社内イントラネットに登録され、誰でも修了者を確認できます。
また事業部門や地方事業所から要請があった場合は、足を運び現地で講座を開催することも行っています。このように日頃より内部監査員の層を厚くする努力を重ねたことが、比較的スムーズな統一化につながったと感じています。

 

■ 統一化がスムーズに進んだ理由


統一化が円滑に進んだ要因は幾つかありますが、最も大きい理由は「事業部門を中心に考えた」ことだと思います。
統一化決定を耳にした事業部門は、それまで培ってきた品質マネジメントシステムや活動はどうなってしまうのか、自分たちの品質マニュアルは全部白紙になるのではないか等と憶測し、不安に感じます。そこで私たちは各事業部門に何度も足を運び、「緩やかな統一化を図る」ことを丁寧に説明し、一方で彼らの意見や話をつぶさに聞き、相談に乗り、支援も徹底しました。
また、事業部門の負荷が最小限になるように、最大限の努力をしました。前述の、各事業部門の品質マニュアルに「本マニュアルは全社品質マニュアルの下位規定である」という2行ほどの文章を書き足すだけで良いことにしたのは、その象徴的な例です。
こうして事業部門の支援を徹底し、負荷を最小限に抑えたことで、統一化への抵抗感がなくなるだけでなく、支持されるものになったと感じています。

■ 統一化で苦労したこと


一方、苦労した点もあります。まずは、一部の事業部門は、統一化に連動して新たな仕組みを構築しなければならないと思い込み、その負荷を恐れて統一化に消極的でした。これは先ほども申し上げたように、その事業部門に何度も足を運び、「今まで通りの活動で良い、緩やかな統一化を図る方針であること」と「統一化の負荷の少なさと、逆にメリットの多さ」について諄々と説明し、理解を得る努力をしました。
逆に積極的で喜ばしい「反対意見」も飛び出しました。「統一化されると維持審査がサンプリング審査となって、毎年第3者審査が受けられなくなるのではないか。それでは品質マネジメントのレベルを維持する上で困る」と言う事業部門もありました。こうした積極的な事業部門については、希望通り、毎年審査対象としました。
また統一化に参加していない事業部門では、全社的に統一された活動の推進が図れないのではないかという懸念がありました。これについては、統一化は、他にも存在する全社的な活動(QA委員会等)の一環なので、他の全社的な活動をしていれば、統一化に参加していなくても問題はないという名分にしてクリアしました。

■ 統一化による成果


統一化による成果は4つあります。
@品質活動の標準化とレベルの統一化
A相互内部監査制度等による内部監査の活性化と内部監査員のレベルアップ
B審査工数の削減。ひいては内外審査対応コストの削減
C全社の仕組みが安定し、効果を発揮し始めた
私が特に良かったと感じる点は、@です。統一化の最初の頃は、事業部門により非常に大きなレベルの違いがありました。その差をなくすため、きめ細かい支援や教育を継続した結果、差が徐々に縮まり、現在では全体的なレベルがかなり底上げされてきているように感じます。
また、私たち本社サイドとしては、事業部門毎のレベルをきちんと把握できるようになり、どの部門にどのような情報を発信したらいいか、どんな支援をすべきかを的確に判断できるようになりました。
一方、部門間では、統一化プロジェクトや委員会等によって風通しが良くなり、交流も進んだ結果、他部門からの良い情報をどんどん吸収して、自らレベルアップを図る姿が見られるようになりました。自分たちの成功例を他部門に知って欲しい、展開して欲しいという機運も高まってきています。また相互内部監査制度を立ち上げたことで、内部監査員がレベルアップして監査の内容も変化してきました。今までは「規格に合っていない」「判子が押してない」「ボールペンでなく鉛筆で書いてある」といった適合性に関する指摘が多かったのですが、それが有効性に関する指摘へと次第に変わってきています。非常に好ましいことです。そして審査工数が減り、費用節約につながっていることも大きなポイントです。このようなことが相まって、現在、全社の品質保証の仕組みが安定して回り出したと感じています。

ご清聴ありがとうございました。

 


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