ISO10002:2014が発行

2014年7月15日にISO10002の2014年版が発行されました。今回の発行は従来の2004年版に変更が加えられることなく、引き継いだ内容となっています。本稿では改めて概略を解説致します。

1.ISO10002規格の発行
2004年、ISO10002「Quality management - Customer satisfaction - Guidelines for complaints handling in organizations」が発行され、その技術的内容及び規格票の様式を変更することなく作成された、国際規格に一致した日本工業規格「品質マネジメント−顧客満足−組織における苦情対応のための指針」として、JISQ10002が2005年に制定されました。
本規格は、「組織、顧客、苦情申出者及びその他の利害関係者に資するよう意図されており、苦情対応プロセスを通じて得られた情報は、製品及びプロセスの改善につながり、適切に対応した場合には組織の評価が高まることになる。グローバル市場において矛盾のない苦情対応を行うことによって信頼を与える。」ことを目的としています。

2.国内外における議論

日本国内においては1990年代後半から議論が重ねられ、「日本工業規格(案)」として2000年10月20日、「JISZ9920:2000 - 苦情対応マネジメントシステムの指針」が発行されています。
翌2001年1月、「苦情対応(Complaints handling)」のISO化が動き出すことになり、日本は全てのワーキンググループに代表を派遣し、積極的な活動をしています(*1)。「JISZ9920:2000」の内容を提案したことは標準化における日本の存在感を示すことになりました。その後にISO10002が発行されたことにより、JISZ9920は廃止されることとなりました。

 (*1)ビューローベリタス審査員は、2000年TC-176京都会議に出席、SC3において苦情対応の国際規格作成を提
案、また規格作成のメンバーとして、オランダ、2001年にドイツに派遣されるなど中心的な役割を担いました。

 

苦情対応マネジメントシステム規格の流れ

1995

世界初の苦情処理マネジメントシステム「AS4269:1995」発行

1997

オーストラリアがCOPOLCO総会(ロンドン)で提案

1999

イギリスで「BS8600:1999」が発行
COPOLCO総会(ワシントン)で苦情処理の国際規格化を勧告
工業技術院、日本の国家規格作成に着手

2000

日本の国家規格「JISZ9920:2000」が発行

2001

ISO規格化の作業部会(ワーキンググループ始動)

2003

日本で第三回作業部会開催(東京)

2004

ISO10002:2004」発行

2005

ISO規格を翻訳した「JISQ10002:2005」発行
同規格の発行に伴い、「
JISZ9920:2000」が廃止

3.規格の概要
JISQ10002(ISO10002)では、効果的な苦情対応のためには、組織が、(1)公開性、(2)アクセスの容易性、(3)応答性、(4)客観性、(5)料金、(6)秘密保持、(7)顧客重視のアプローチ、(8)説明責任、(9)継続的改善の9つの基本原則に則った苦情対応プロセスを持つことが必要であると定めています。また、これらの基本原則にそったマネジメントを実行するための苦情対応の要素とプロセスが具体的に記述されています。これは「苦情対応プロセスの実施」の項に苦情の受付から対応完了までの必須要素として規定されていることが特徴と言えるでしょう。
また、システム全体としては、トップマネジメントのコミットメントのもとに体制が整備され、苦情の受付から対応の終了に至るまでの適切な苦情対応プロセスの実施と、実施状況や成果を監視、監査、マネジメントレビューなどにより適切に評価し、フィードバックしていく、継続的改善の仕組み作りが求められています。以下に、ISO10002の構成を図に示します。

図:ISO10002の構造

4.国内における認証の制度

ISO10002へのアプローチには下記の3つのケースがあげられます。
(1)自己適合宣言
組織にISO10002を導入し、かつISO10002に適合したことを自ら宣言することをいいます。これは組織がISO10002をツールとして採用していることを外部にアピールすることが目的です。自己適合宣言は有効ではあるものの、第三者が適合性を確認したものではないため、信頼性が高いとは言えないでしょう。
(2)第三者意見書
自己適合宣言に加え、信頼性補完のために第三者の意見書を同時に取得することをいいます。
第三者意見書の作成は、管理責任者へのインタビューで方針や手順、運用状況の確認を通して行われます。自己宣言より一歩進んだ状態です。
(3)認証
第三者機関(審査機関)が「〜した方が望ましい(should)」と記述されている部分を「〜しなければならない(shall)」と読み換え、要求項目に対する適合審査を実施することをいいます。審査機関が公平中立な立場で、ISO 9001やISO 140001など他のマネジメントシステム認証と同等の審査・認証を実施するため、消費者から見て信頼性の高いものとなります。
 

ISO10002導入の外部へのアピール

自己適合宣言

長所

手軽に社内で対応できる

短所

信頼性に劣る

第三者意見書

長所

自己適合宣言の補完となる

短所

信頼性に劣る

認証

長所

信頼性が高く、独自の解釈をさけ中立・公平な解釈ができる

短所

認証機関へのコストが掛かる

それぞれの区分における企業数は不明ですが、自己宣言は100社を超え、第三者認証は国内20件を超えているものと推察されます。

5.2014年版の発行に際して

苦情マネジメントの重要性は顧客満足を実現するための手段として、その重要性の認識は高まっているものと考えられますが、組織の品質マネジメントの中で、ISO10002の要求を満たした形で実現しているケースは少ないように見受けられます。顧客の関心事が組織の製品のみならず、その活動、広告、サービスに至るまで範囲が拡大してきていることに鑑み、CSRとしての考え方の一部に近づきつつあると言えるでしょう。規格発行を契機に組織の苦情マネジメントのレベルアップを期待したいところです。

システム認証事業本部 戦略事業部 水城学

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