製品規制のグローバル潮流(導入編)〜国境を越えて「コピー」される環境規制

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2012年よりビューローベリタスとパートナーシップを結ぶEnhesa(エンヘサ)社が執筆する、「海外における法規制」に関する記事を連載しています。

現在、世界中で上市、販売されている製品には、各国において様々な環境規制が課されていますが、全くのゼロベースから起草、導入された法令というのは、実はあまり多くはありません。多くの場合、特定の課題についてある国で規制の枠組みや法案が起草され、独自の試みとして他国に先駆けて導入されます。むろん、規制としての効果が出なければ、その試みは自然と忘れ去られていきます。反対に、規制の効果が示されれば、国際的な注目を浴び、他国での規制制度設計にも大きな影響を与えるのです。ある意味、規制が国境を越えて「コピー」されていく状況において、実際、その規制は多国間で同一あるいは似たようなものになるものでしょうか?

Enhesaでは200カ国・地域の環境法令を定常的にモニタリングしています。その中で製品に関する規制、中でもエコラベル、容器包装、バッテリー、エコデザイン、化学物質、紛争鉱物(コンフリクト・ミネラル)、そしてナノテクノロジーに対する規制を具体的に分析したところ、全ての分野の規制制度設計の達人といえる国は一カ国も確認されませんでした。では、具体的にどの規制がより成功している(効果があるとして多数の国に採用されている)と言えるでしょうか?現在審議中の規制のうち、今後の世界的な規制制度設計の流れに大きく影響すると見込まれるものはあるのでしょうか?2015年に向け、企業としては自社製品をどのようにデザインし販売していけばよいでしょうか?これらの問いへの回答として、複数号にわたり、分野ごとの製品環境規制の概要を紹介します。

政策決定・規制制度設計の原則

各論に入る前にまず認識しておくべきことは、主要な製品環境規制の多くは、何か世間の耳目を集めるような「問題」を契機として導入されているということです。環境規制というのは、規制による対応が事実(問題発生)の後追いになることが非常に多いのです。


図1 (出典: Edward W. Lawless, Technology and Social Shock, Rutgers University Press, 1977, 616 pages)

図1は、多くの場合における製品環境規制の成立と導入のサイクルを示したものです。どの国でも、言うは安し行うは難しで、環境や安全問題の懸念がありながら、実際に規制されないことは非常に多くあります。たとえば19世紀にイギリスの当局が、蒸気機関車により牛乳が汚染されるのでは、という農場主たちの懸念に対応していたら、今日の世界は全く様相の異なるものになっていたでしょう。一方で、市民にあまり認識されていないような潜在的な問題でも、規制当局が調査研究活動に予算を付けたり、関係企業に環境測定や報告義務を課したりすることにより、問題の可視化を試みることもあります。欧州REACHの化学物質試験やナノテクノロジーは、明らかに後者に当たるといえます。

環境・安全問題が明らかになっても、残念ながら、規制当局が最も有効な規制の枠組みや法令を予見する魔法の水晶玉を持っているわけではありません。現実には、規制制度設計のできるだけ早い段階で、関係する企業やその他の関係者らと情報や意見を共有した方が、当初の目的を達成できる可能性が高いのです。多くの国がこの事実を認識しており、法案起草以前に意見を募集(パブリックコメント)したり、関係者に法案を定期的にレビューさせたりすることによって、法令の最終的な効果を高めようとしています。設計段階により多くの関係者を巻き込むことが、法令の成功度合いを高めることにつながります。エコラベルやエコデザインはまさにこの好例で、官民の協力体制を強化することを意図しています。極端なケースでは、こうしたプロセスを経ることで、実際の義務としての規制が導入されずとも、当初の目的を達成することもあるのです。

環境・安全に関する問題の中には、複数の国で市民の注目を浴び、その問題意識が一気に世界中に拡がるものがあります。一方、単一またはごく少数の国で注目されながらも、その他の国ではなかなか認識されないものもあります。国や地域により環境問題が異なるということもありますが、むしろその国家の社会経済的な側面と深く結びついており、他の政治課題や社会問題に優先順位を譲らなければならないこともあるからです。これらのグローバル潮流を念頭に、12月号では、いくつかの分野での規制の成り立ちと主要国における最近の動向を紹介します。

Enhesa 事業開発&プロジェクトマネジャー 宮田祐子

当記事は Going Green ? CARE Innovation 2014, Vienna に提出され採用された Comparative assessment of present legislation and policies (Thierry Dumortier, Cecile Baudon and Yuko Dvorak-Miyata著) を、共著者の責任で要約し翻訳したものです。

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