ウシオ電機のISO事例
統合ISOを活用した組織運営の改善ポイント
ウシオ電機株式会社 CSR部 部長
氏家 啓一 様

「BVサーティフィケーション お客様感謝DAY 2014」
(2014年5月20日/東京・秋葉原)でのご講演より


ウシオ電機株式会社(東京都千代田区)
http://www.ushio.co.jp/

はじめに

ウシオ電機 CSR部では、グループ全体の環境の取り組みを推進したり、最近では紛争鉱物の課題を社会的に解決したり、といったことを行う一方、ISOの事務局としての役割も担っております。QMS(品質マネジメントシステム)及びEMS(環境マネジメントシステム)導入からの長い紆余屈曲、挫折を振り返り、問題点を打ち明けるのも何かのご参考になればと思い、本日は登壇した次第でございます。

 統合ISOのねらい(必要性)
当社では2010年よりQMSとEMSの統合推進を開始しましたが、そのきっかけ、統合のねらいは3つございます。 それまで独立採算制で2つのカンパニーが存在していましたが、多様な事業をフラット化した事業部制に移行することになりました。それに伴いマネジメントが経営組織に沿ったものでなければならない、ということで、カンパニー毎に運用していたマネジメントシステム(以下MS)を統合せざるを得なくなりました。
2つ目は中国をはじめとするアジア地域への生産移管などにより、グローバルレベルでは一体となったマネジメントユニットの必要性が既に発生していました。グループレベルでの品質管理、法規制対応などの必然性が既にあったということです。
3つ目はISO認証維持に関わるコストダウンです。

ここでウシオ電機の概要をご紹介します。
1964年に設立、今年50周年を迎えました。国内外のグループ会社数は50社あまり、従業員数は5,000名強です。@エレクトロニクス、A画像映像、Bライフサイエンスの3つの分野において、「光を発する光源・ランプ」そのものを開発し、それを応用した装置、さらにその他の技術を集積したソリューションを販売しています。
本社機能は東京に、営業拠点は東京と大阪に。そして工場は@播磨事業所(兵庫県姫路市)、A御殿場事業所(静岡県御殿場市)、B横浜事業所(神奈川県横浜市)にございます。
その中でも、@大量生産・低コスト追求型のランプ光源部品を中心に製造する播磨事業所と、A1台1台受注ベースでカスタマイズされた機能を備える大型の装置製品を製造する御殿場事業所では、製品群、工程、品質管理面において多くの違いがあります。
当社の統合ISOと称しているのは、これらの各サイトで別々に取得したISO認証を1つにまとめるということです。

統合
ISO認証の経緯

1993年に播磨事業所でISO9001、続いて1997年にISO14001、1999年に御殿場事業所でISO9001、そして2004年に本社及び営業拠点でISO14001という流れで、全サイト、全事業部での認証取得を完了しました。が、それぞれが異なる認証機関による審査を受け、個別に運用している状態でした。 転機は2009年に訪れます。カンパニー制から事業部制への移行に伴い、別々のISO認証を統合することが必然となった訳です。翌年2010年のキックオフから1年間かけて統合審査を受け、統合化を完了しました。


この一連の流れを3段階に分けてご説明します。


まず初期ということで、2004年までの状態です。事業所の中にEMS事務局、QMS事務局がありました。事業所長がISOにおける経営層にあたり、EMS事務局は施設部に、QMS事務局は品質保証部にありました。それぞれのISO(MS)が目的とするものは事業所のニーズ。とてもストレートでした。

 

次、第2期と呼んでいますが、2009年までにカンパニーとして構造化され、工場と営業拠点において認証を受けました。この時期になるとISO事務局は工場(現場)から離れ、カンパニーの統括部門に位置します。QMSとEMSの事務局を1つにまとめ、業務を標準化する部門としてISO推進部門ができました。
こうなりますと、それまで現場のニーズを実現していたISOですが、営業部を通じてお客様のニーズを実現するISOへと変革を遂げていきました。例えばEMSでは、お客様のニーズである製品環境施策への対応として、部品のグリーン調達が資材部の業務の一部となりました。それを実現するために、製造段階におけるQMSの中でEMSを考慮しなければならない。その結果、製品化学物質の管理、欧州ローズ指令への対応体制が、QMSの中に整い、QMSとEMSのミキシングが行われました。


UGN*環境情報、製品情報、ISO情報を
交換する社内ネットワークシステム


第3期と称するのが現在の状況です。私が所属するCSR部は本社に属し、統合ISO事務局としての機能を担っています。ここに至ってやっと全社の経営をそのままISOが受け止めることができるようになった、という形です。経営の事業方針・計画を下手に翻訳することなく、ISO(MS)のPDCAにそのまま活用できるようになりました。
ここまで来ますと、もう1つ見えてくるものがありまた。ISOがようやく1つになったことで、グループ全体に向けて同じ言葉を発せられるようになったということです。そしてQMSとEMSのISO統合ですが、実は当社には他にも様々なMSが存在します。それらを取り混ぜる余力が出てきた、ということです。ISOの目的とするものも全社環境行動計画の策定であったり、製品移管に関する事業計画であったり、そういった部分にまで手が届くという形になります。

ISO統合化のポイント
さて本日の講題が「ISO統合化のポイント」ですので、私が思うポイントを3点ばかり整理してきました。
 
(1)管理責任者の体制
まず管理責任者の体制ですが、ISOを統合したことにより、ようやく環境の担当役員から品質の担当役員までをISOでつなぐことができました。各事業部門長が各サイト及び事業のISO責任を持ち、現実の組織に沿った形になった訳です。

事業所における環境分野の取り組みは、事業所の生産性向上会議に動機付けされ、製品の環境取り組みは、開発から生産までの品質マターとして管理されます。例えば、省エネ、不良品撲滅、これら個々のテーマを、コスト削減と品質改善が一体となった取り組みとして自覚するためです。また、海外における製品の環境規制への対応についても、品質管理の中に取り込んでいます。「環境は品質の一部」は我々の標語となりました。

(2)内部監査の再編
内部監査員の数について、2004年には品質と環境で約50人程度の規模でしたが、2013年には140名、QMSが約2倍、EMSが約4倍にまで膨れ上がりました。
内部監査ではPDCAのC(チェック)が機能しないとスパイラルアップは期待できません。そこで内部監査の改善が急務となってきました。全社で内部監査を行うとなると、監査対象が広くなるため、全社の業務を診断する目(力量)が失われてしまいました。また、各部門の業務に関わる高度な専門性を理解しづらくなってきました。そして、内部監査そのものが一大イベント、大きな行事になりすぎた、という課題もございます。
この現状をなんとか解決したい、経営資源を有効に使わなければ、ということで、現在、次のような取り組みを検討、または開始したところです。
まず書面監査を充実。現場に赴かなくとも、例えば業務監査や5S巡回を通じて社内では様々な聞き取りが実施されています。その結果をフィルターにして現地監査に活用しようということです。そして、ピンポイント監査の活用、つまり目的を定めて現地監査を行うことを考えています。

(3)マルチマネジメントの一体化
今後、品質・環境以外のマネジメントシステムも一体化していく予定です。当社では、ライフサイエンス事業において医療との関わりがございますが、医療には医療マネジメントシステムがあります。これとの融合性。それから多くの組織で導入されているBCPなどのリスクマネジメント。それら多様なマネジメントシステムの融合が必要だと考えています。

QMSとEMSの一体化を通じて見えてきたもの、それはQMSとEMSの相乗効果です。
ある年の統合ISO審査において、ビューローベリタスから色んな所見、指摘事項をいただきました。それらの中には、QMS及びEMS両方の要求事項に重なる部分があります。そのクロスを数え上げた一覧表を作成しました。 その一覧表をよくよく分析してみるとこんなことが言えるのではと思いました。
まず、「委託業者」評価に対する指摘を通じて、QMS(価格や納期)に、EMS(グリーン調達やエコ運転)を加えることで、サプライチェーンとしてQMS・EMSを両軸に取り込むことができるのでは、と気付かされた訳でございます。
そしてEMSの「実施計画書」については、QMS(ロス削減・低減)とEMS(省エネ、省資源などの材料削減)の目標をそのまま兼ねているということで、現在、QMSとEMSの委員会が一緒になって、現場で生産性向上委員会として動いています。そこからコストゼロエミッションの取り組みにも発展しています。工場廃棄物を全てリサイクル化することがゼロエミッションですが、それにとどまらず、廃棄物をよりシェイプアップさせて有価物化しようと。廃棄物処理費用よりも有価で得られる益の方が高くなることで、コストゼロエミッションとなります。
また別の指摘事項を通じて、様々な「事業部会議」が実施されていますが、その事業部会議がマネジメントレビューそのものではないのか、ということに気付かされました。取って付けたようなISOのためのISOによるISOの会議ではなく、現存するものを利用し経営サイクル(PDCA)に連動させる、ということを改めて認識した、ということでございます。

当社のEMSとQMSの重なり度合いを説明します。マニュアルを含む手順書類の大部分は、1つに統合されていません。ISOのPDCAサイクルから融合を図りました。売上と利益目標である事業計画の中に、QMSとEMSの目標を組み込みます(P)。内部監査とマネジメントレビューでは両者を同時に実施しました(C・A)。そうすると残るDについては、必然的に重なるところは重なる、という手法ととりました。 一方、最近話題の国際統合報告書フレームワークでは、企業が扱う資本財は6つと定義されています。単純化すると「ヒト・モノ・カネ」という経営資本の広義の定義です。 EMSは地球環境の自然資本と、生産効率性として製造資本に、QMSは有用な製品・サービスで社会に資するということで社会資本と、そのための技術として知的資本に関わり、これらのアウトカムを得るためにそれぞれのMSを導入していると考えることもできるのではないでしょうか。
当社では、残る財務資本と人的資本はQMS・EMS両方に共通の資本として含めました。

工場の実務レベルのリスクをマネジメントするため、リスクマネジメントをISO14001に組み込んでいます。簡単に言いますと、環境側面(インパクト)評価で環境リスクも評価してしまおう、そして経営への影響が大きいリスクを「著しい環境側面」として同時に登録し、対策を計画していくという取り組みです。


経済産業省ウェブサイトより

余談になります。2013年4月に日本工業標準調査会(JISC)が、「事業競争力ワーキンググループ・中間取りまとめ」を発表しました。「組織がMSをどのように事業力強化に利用している、また、どのように利用するべきか」という調査報告書で、事業力強化に資するためには「5項目」の観点において活用が図られることが望ましい、あります。本日の講演をまとめるにあたり、1番から4番を念頭に置きました。

この報告書には面白い質問が書いてありました。「MSは企業にとって本来どのようなものであるべきですか」、というアンケート調査で、MSを「変わるためのもの(変革のトリガー)」と捉えている組織ではMSの満足度が総じて低く、「変わらないもの(行動の保障)」と捉えている組織ではMSの満足度が総じて高いそうです。
私はまあ前者の方かな、という風に思っています。皆さんはいかがでしょうか。

最後になりますが、先ほどのMS活用の観点の5番目「グループ単位での取り組み推進」として、ウシオグループの環境活動を紹介します。2003年にグループとして環境の取り組みを開始しました。3年単位で行動計画を策定し、グループ企業に展開。グループ企業のMSはこの連帯感の受け皿として生かされています。「連結ベースで環境経営」という利用をしているということでございます。

ウシオ電機ウェブサイト「環境方針・ウシオ環境ビジョン」より

最後に
MSは経営に寄り添うものでなければならない、という思いで思い切ったことも導入して進めてきたつもりです。それでもまだ完成形ではございません。 今日の話が何らかの役に立てば、と願うと共に、逆に皆さんからご意見やご指導を頂ければ、私もお話しした分救われます。ご清聴ありがとうございました。

  ウシオ電機株式会社 CSR / 社会・環境
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