ISO9001/ISO14001規格改訂の最新動向〜付属書SL(Annex SL)を詳しく
(日本適合性認定協会(JAB)主催「改正に関わる認証制度関係機関向けセミナー」より)


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2015年1月16日付ニュースでもお知らせした通り、2015年1月7日に公益財団法人日本適合性認定協会(JAB)が主催する「改正に関わる認証制度関係機関向けセミナー」 が開催されました。ニュースではポイントを紹介しましたが、本稿ではセミナーで触れられた「附属書SL(Annex SL)の概要」を取り上げ、詳しくお伝えします。
お断り:記事執筆時点(2015年1月)での情報に基づく記事であり、今後の規格改訂の内容によっては解釈等変更される可能性があります。

2015年に予定されているISO9001及びISO14001改訂版の大きな特徴として、ISO規格の共通テンプレートと言われる附属書SL(Annex SL)の採用が挙げられます。 今まで独自路線を歩んでいた規格群が、附属書SLによって統合の方向へ進んでいきます。つまり、ビジネスマネジメントシステムへの統合を目指して作られたのが 附属書SLです。

改訂される規格は、附属書SLに定められた共通用語、共通テキスト、HLS(High Level Structure、上位構造)を使用して規格を構成しなければなりません。 HLSとは、規格の章立て(目次)のことで、要求事項の骨組みとなります。HLSにそれぞれの要求事項を追加して各規格が作成されます(原則、HLSの変更や削除は 認められません)。この仕組みをプラグインモデルと言います。

つまり、HLSというプラットホームに、各規格をモジュールとしてプラグインすれば、それぞれのマネジメントシステムが個別に運用されるのではなく、 1つのビジネスマネジメントシステムとして統合される、という発想です。

HLSは各規格に共通する普遍的な要求事項によって構成されています。要求事項は箇条4から箇条10までで、順にPDCAを形成しています。特徴的なのは、 箇条4から箇条6のPDCAの計画(PLAN)の部分です。

箇条4.1の「組織及びその状況の理解」のアウトプットである「課題」と箇条4.2の「利害関係者のニーズ及び期待の理解」のアウトプットである「要求事項」 を考慮して、箇条6.1の「リスク及び機会への取り組み」で計画を策定する、という構図です。

この箇条4から箇条6までは、ISO31000(リスクマネジメント)をベースに作成されました。ISO31000は、マネジメントシステムではなく、事業計画の達成を 支援するガイドラインです。



HLSの箇条6.1では、「リスク」と「機会」を特定(determine)する、とあります。ここでは、「リスク」と「機会」が何を意味するかの定義が重要になります。 まず、「リスク(risk)」ですが、附属書SLには、共通用語としてリスクが定義されており、「不確かさの影響(effect of uncertainty)」となっています。 「不確かさの影響」は漠然としていますが、ISO31000の用語の定義では「目的に対する不確かさの影響(effect of uncertainty on object)」とされています。

なぜ附属書SLの定義で「目的に対する(on object)」の部分が削除されたかというと、ISO9001にある「品質目的」の「目的」と混同されることを避けるためです。 HLSの箇条4.1で特定(determine)する「課題(issue)」は「経営層」が扱う(ハイレベルな)課題なので、目的も経営上の(ハイレベルな)目的であり、箇条6.1の 「リスク」も経営上の目的に対する不確かさの影響となります。

「機会」の定義は附属書SLにはありません。定義が存在しない場合、オックスフォード英語辞典(Oxford Dictionary of English)の訳に従うことになっています。 Oxford訳では機会(opportunity)は「特定の状況によって何かをする、又は成し遂げることを可能にする時 (a time when a particular situation makes it possible to do or achieve something)」とあります(日本語としては「好機」により近いかもしれません)。 つまり、「リスク」と「機会」は、相対する概念ではなく、「影響(effect)」と「時(time)」という別の概念です。

したがって、「リスク及び機会への取り組み(Action to address risks and opportunities)」は、(経営上の)目的を達成する為の「不確かさの影響」に対する 行動(Action)と(経営上の)目的を達成する為に好都合な「時」にすべき行動(Action)を計画として策定する、という要求事項となります。また、各規格では、 それぞれのマネジメントシステムの「意図した成果(intended outcome)」が(経営上の)目的の一部として重なります。



HLSでは、箇条6の計画(PLAN)に続いて、箇条8の「運用」で実行(DO)、箇条9の「パフォーマンス評価」で評価(CHECK)へと展開していきます。また、箇条9.3の 「マネジメントレビュー」では、箇条4.1の「外部内部の課題の変化」と箇条4.2の「利害関係者の課題」を見直す要求があるため、箇条4からスタートしてぐるり と一周する仕組となっています。
箇条10の「改善」には是正処置(箇条10.1)がありますが、予防処置はありません。
箇条6.1の「リスク及び機会への取り組み」には、予防処置の概念が取り込まれているのでなくなりました(予防処置の発展的解消)。



ISO9001とISO14001の国際規格原案(DIS)の箇条タイトルにおける現行規格との相違点は、附属書SLの採用に因るところが大きいです。
特に課題(箇条4.1)と要求事項(箇条4.2)を考慮し、リスク及び機会への取り組み(箇条6.1)を計画する部分は、ISO9001とISO14001の従来版には無かった 要求事項です。
HLS適用により、これまで独自の進化を遂げていた規格が突然変異したかのような印象を受けますが、HLS適用の影響以外で新たに追加された箇条(要求事項)は 殆どありません。

したがって、受審組織としては、まず、箇条4の「組織の状況」から箇条6の「計画」に至る要求事項の理解が重要になるでしょう。

システム認証事業本部 小西直人


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