村田製作所グループのEMSマルチサイト
株式会社村田製作所
環境部 環境推進課 課長
西村 正人 様

「BVサーティフィケーション お客様感謝DAY 2014」
 (2014年6月13日/大阪・梅田)でのご講演より




株式会社村田製作所(京都府京都市)
http://www.murata.co.jp/


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村田製作所について


村田製作所 環境部の西村と申します。
本日は村田製作所の環境マネジメントシステム(EMS)のマルチサイト化についてお話し致しますが、最初に会社について少し紹介させて頂きたいと思います。

村田製作所の創業は1944年、創業者村田昭が京都市でチタンコンデンサの生産を開始したことに遡ります。今年で70周年を迎えました。2014年3月31日時点で、グループ会社は101社(国内30社、海外71社)、従業員は48,288名(国内23,510名、海外24,778名)です。従業員の国内比率という点では、皆さんの会社の比率と比べると国内が占める割合が高めかもしれません。

社是に「独自の製品を供給して文化の発展に貢献し」とあるように、創業以来一貫して独自性にこだわった製品づくりを進めてきました。
コア・コンピタンスとして、@材料技術、A生産技術、B積層技術、C高周波技術を掲げています。
セラミックスを基とするコンデンサやフィルタなどの電子部品を製造しており、テレビ、パソコン、携帯電話など電子機器1台あたりにチップ積層セラミックコンデンサは数百個単位で使用され、グローバルシェアは35%です。

世界各国に拠点がありますが、国内での生産拠点が20カ所超、グローバルでは約10カ所ということで、先ほど国内での従業員数の占める割合が高いかもしれないと申し上げましたが、国内での生産割合が高い(8割)状況です。一方、売上比率は海外が約9割、国内が1割です。つまり、国内で約8割を作り、海外で9割を売っているということで、本日のマルチサイト化のお話しも国内拠点での取り組みが中心となります。

村田製作所の環境活動


(1) 環境方針/環境活動の歴史
ムラタグループの環境方針は、「セラミックスの特性を活かした」という文言を含む基本理念、及び行動指針で構成されています。

1995年にムラタ環境憲章というものを制定しました。
1970〜1980年代は公害対応が中心で、環境マネジメントはまだまだという状況でしたが、電機・電子業界における動向、取り組みの潮流と歩調を合わせる流れで活動を展開してきました。
1994年位に環境部を設立、1995年に環境憲章を制定、そのタイミングで1990年代初頭にオゾン層破壊が問題になっていたことから、オゾン層破壊物質の全廃を宣言。
1990年代には当社を含め業界各社が地下水汚染の問題でメディアに取り上げられましたが、1998年に塩素系有機溶剤の全廃を宣言。
さらに1999年に土壌汚染防止基準を制定し、国内の全工場がその基準を充たすための施策を展開。また比較的早い時期にCGS(Cogeneration System)を導入し、2011年の東日本大地震発生以降は、節電対策の上でも大きな効果があり非常に助かっています。

ISOについては、1996年に台湾でグループ第1号となる品質マネジメントシステム(QMS)認証を取得しました。翌年1997年に国内で第1号となるQMS認証を取得、2000年に国内の全工場(約20)でのQMS認証取得を完了しました。また、2002年には環境報告書を初めて発行しました。
2005年に本社でEMS認証を取ろうという話が出ました。しかし、全拠点のコントロールが不完全であるという当時の課題に対して本社のガバナンスを効かせなければ、ということで、マルチサイト認証を視野に入れつつ、2005年に本社がビューローベリタス(BV)の審査を経てEMS認証を取得、翌年2006年には国内全拠点を含めたEMSマルチサイト認証を取得しました。
2008年には海外第1号として中国の無錫にある拠点をマルチサイトに追加。以来、その他の海外拠点も順次マルチサイトに追加しております。
2012年、富山村田、氷見村田、羽咋村田(*1)については、サテライト化というしくみを導入しました(後述)。

(*1)株式会社富山村田製作所、株式会社氷見村田製作所、株式会社ハクイ村田製作所


(2) マルチサイト認証・サテライト化のねらい

マルチサイト認証のねらいですが、まず「@本社と各拠点間の連携及びガバナンスの強化」、次に「A審査工数の削減(費用削減)」、そして「B審査準備業務などの軽減」となります。ISO認証をそれぞれ取得して独自に運用をしている国内の20を超える拠点に対して、本社がしくみを定めて指示を出しても、それらがどこまで浸透しているのかわからない、そのような状況に対してもう少しガバナンスを効かそう、それが1番大きな理由でした。マルチサイト化を果たした後、各拠点では、審査前の準備(審査機関との打ち合わせやスケジュール調整など)という最も時間がかかる部分で負荷が軽減されたと非常に歓迎されています。

(3) マルチサイト認証へのステップ
マルチサイト化を進める以前、国内各拠点の認証機関はバラバラでしたが、取り組みを進めるにあたり、全拠点の認証機関をBVに変更しました。QMSについても、将来的なEMSへの統合を視野に入れ、全てBVに移行しました。QMSの移行は難しいと構えていましたが、実際に取り組んでみると、ハードルは予想していた程に高くはなかった、というのが実感です。QMSとEMSの統合は道のり半ばという状況ですが、いずれにせよ、認証機関をBVに統一した、ということです(国内)。

とは言え、当初具体的にどのように進めて良いかわからず、BVと相談しながら進めていきました。
大きく4段階に分かれます。
まず要件を確認してどのような条件を充たす必要があるかを理解し、次に各拠点に「マルチサイト化を進めますよ」と伝えてから具体的なアクションに踏み出せば良いと考えていましたが、この段階で苦労しました。
本社がISOを取得して2年目でしたが、各拠点では認証取得から既に7〜8年が経過し、独自の方針に基づいてMSの運用・改善を進めていました。そのような中、社内説明会でマルチサイト化推進方針について説明した所、工場長などから厳しい言葉がたくさん飛んできました。
マルチサイト化において、移行過程における事務処理などの負荷も小さくはありませんが、私にとってはこの第2段階で、環境方針の一本化や認証機関の変更について、事業所長や環境管理責任者を説得し、了承を得るということが一番大変でした。
それらをコツコツと進めた後、マルチとしての組織化、そしてしくみの統合を進めていきました。

(4) 環境マネジメント組織
こちらがムラタグループの現在の環境マネジメント組織図です。
マルチサイト化以前、拠点単位で運営していた時代は、拠点の事業所長の下に環境管理責任者がぶら下がるという構造でしたが、マルチサイト化以降はグループ全体の枠組みとしてとらえ、トップマネジメントは社長と環境担当役員が、全社環境管理責任者は本社環境部長が担当、そして各拠点(事業所・工場)を本社の各部と同階層に位置づけるという組織になりました。本社が責任をもってEMSに関わる情報を発信し、各拠点との連携・コミュニケーションの強化を図っています。
マルチサイト化以前は拠点毎に様々な決まりごとがありましたが、しくみを統一しましたので、マニュアルも共通のものに一本化しました。それにより各拠点では、ISO審査で全社共通部分に関する説明が無くなったことにより、審査工数が減りました。本社では審査工数が増えましたが、グループ全体では減少しています。

こちらは2012年に導入した「サテライト」の組織図です。
マルチサイト化を果たした当初、富山村田、氷見村田、ハクイ村田、これら3事業所は横並びという扱いでした。しかし、生産品目が同じで、技術的・事務的な交流があり、また、大事なポイントとして地理的にも隣接していたため、サテライト組織としての扱いを検討した次第です。
富山村田の規模が大きいことから富山村田の工場長をサテライト組織のトップに据え、氷見村田及びハクイ村田の各機能を、富山村田の各部と並列で扱う。このサテライト化により、氷見村田とハクイ村田において工数を削減することができました。

(5) マルチサイト認証に向けたシステム統合/しくみの統合ステップ
2005年に本社がEMSで認証、2006年には国内全拠点を対象にマルチサイト認証を取得した、と先ほどお話ししましたが、2005年の末に「次年度に、ISO要求事項に関わる全社のしくみを統合するように」という指示が出ました。しかし、各拠点が構築・運用してきた歴史やこだわりなどから一気に統合することはなかなか厳しく、3〜4年をかけて段階的に進めることになりました。
1年目はまず最小限必要な要件として「環境方針」、「環境目標」、「内部環境監査」、「マネジメントレビュー」に絞って統一を進めました。その後、1年毎に対象を拡げ、3年後に完了しました。
皆さんの中にもしくみ統合をご検討されている方がいらっしゃると思いますが、計画を立てて段階的に進めれば、段階が進むにつれて審査工数は減りますし、無理に一気に進める必要性は低いと思います。

(6) 環境方針
マルチサイト化以前は環境基本方針の下に、各拠点の環境方針がぶら下がる形でしたが、現在ではムラタグループで1つの環境方針に統合しました。

(7) 法的及びその他要求事項
マルチサイト化以前は、各拠点で担当者が法律・条令を調べて対応していました。
マルチサイト化以降は、グループ共通での管理を進め、現在では、全国共通の法律については本社が主導で一括して調べデータベースをアップデートし各拠点に通達を出しています。都道府県や市町村の条例については、一部の都道府県に拠点が偏在していますので、各エリアで代表拠点を定め、担当拠点に対応して頂くと。この手法により効率化を進めることができました。

効率化の一例として、本社が作成する「法的要求事項 順守状況評価表」というチェックリストを紹介します。
毒物・劇物に関する法律のチェックリストであれば、法の概要や何をやってはいけないか、といったことが記載されており、各拠点で対応が必要かどうか、簡便かつ漏れなくチェックできるようになっています。
本社が1年に2回、チェックリストを拠点に配布し、対応が必要な拠点には何を実施するか、ということを報告してもらっています。以前は拠点毎に重複して行っていたことが、本社が一括対応することで効率が上がり、漏れも発生しにくくなりました。

(8) 環境目的目標設定の考え方
本社では、電機・電子業界の動向や世の中の潮流、ムラタグループの環境方針を踏まえつつ、3〜5年のスパンで環境行動計画(グループ全体の目的)を定め、それに基づいて年次ガイドライン(各拠点の環境目的目標割り当て)の作成を行います。そして各拠点と調整を行い、拠点毎に目的目標を設定します。
マルチサイト化以前は本社に強制力が無く、本来ならグループとして達成しなくてはならない数値がありましたが、拠点毎にEMSを運用しているからという理由でなかなか入り込めなかった部分がありました。今では、各拠点と調整しながら、最終的には本社がマルチサイトとして全体の数値目標を定め、グループ全体の目標達成に向けて主導的役割を担う体制になっています。

(9) 内部環境監査
マルチサイト化以前は、各拠点で内部監査チームを編成し実施していました。現在は、A拠点の環境監査員がB拠点の内部監査を、B拠点の環境監査員がC拠点の内部監査を、という風に拠点間の監査を実施しています。これにより以前であれば指摘を受けなかったような課題が浮き彫りになる、という効果が生まれました。

チェックリストについては、本社が全社共通のリストを作成し、各拠点では必要に応じて項目を追加しています。このリストに基づいて監査を実施すれば、各拠点を一定基準に基づいて評価できる構成になっています。
以前は「内部監査を実施した、不適合は何件だった」に留まり、拠点間比較や、グループ全体の改善状況確認がしづらいと感じていましたが、上記の手法で進めることにより、ある程度成果が上がってきました。
ちなみに海外拠点の管理レベルは国内と若干異なりますが、同一のチェックリストを使用しています。

(10) マネジメントレビュー
マルチサイト化以降も、マネジメントレビューについては各拠点で個別に実施しています。環境方針、目的目標に加えて、「本社への要望」を含めた拠点毎のアウトプットを本社でとりまとめ、経営層に報告します。グループ全体のレビュー結果(フィードバック)を全拠点に伝え、本社への要望については1年が無理なら、2年、3年かけても最後までやる、としています。拠点との信頼関係にも関わる部分です。

(11) 社内規定類の体系
環境マネジメントマニュアルも一本化しました。マルチサイト化以前は拠点毎にマニュアルや規定類がありましたが、なるべく一本化したマニュアルに取り込もうということで、可能な限り含めました。とは言えやはり拠点固有のものが残りますので、それらは付属資料という扱いにしました。
本社がこのマニュアルを発行しますので、マニュアルについては本社で審査を受けます。拠点審査で本マニュアルについて聞かれることはありませんし、質問があれば本社にお問い合わせ下さい、となります。
以前は拠点数に比例して、マニュアル・規定類が非常にたくさんありましたが、現在では20分の1程度になりました。

(12) マルチサイト認証範囲の拡大
国内の取り組みは軌道に乗っていますので、現在は海外拠点についてもマルチサイトへの追加を進めています。M&Aでグループに新たに加わった拠点などは円滑に進めやすいですね。また、中国では行政との絡みなどで認証機関変更は困難になるかなと心配していましたが、蓋を開けてみると非常に円滑に進めることができ、中国の全拠点の認証機関をBVに統一できました。
しかしながら一部の海外拠点については、審査費用があまり安くならない、移行メリットを感じない、などの理由で移行が進まない所もあり、今後の課題となっています。

(13) マルチサイト認証によって得たメリット
3年間の審査工数で見ますと約25%削減できました。
そしてシステム効率化、ガバナンス強化の実現が挙げられます。本社主導でグループ全体の目標を達成できるようになり、非常に良かったと思っています。
最後に、外部審査対象サイトのサンプリングです。マルチサイトとして全体工数を調整することで、拠点によっては、通常3回の維持審査が2回に、または3年後の再認証審査のみ、というケースが発生し、「負荷が軽減された」と歓迎されています。

(14) 今後
まだマルチサイトに含まれていない海外拠点についても、認証機関をBVに変更してグローバルでEMS統合を進める予定です。一方、OHSAS18001のマルチサイト化、そしてEMSとの統合も進めています。

ご清聴ありがとうございました。



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