製品規制のグローバル潮流(事例編)
〜オゾン層破壊物質、エコラベル、容器包装廃棄物規制の成り立ちと最近の動向


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2012年よりビューローベリタスとパートナーシップを結ぶEnhesa(エンヘサ)社が執筆する、「海外における法規制」に関する記事を連載しています。

現在、世界中で上市、販売されている製品には、各国において様々な環境規制が課されていますが、全くのゼロベースから起草、導入された法令というのは、実はあまり多くはありません。多くの場合、特定の課題についてある国で規制の枠組みや法案が起草され、独自の試みとして他国に先駆けて導入されます。むろん、規制としての効果が出なければ、その試みは自然と忘れ去られていきます。反対に、規制の効果が示されれば、国際的な注目を浴び、他国での規制制度設計にも大きな影響を与えるのです。ある意味、規制が国境を越えて「コピー」されていく状況において、実際、その規制は多国間で同一あるいは似たようなものになるものでしょうか?

前号の導入編に引き続き、本稿より3号に分けて、以下11の代表的な分野における環境規制の成り立ちを整理し、また最近の動向を紹介します。

1.オゾン層破壊物質
2.エコラベル/エネルギースター/環境性能表示
3.容器包装廃棄物
4.バッテリ
5.廃電気電子機器
6.有害物質含有制限

7. 電気電子機器のエコデザイン
8. REACH - 化学物質登録/審査
9. 地球温暖化ガス
10.紛争鉱物(コンフリクト・ミネラル)
11.ナノテクノロジー


1.オゾン層破壊物質

世界的に最も成功した規制の一つと言えるのが、オゾン層破壊物質(ODSs: Ozone Depleting Substances) の禁止・制限でしょう。特定の物質が地球を有害紫外線から保護するオゾン層を破壊する可能性については、科学者が1970年代から懸念を示していました。その後、オゾン層の保護を目的とする国際協力の基本的枠組を設定する「オゾン層の保護のためのウィーン条約」が1985年3月22日に、同条約の下、オゾン層を破壊するおそれのある物質を特定し、その生産、消費及び貿易を規制して人の健康と環境を保護するための「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」が1987年9月16日に採択されました。そして、これらを契機に、一気に世界各国での規制が進みました。その他の環境規制と同様に、始めはごく限定的な物質を対象としていましたが、時間を追って対象物質の範囲が拡大し、また制限内容も厳しくなってきています。

【規制目的】地球のオゾン層保護
【規制内容】化学物質制限、上市制限、表示、排出制限、報告
【影響を受ける製品】電気電子機器の生産に使用される溶剤、冷却装置の冷媒、スプレーのエアロゾル、断熱材の発泡剤
【規制の広がり】グローバル。2009年9月16日、全ての国連加盟国197カ国がウィーン条約とモントリオール議定書を批准し、国際連合で全ての加盟国が批准した初めての環境条約となった。
【スケジュール】対象物質のフェーズアウト活動が進行中。HCFCについては、2040年までにフェーズアウトを完了する義務がある。

【最近の動向】
米国では、製造と使用の両方が厳しく制限されているにも係らず、未だに大量のオゾン層破壊物質が回収製品中に使用され市場に出回っています。これらの物質が環境中に不適切に排出されないように、冷却装置等の該当機器を適切にメンテナンスしたり、発泡剤などに使われないようにサプライチェーン全体を監視したりするのは、容易いことではありません。最近では、eAir, LLCという米国企業が、HCFC-22 (ハイドロフルオロカーボン-22) を含む冷凍機器を違法に販売・流通させたとして摘発されました。2014年6月にはこの案件の審判が下され、eAirには、5年間の執行猶予付き判決に加え、20万米ドルの罰金及び7万5千米ドル分のコミュニティ・サービスの提供、さらに、米国税関国境保護局が違法物品の保管に要した費用の返還が義務付けられました。

全米第2位の小売チェーンであるSafewayのケースでは、オゾン層破壊物質を冷媒として使用する機器の適切なメンテナンスの難しさが示されています。2013年9月、Safewayは、全米に展開する659の店舗で使用する冷凍冷蔵庫からのオゾン層破壊物質の漏出に対して、60万米ドルの罰金を支払い、漏出の大幅削減を目的とした全社計画を策定し導入することに同意しました。この措置に要する費用は推定410万米ドルにのぼるとみられています。

国際的には、2014年7月の議定国会議で、大気中での濃度を増している新たな4つのオゾン層破壊物質 (CFC-112, CFC-112a, CFC-113a, HCFC-133a) に関する議論がもたれました。影響を受ける排出源としては、電子部品の洗浄剤として使用されている溶剤などがあります。

また、インドでは、2014年5月に、HCFC類の2040年1月1日までのフェーズアウトを規定するオゾン層破壊物質規則2000が採択され、モントリオール議定書に対するインドのコミットメントが引き上げられました。この規則により、指定物質を輸入、使用または製造する企業は、直ちにそのような活動を停止しなければなりません。企業はまた、HCFC類以外のオゾン層破壊物質の製造と使用もフェーズアウトさせる義務があります。

2.エコラベル/エネルギースター/環境性能表示

最古のエコラベル制度は、おそらくドイツのブルーエンジェルでしょう。1978年に設立され、今では80の製品群をカバーし、1万件以上の製品に適用されています。続いて1989年にノルウェーでエコラベルが導入され、現在63の製品群に適用されています。1992年にはEUエコラベルが立ち上げられ、1万7千件を超える製品に適用されています。図1は、拡大傾向にあるEUエコラベルの認証件数を示しています。欧州で最もエコラベル認証されている電気製品はテレビです。米国環境庁 (EPA) が1992年に立ち上げたエネルギースターは、現在では65の製品群をカバーしています。エネルギースターはその他のスキームと異なり、消費者製品だけではなく建築物もカバーしています。エネルギースター制度はEUやアジア各国でも正式に認定されており、最もグローバルなスキームの1つと言えます。

図1:EUエコラベル認証件数


【規制目的】廃棄物、エネルギー、騒音、大気、気候変動、水、化学物質
【規制内容】表示、化学物質含有制限、設計要件、排出制限、報告
【影響を受ける製品】製品全般 (国、制度による)
【規制の広がり】グローバル (500を超える制度)
【スケジュール】進行・拡大中

【最近の動向】
EUでは2014年5月6日から、コンピューターサーバーや無停電電源装置ディスプレイ、画像装置についても、エネルギースタープログラムに関するEU及びUS合意 (決定2013/107/EC) 付属書C改訂版で定義された新基準を満たせば、製品にエネルギースターラベルを貼付することができるようになりました。

インドネシアでは2014年2月から、製品のライフサイクルにおける環境側面で一定の基準を満たした企業は、当該製品にエコラベルを貼付することがきるようになりました。

フランスでは、環境省から国会への提言に基づき、2011年7月から2012年7月の1年間、消費者製品の環境的特徴を表示する全国規模の試行が実施されました。同表示制度を正式に導入するか、導入する場合、企業の自主表示にすべきか義務表示にすべきか、といったことを判断するための試行でしたが、ステークホルダーらは概ね成功したとみなしており、環境省では現在、消費者製品の環境的特徴表示制度の枠組み設計を進めています。しかし、この枠組みは、義務化された場合は2020年まで、自主的取組みに留めた場合でも少なくとも2016年後半までは、実現しないとみられています。

カタールでは2014年3月9日より、企業は2013年付環境省決定 No. 191 で規定される要件を満たした製品について、カタール品質マークを貼付することができるようになりました。

EUでは2014年7月18日まで、EU市場に製品を上市する企業や全ての関係者 (現在EUエコラベル認証を得ているかどうかに関らず) を対象とした、EUエコラベル規則案に関する意見募集がなされていました。目的はEUエコラベルスキームの実施状況に関するステークホルダーの意見を集め、その効果を分析し、将来の新たな制度設計への参考とすることでした。

中国では、工業用ボイラー、モーター、アダプター、コンプレッサー、冷蔵機器などの機械及び電子機器の製造者は、2014年7月より、省エネルギーに関する基準を満たした場合、当該機器の省エネ対応機械・電子機器認証を申請することができます。

3.容器包装廃棄物

資源の再利用と容器包装廃棄物の低減のため、特定の種類の飲用ボトルの再利用を初めて定めたのは、オランダの1978年6月8日付指令297でした。1991年、ドイツがそのコンセプトを拡大し、全ての種類の容器包装材について製造者拡大責任の原則を導入しました。製造者及び輸入者は、自社製品から発生する容器包装ごみの回収、リサイクル、廃棄について責任を負います。この他、数カ国が同様のイニシアチブに取り組み始めたことから、ECレベルで容器包装及び容器包装廃棄物に関する指令94/62/ECが採択されました。加盟国内での導入時に様々な点で差異が施されてはいるものの、全てのEU加盟国が、製品のエンド・オブ・ライフ時に生じる容器包装廃棄物の責任を製造者と輸入者に課しています。しかし、対象となる事業者には、実際にどれだけの量の容器包装材が市場に出回ったのかを正確に算出、報告するための事務作業が発生し、非常に大きな負荷がかかっているのも事実です。アジアのいくつかの国も同じようなアプローチを採り始め、また他の大陸でも積極的に取り組む国が出てきています。また、多くの国が、ごみの量を減らすためにプラスチック袋を禁止する方向にあります。

【規制の目的】ローカル、廃棄物
【規制内容】化学物質含有制限、その他設計要件、上市制限、表示、金銭的手法、報告
【影響を受ける製品】全ての種類の容器包装材
【規制の広がり】ヨーロッパ全土、アジアに徐々に浸透、南北米アメリカ大陸やアフリカで初めての試みが進行中

【最近の動向】
オランダでは2014年6月13日まで、容器包装管理に関する決定2014(案)に対するパブリック・コメントが受け付けられていました。当該案は容器包装廃棄物のリサイクル目標値を変更し、回収された廃棄物に関する報告義務を廃棄物収集業者及び処理業者に対して新たに課し、また製造業者と輸入業者の報告義務の内容を修正するものです。

アルゼンチンでは、現在、ブエノスアイレスにおいて製品を包装・上市する製造者、生産者、輸入者、及び運営者に、容器包装に関する管理計画または、容器包装の保管、回収、引取の仕組みの策定義務を課す法案が、ブエノスアイレス県上院で議論されています。採択された場合、当該製造者等は、策定した管理計画や仕組みの実行状況とその進捗を県当局に報告する義務が課されます。

次号では、バッテリ、廃電気電子機器、有害物質含有制限、そして電気電子機器のエコデザインについて紹介します。

Enhesa社 宮田祐子


当記事は Going Green - CARE Innovation 2014, Vienna に提出され採用されたComparative assessment of present legislation and policies (Thierry Dumortier, Cecile Baudon and Yuko Dvorak-Miyata著) を、共著者の責任で要約し翻訳したものです。

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