Case Study: 太陽油脂株式会社


海外展開と現場の意識付けを見据えて、
世界基準のISO22716を取得


太陽油脂株式会社(神奈川県横浜市)
http://www.taiyo-yushi.co.jp/


PDF版はこちら

 

ヨーロッパ進出に欠かせないISO22716


京浜急行線「子安」駅から歩いて数分の立地に、本社と工場を併せ持つ「太陽油脂」は約100年前、
1919年に食用油脂のメーカーとして誕生した。 その20年後に石鹸製造をスタートさせ、やがて「パックス」ブランドで、ヘアケア製品やボディーソープ、洗濯石鹸、 家庭用洗浄剤、そしてスキンケアなどの分野にも進出した。
その中で、生協を主な販売チャネルとして顧客を獲得していたのが、香料や添加物を控えた肌にやさしい「パックスナチュロン」スキンケア シリーズだった。同シリーズは、肌が弱い人やアトピー性皮膚炎に悩む人などに根強い支持を受け、リピーターが多い隠れた主力商品となっていた。
勢い、この優れた品質を見込んでOEM製造の依頼も来る。その依頼元の1社から「(OEMで)製造してもらっている化粧品をフランスに輸出したい ので、ぜひISO22716認証を取得してほしい」という申し入れがあった。
ISO22716は化粧品に特化したISO規格で、化粧品をヨーロッパ市場で流通させるためには必要不可欠だったからだ。
こうした申し入れをしてきたのはこの1社だけだったが、その少し前に「海外進出も視野に入れる」という社長方針が出されていたこともあり、 同社ではこの偶然を「良い機会」と捉えた。そしてISO22716認証を取得することを程無く決定し、準備に取り掛かった。
「国内流通だけを考えると、薬事法や日本化粧品工業連合会の化粧品GMP(Good Manufacturing Practice:優良製造規範)に基づく運営や対応で 問題は無いのですが、将来を考えると、少子高齢化の進む国内のみに頼らず、海外へも市場を広げるべきだとトップは判断していました。 また、私たち現場としても、ISO認証に基づく体系的な品質保証は道半ばという自覚がありましたので、認証取得のためのプロセスも含め取り 組みの強化を図る良い機会だと感じました」と、品質保証部長の武藤浩明さんは言う。

認証取得の意義を理解する教育


認証取得を決めた同社では、大きく分けて2つの側面から準備が進められた。
まず1つ目は、ガイドラインの要求事項を網羅した形式で製造現場における衛生管理基準文書を作成し、それに基づき手順書と行動をチェックする ための記録用紙を作成するという、体系化を具現化するための普遍的な作業だ。これは既に化粧品GMPなどに基づき整備されていた文書を見直して 足りないものを付け加えるという方法で行われ、2〜3割程度の付加で済んだ。
そして2つ目は「従業員教育」だ。実は、この教育方法に同社ならではの特徴と見どころがある。
まず、開かれた勉強会では、取得のための具体的なノウハウを学ぶのではなく、何のためにISO22716認証を取得するのか、そのためには何をどう しなくてはいけないのかといった、ガイドラインの狙い(コンセプト)を理解するための講義が行われた。
「参加者たちにISO22716認証取得の意義について自ら考え、自分たちの責任と分担を理解し、自ら動き出すモチベーションを得てもらうことが、 一番大事でかつ効果の上がる教育方法だと考えたのです」と、製造二部長の原充宏さんは言う。
この意識付けを重視した勉強会は、3 〜 4 回に分けて1 回 2 時間ずつ行われた。その結果、現場スタッフから「ISO22716認証を取得する狙いがよく分かった」 という声が聞かれ、ルールの順守度が上昇するという成果に結びついたという。
武藤さんや原さんたち管理側が現場に対する意義付けとモチベーションアップを重視した理由は、もう1つあった。それは「これは決まりだからやって もらわないと困る」という押し付け型でことを運ぶと、そうでなくても忙しい現場では「面倒くさいから全部まとめて省いてしまおう」ということに なりやすいからだ。本当に重要な点はそれほど多くはないのに、細かく規定したがゆえに、その大事なポイントも省かれては元も子もない。「それを 避けるためには、各人が物事の意義を理解して、大事なポイントを把握し、自分で対応方法を考え実行するという流れを作る必要があると感じた」(原さん)の だそうだ。これは日頃、足を地に着けて現場を見ている、製造畑の原さんならではの感触だろう。
「要は、より安全に、衛生的で高品質な製品を提供できる仕組みを構築して下さい、ということなのです。ISO22716に準じるとそれが的確にできるという ことを現場に理解してもらえたら、教育は成功です」と武藤さんは言う。

取得中も取得後も学びのツールにする


前述の意識付けを重要視する教育方針と並んで、同社には、もう1つ、ユニークな教育システムが構想されている。今後、1年に1〜2回、社員が順番に講師を 務める勉強会を定期的に開き、生徒として学んだ社員が、その次は講師役を務める、というサイクルを作っていく予定だ。「漫然と分かっている程度では人に 教えることはできませんから、緊張感が出ること請け合いです」と原さんは笑う。
また講師のサイクルに入る前段階の人たちに対しては、「理解度テスト」を行う予定だ。このテストは、ガイドラインと要求事項を読んで感想を書き、 上司のチェックを受けるという形で行われる。これでどの程度きちんと理解しているかが計れるというわけだ。「認証の取得が目的ではなく、学び続ける、 改善し続けるということが目的ですから、取得後もマネジメントシステムをきちんと浸透させ、さらに有効性を継続的に改善させる方法はないかと考えた結果です」 と原さんは言う。
「認証取得を目的としていない」という意味では、同社は、認証取得のプロセスにおいても何かを学びとることを重視した。ちなみにビューローベリタスを認証 機関として選択した理由の1つもそれで、審査方法について「要求事項に照らし合わせて確認するというだけでなく、○○○のような審査にしましょう」と組織へ の寄与を考慮した具体的な助言があったことが、「審査を通してもレベルアップしたい」と思っていた同社にとって、非常に魅力的に響いたそうだ。
 

認証を武器に、世界市場に出せる新商品


ところでISO22716認証取得後、現場はどのように変わったのだろうか。「取得してからまだ日が浅いのでドラスティックに変わったとは言えないが」と前置きをして 、武藤さんと原さんは次のような点を挙げた。

現場が報告するチェック表のチェック漏れが減少した。

以前から指摘されていたものの対策が延び延びになっていた段ボール箱の工場内への持ち込みを、取得をきっかけに全面的に止めた。

審査で指摘を受けた事項への対策や、書類作成で新たに発生した負担を減少させるための現場による提案が増加傾向にある。

ISO22716を通して、欧州の厳格な水質管理基準に触れ、水質に対する新たな意識が生まれている。

ちなみに、同社では現在、こうした品質管理への意識改革を武器にして、積極的に売り出したい新商品がある。食物由来原料でできたオーガニック・スキンケア 化粧品「素肌レシピ」シリーズだ。
2013年に発売を開始したこのシリーズは、一部の商品(化粧水とオイル)が有機認証の世界基準といわれる「エコサート」認証を取得しており、さらに100%天然原 料由来にこだわった同社独自の「ナチュラルオンリー」基準も適用されている。そこにさらにISO22716認証が加わったことで、今や、どの国に輸出しても恥ずか しくないオーガニック化粧品となっている。この特長をアピールしながら販路を開拓すれば、きっと新たな主力商品に育つことだろう。
かなり以前にISO9001認証を取得、化粧品GMPを適用し、その審査・監査にも慣れていたという同社だが、「ISO22716の現場審査で指摘された事項にはハッとした。 書類だけでなく現場を見るということの重要性に改めて気付かせてもらい、非常に良い影響を受けた」と言う原さん。この前向きな学びの姿勢がある限り、ISO22716認証は強い味方となって同社を支えるに違いない。

(2014年11月5日取材)
 

ビューローベリタスのサービス
ISO22716 化粧品GMP(優良製造規範)


www.bureauveritas.jp

© Bureau Veritas Japan